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The Stalin - 虫

スターリンはアルバム単位で全作それぞれが話題作で、それ故に全作中、本作は比較的地味な印象があるが絞り込まれた言葉と一体化した性急なハードコアアプローチと次作につながるサイケデリックな展開の両方が凝縮されている音楽的に濃厚な作品だと思う。言葉とハードコアの一体化アプローチは本作で一気に到達した印象があり、サイケデリックアプローチはポストパンクの潮流と同期する中で練り上げられていった印象がある。

冒頭の水銀はネオサイケ直球のギターアプローチが素晴らしい。これまで同様にエイトビートを基調にしつつメロディーは前作にみられたポップな側面を限りなく排除したスタイルに仕上げており本作の方向性を示しているようにも思える。

続く365、泥棒、天プラ、Fifteenの4曲は畳み掛けるように短い楽曲群でどれもシンプルな単語を叩きつけるように叫ぶ。ハードコアなスピード感で一気に駆け抜ける勢いある曲順で圧倒する。ブレイクのアレンジやコードとして奏でている部分の和声等、ハードコアの中に音楽的な要素が配置されていて繊細さが同居しているところが素晴らしい。

ラストのタイトル曲、虫は、ドラムの深いエコーと粗いギターに硬質なベースという組み合わせがポストパンクネオサイケそのものという印象だ。そして冒頭の水銀をさらに深く掘り進めたような展開になっている。この流れが次作やそれ以降の活動にもつながっているように思う。楽曲はイントロやブリッジ、フックといった構成を感じさせず、渾然一体となって進行していく。ノイジーなギターやボイスパフォーマンスのようなアプローチで淡々とメッセージを歌うボーカルも素晴らしい。

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