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Stephan Moccio - Lionhearta

 2021年の本作も前作から続いて非常に内省的なサウンド志向だ。解説によれば「非常にパーソナルな物語を引き継いでおり、孤立と孤独を受け入れ、再生、勇気、決意、希望へと向かう」といった表現があり、どことなくCovid-19の影響を感じざるを得ない作風だ。全編通してピアノの静かなアプローチに覆われている。カバーアートの印象と屋内の内省感による静かな美しさに満ちたアルバムだと思う。

冒頭のMy Beloved Twin Flame…は、アンビエント色の強いイントロから始まり、和声を慈しむような打鍵が美しい中盤のアプローチを含めてアルバム全体の雰囲気を示唆している。マイナーコードとメジャーコードを行き来する様が繊細な揺らぎのように思える。

Havana 1958は、静謐だがリズム感を保つ低音のパッセージと静かなパーカッションの組み合わせが素晴らしい。憂いを帯びたメロディーの流麗さの一方でタイトな低音というある部分で意志の強さや確信のようなものを感じる。タイトルからはルーツ寄りのアプローチも感じ取れるが全体のアンビエンスの影響もあり、音の質感やアプローチに関わらず透明感ある仕上がりに思える。

Le Jardin de Monsieur Monetは、流れるようなアルペジオとタイトルからモネの自宅の水の庭を連想する。ピアノ曲の中での近現代の印象派のイメージと比較すると非常にモダンなドラムの静かなアプローチやメロディーの流麗さが際立っている。この点が非常に新しい解釈だと思う。

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