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Ahl Nana - L'orchestre National Mauritanien

モーリタニアのAhl Nanaによる作品、1971年のアルバム。アールナナによるエレキギターはポピュラーミュージックとモーリタニア音楽のブリッジングの役割を果たしているが、浮遊感あるギターのアプローチがモーリタニアのトラッドな音楽の質感と親和性が高く穏やかだが印象的なサウンドを構成している。

モーリタニア音楽についての解説を見る限り、モーリタニアのミュージシャンの主要な収入源として富裕層からの支援という形があるようなので本作も元々は富裕層によるプライベートレコーディング音源なのかもしれない。本作はRADIO MARTIKOによるリイシューとして2023年に日の目を見るまではほとんど流通していなかったようだ。

冒頭のAdji Kar Teri Miriはギターの短音インプロビゼーションから徐々にボイスパフォーマンスを経て、パーカッションとギターを従えたトラッドなメロディーの本編に流れていく様がとても美しい。柔らかなメロディーと牧歌的なパーカッションやとりまく楽器の音色がどれも自然に連なっている。ワンコードが続くことによる没入効果が心地よい。

Emboli Tidwall Ehemeもワンコード、ギターの柔らかなフレーズ、プリミティブなリズムなど概ねアラビアの音楽を継承したものであろう。Ahlane Ouassahlaneは、やや歪んだギターが力強い。この陰影を帯びた雰囲気が「デザートブルース」と言われる所以ではないかと感じた。中盤のブレイクを挟んでリズムが一層強くなるシーンはとても印象的だ。

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