見出し画像

細野晴臣 - Undercurrent

この人の持つアメリカーナからマーティンディニーなどエキゾチカを経由して環境音楽を抽出するプロセスとセンスは非常に興味深いと思っている。表層では多様な音楽を手がけているようにも思えるし、思考プロセスをもし伺えるならかなり奥深いところではそういった一貫性があるようにも思える。KAKUBARHYTHMからのリリースというのも面白い。

オープニングのBath & Frogで本作があらためて環境音楽に近いアプローチであることを認識する。静かに重なり合う音はマイナーコードを辿ることが多くそこにノイズが重なる。どうしても近年の坂本龍一作品を連想してしまうが坂本龍一が持つ旋律やサウンドの折り重なる流麗さとはまた異なる、ノイズはノイズとしてコードはコードとして異質のままそこに置くという作風に思えた。

Underwaterは中盤以降に登場するピアノのシンプルな4音を軸とした旋律が美しい。アンビエントスケープ色の強いMemoryを経て、Lakeでは再びピアノの旋律が登場する。シンプルな和声をドローンとノイズで拡張する。瑞々しい感性溢れるトラックだと思う。タイトル曲の旋律の美しさは素晴らしい。

アンダーカレント映画本編で使用したサウンドスケープをあらためて再構築リフレームしたという本作だが、映像から切り離されたことでサウンドトラックを逸脱した世界になっていると思う。そこに細野晴臣の軽妙さと裏腹のやや諦観じみているが深淵な側面を見るような気がする。

(以前紹介した細野晴臣の作品)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?