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The Red Krayola - Fingerpainting

この時期の一連のDrag Cityからのリリースは、レッドクレイオラの何度目かのピークだと思う。本作は1999年にリリースされているが音源は1960年代のトラックが(おそらく概ね交互に)含まれているようだ。シカゴ音響系のクリエイターに囲まれた1990年代録音は、リズムボックスとアナログシンセサイザーの散りばめ方が素晴らしく、一方で古い作品はこれらと違和感なく繋がっているところにメイヨトンプソンの凄みを感じる。

Bad Medicineは2曲目だが本作の質感が凝縮されている。ギターと歌はいつものメイヨトンプソンであり、それを支えるリズムボックスとシンセサイザーのややランダムシーケンスが入り込んだように聞こえるトラックが素晴らしい。中盤の電子音を聞くと必ずしもランダムではないがここにギターと歌が加わる事で特異な世界が表出している。素晴らしい組み合わせだと思う。

There There Betty BettyはBad Medicine同様のアプローチだがよりシンプルな方向性を感じる。その上で部分的にコードと乖離したシンセベースが奏でられる瞬間があり、歌のシンプルさを電子音がかきまぜる、2曲目とは逆のアプローチであることが分かる。

交互に入っていると思われる古い音源はインプロビゼーションをベースにしたトラックを電子的にエディットしているのかもしれない。これらのインプロビゼーションは歌ものでパーツの分離を明確にしている一方で混沌としたままエディットが施されている。新しいトラックはパーツの位置関係を維持しつつ役割を置き換えていく、古いトラックは役割をそのままにパーツの位置関係を変えていく、そんな構図があるような気がした。

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