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Vektroid - 777 PIG DANGER

コラージュや電子音楽を軸に様々な名義で多様な音楽を展開するVectroidだが、やはり2011年のMacintosh Plus名義によるFloral Shoppeの印象が強い。Vaporwaveのマスターピースとされる作品だ。本作は2024年にBandcamp上で発表されたが、アルバムにはおそらく自身と思われる解説文と物語が付されており、そのタイトルにはYear Thirteen Ten Derivations Of The Ouroboros(13年目を迎えた、ウロボロスの10の由来)と書かれている。ウロボロスとは自分の尾を嚙んで円形をなす蛇の図を指すが、13年前のFloral Shoppeと、10トラックが収録されている本作の関係は必ずしも明らかではない。

Bandcampに付された短い物語は、バスルーム、ドアノブ、見知らぬ男、ネットワーク、コミュニケーション、見慣れたホテルの部屋などメタファーに満ちた言葉が散りばめられている。非常に興味深い。後述の通りスクリューやサンプリング等手法はFloral Shoppeと共通する部分もあり、物語とサウンドを合わせて考えると13年前のFloral Shoppeのエモーショナルな幻影が描かれているようにも思えてくる。

冒頭のOperation Dial B.A.C.K. は少し篭ったノイズのフェイドインから始まる。冒頭に少し長めのピアノのサンプルが示されるがその後は極めて短い様々なサウンドのエディットの渦に飲まれていく。スクリューがそうであったようにやや再生速度を下げていると思われる。

Barotrauma at Data Ocean Primordiaはほぼノイズの連続だが時折大きなエディットの波とブレイクが示される。それらを統合してスクリューをかけたようなトラックが
HEADTRAUMA "S-IZARU”だ。ここでの再生速度はVaporwaveを連想する。その後続くトラックも基本的には同じエリアと思われる音のエディットが埋め込まれている。これらはVaporwave的な感情というよりアンビエントスケープの一つというようなイメージの中で響く陰影のようだ。

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