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Ronald Squibbs - On the Keyboard: Piano Works of Joji Yuasa

2005年に発表された本作は作曲家 湯浅譲二によるピアノ曲を集めた作品として注目された。 湯浅譲二は2023年現在も新作を発表する等、精力的な滑動を続けている。実験工房のメンバーが今も新作を作り続けている事自体が驚きだ。一方本作は、1950年代から1990年代にかけて作られた楽曲が選ばれており、長い年月をかけてつくられた楽曲の重みも感じる。

Ronald Squibbsの近現代音楽を抒情豊かに弾く演奏スタイルは、高橋悠治による同年代の湯浅譲二へのアプローチと比較すると詩情溢れる世界を感じる。高橋悠治の方が作品のクールさにはどう考えても親和性が高いと思う一方で、Ronald Squibbsが湯浅譲二のメロディーの強さをポエティックに表現することであらためて作品の多様な側面を発見できるアルバムだ。特に高橋悠治、Ronald Squibbs両者がともに録音を残しおり本作にも収録されているOn The Keybpardはそのような両者の特徴を分かりやすく比べる事ができる。

Two Pastoralesはサティに近い穏やかなアプローチから入り、しだいに細かいパッセージで湯浅譲二らしいメロディーに移っていく。調性を外さないスタイルが抒情豊かな演奏に合っていると思う。その点ではやや無調フレーズの多いThree Score Setは少し厳しい選曲かと思われた。

アルバムタイトルにも引用されているOn The Keyboardは楽曲として湯浅譲二のあらゆる要素が詰め込まれておりとても素晴らしい。一方でどの部分に着目するか、どう演奏するかという意味ではもしかしたら難しい楽曲かもしれない。この難曲をポエティックに演奏するというのは素晴らしい解釈ではないかと思う。

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