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商いの本質~客が店を選ぶ時、店もまた客を選ぶ

昔、5年ほど沖縄市でカフェ&バーをやっていたことがあります。

接客はド素人。高校時代に喫茶店でバイトした経験があるぐらい。

社会に出てからの仕事は、自衛隊と、印刷・編集分野だけでした。サービス業の「サ」の字も知らない輩が、沖縄でカフェ&バーを経営することになったわけです。

cafe部門は良いとして、BARに関していうと、アルコールの提供により、様々な酔っぱらいを観察することになります。人間観察に最適♪

地元のお客さん。基地関係のお客さん、そして旅人。色んな人に利用してもらいました。いつのまにか小さなコミュニティが出来て、そこに旅人が加わって面白い交流の場になりました。

そのきっかけになったのが、地元ホテルの社長でした。たくさんのアドバイスをいただき、地域ネットワークの仲間に入れてもらいました。

社長の言葉で、心に残っていることがあります。

「客が店を選ぶかもしれないが、同時に、店もまた客を選んでいるんだよ。店に合わない客は排除してもいいさ。それが他の客にとってプラスとなり、店の質を高めてくれるんだから」と。

当時、酒の上でのトラブルがあったんです。

地元の有力者だけど非常に酒癖が悪い商店主が居ました。他のお客さん、とくに女性のお客さんに絡む迷惑な人。

当時の私は、沖縄に移住してきたよそ者で、店をオープンしたばかり。相手は地元で、誰もが知る人。追い出すわけにはいかない。悩んでいた時に、ホテルの社長から、先ほどのアドバイスをいただいたわけです。

数日後でした。閉店して鍵をかけないままだったため、迷惑商店主に入り込まれる事態に。以前の私なら、ご機嫌を取りながらなんとか追い出そうとしたはず。

しかし、社長の言葉をきっかけに、私は即座に110番。

「酔っぱらった人が入り込んで困っています。助けてください」

「お客さんですか?」

「いいえ!!! 違います。知らない人です~」(嘘だけど)

5分もせずして警察官2名到着。酔っぱらい商店主を連れ出してくれました。この人、全く記憶が無いふりをしていましたが、以後、私の店に二度と顔を出さなくなりました。やれやれ。

ということで、長い前置き終了です。

内容は全く違うのですが、この「客が選ぶ=店が選ぶ」姿勢によって「商い」の質と同時にお客さんの質も問われるのではないかと思ったのでご紹介します。我が家の本業、メガネ店での出来事です。

買ったばかりのスポーツグラスのレンズを直してほしいとの依頼電話あり。購入店に相談してくださいというとネット購入とのこと。

コーティングの剥げたレンズは直せません。拝見しないと何とも言えないと店長が返事。

そして来店。

ハイカーブの高機能レンズでした。レンズメーカーに製作を依頼して装着。当店価格は15000円。了解してもらい、検眼。さらにレンズの説明をしていると、

「さっき、別の店で18000円と言われたんだけど、ここの値段をメールで伝えたら、もっと安くするというんですよ。どうでしょう、そっちで作ってもいいですかねぇ?」

なるほど、なるほど。なにやらスマホいじっていたのは他店と駆け引きをしていたわけですね。当店にも、値下げ圧をかけてきたわけですね。

「ああ、どうぞ、どうぞ。そちらにいらしてください」と店長、値下げ交渉に一切応じず、お帰りいただきました。

店長曰く「こういうお客さんは要らないよ。メガネ屋は単なる商品を売ってるんじゃなくて、お客さんの眼を守る商売なんだ。眼の変化を見守りながら調整したり修理したり、アドバイスしていくから、長い付き合いになる。簡単に値下げできるようなレンズなんか、使わないよ。」

これで思い出したのが、前述のカフェ&バーの一件でした。

客は店を選べます。同時に「店もお客さんを選んでいるんですよ」ということを、安くさせて得をしたと思っているお客さんは、理解できないはずです。

また、お客さんの駆け引きに乗せられて価格を下げた店もまた「価格競争で勝ったぞ」と喜んでいるかもしれません。

まさに、お客=店、だと思いませんか。

「商い」のやり方は色々ですから、どちらが良いも悪いもありませんけど、当店の店長に関していうと「メガネ職人にはメガネ職人のプライドっつうもんがあるのさ!」だそうです(^^)v