見出し画像

もっと気軽に投げ銭ライブのススメ

ライブハウスはお金を払って入るもの、というイメージがある。そりゃあそうだ。プロミュージシャンの演奏を楽しむ環境はタダでは作れない。音響設備の整ったハコ。宣伝費用と人的エネルギー。そして、お客さんを感動させるだけの演奏・声量・才能・技能を発揮するためにかけた、ミュージシャンたちの長~い時間。

画像1

1人のミュージシャンの、たった一夜のライブであっても、色んな人たちの力が集約されて、音楽という感動体験が実現する。その代価を払うのは当たり前。

現代の音楽基盤は、アメリカから始まったと、私自身は思っている。ジャズにブルース、R&B、そしてロックへ。たぶん発祥は黒人音楽だ。つらい農作業の合間のひとときの安らぎ。

畑で、土木現場で、力を合わせて作業する。かつて日本にもそのような労働歌はあった。

自分たちの労働歌から進化して、人に聴かせるための音楽が広まるのは、ミュージシャンという存在あってこそ。思い浮かぶのは、ダウンタウンのうらぶれた景色。酒と紫煙と嬌声の合間を縫って、音が石畳の路地に漏れ出す。

そうだ、音楽を育てたのはダウンタウン「路地裏」の小さな店たちだ。女に振られ、貧しさを嘆き、切ない人生を歌いつつも「今に見ていろ」と明日を夢見る。それがブルース。

沖縄にも、毛遊びという風習があった。毛とは、草の生えた、いわゆる原っぱ。広場に集まり三線を弾き唄い踊る。

男女出会いの場となり風紀が乱れるとして、琉球王国時代には禁止令が出されたこともある。しかし「毛遊び」こそが、庶民の音楽芸能が発展する場でもあった。

参考 毛遊びとは(ウィキペディア)

アメリカの路地裏も琉球の毛遊びも、日中の労働から解放され、ひと時の癒しを求める庶民のための時間を象徴している。

洋の東西をとわず、明日を生きる力をもたらす音楽たちは、こうした場所から生まれていったのだ。

アメリカ。ニューオリンズのフレンチ・クオーターにあるバーボンストリート。通りに立ち並ぶ店からは、様々な生のオトが溢れ出る。さすがはジャズ発祥の地。

参考 バーボンストリートとは(ウィキペディア)

ジャズだけではなくロックにブルース、カントリー、あらゆる音楽があふれている。演奏の途中だろうが店への出入りは自由。一曲だけ、あるいはお気に入りのバンドを見つけたらずっと滞在してもいい。

ライブチャージ不要だが、酒を注文するのがルール。アーティストにチップをはずめば喜ばれる。いわゆる投げ銭ライブというやつだ。

沖縄にも、数は減ったが同じスタイルのロックミュージックバーがある。ライブチャージ不要、出入り自由。ただしドリンクは注文すべし。こうした店は米兵の姿が多いが、音楽好きの日本人ファンも通っている。

参考 ライブバーJET(コザウェブ)

投げ銭というスタイルは、良い音を聴かせてくれたら、ライブチャージを取るよりもミュージシャンにとって実入りが良い場合もある。観客がチップをはずんでくれるのだ。

さてコロナ。ライブが難しい状況が続いている。生の音楽を楽しむ機会が減っている。ミュージシャンも大変だが、ストレス発散の場を失ったファンたちも明日を生きるためのエネルギーをチャージできなくなっている。

今後、オンラインのライブスタイルが進化して、自宅でも臨場感あふれる生ライブを楽しめるようになってくるだろう。その時は、事前購入だけでなく、ミュージシャンと観客が一体化する投げ銭スタイルもお願いしたいと切に願う。

懐に余裕のある人はそれなりに、金銭的に余裕がない人もそれなりに、音楽を楽しめる環境があればステキだよね。

ヨーロッパでは実際に、大きなコンサートやオペラ開幕の際、音楽を学ぶ学生や年金暮らしのシニアのために超格安席が別途用意されている。

※写真 沖縄のミュージシャン ひがよしひろさんとスティーブさん