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蔵出し:「ファーストネームのマジック」from  野菜さらだの『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』第11回

※この蔵出しシリーズは、1996年~2002年までアメリカに留学していた野菜さらだが後半の1999年~約三年間、週2回発行していたメールマガジンの記事をそのままそっくりお送りするものです。今回は、毎日更新していきますので、お楽しみいただければ幸いです!

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  野菜さらだの
   『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』(愛称アメすん)
         (1999/7/6発行) 第11号 (火・金曜発行+日曜版)
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◆本日のテーマ「ファーストネームのマジック」

 こちらに来て何となく嬉しいのは、年齢性別に関係なく、お互いにファーストネームで呼び合うことです。「ヘイ!さらだ!!」なんて呼ばれると、永遠に10代でいられるような、そんな気さえします。しかし、この身分年齢に関係なくファーストネームを使うという習慣は、名前の呼び方一つでどちらが目上か目下かがすぐにわかってしまう、日本の社会で育った日本人にとっては思いもよらぬ落し穴になることがあるようです。

 日本では大学生以上の一応成人という人は、名字に「さん」あるいは「くん」を付ける、または上司なら「~~部長」「~~先生」(業界によっては同業者同士を先生呼びする)と呼びます。ファーストネームで呼ぶということは、学生でもまあかなり親しい友だち、社会人ではほとんどありません。そんな日本人がアメリカに来て、若干20歳そこそこのアメリカ人学生が、大学の学部長クラスの先生を「へイ!ロブ!」などと呼ぶのを目のあたりにすると(日本でならば、三歩下がって師の影踏まず、「~~先生、失礼致します」というような場面です)、「私のような学生もこの偉い先生と対等なんだわ~、対等の口を効いていいんだわ~、さすが自由の国アメリカ、なんて気楽でいいんでしょう~~・・・」となりかねないのです。

 実際、私も渡米直後はこのファーストネームのマジックに引っかかりかけました。しかし、教授、助教授、それに大学院生といった身分の違う人のミーティングに参加するようになって、ファーストネームを使っているのは「名前を呼ぶ」というだけのことであって、ファーストネームで呼ぶから、上下関係もなくすべて対等というのは誤った解釈ではないかと思うようになりました。

 例えば、ある部署のトップの人が話始めたとき、身分が下の人が遮ってしまったとします。そういう時に遮った方は、日本語で言えば「大変失礼致しました、、」そういうニュアンスの言い方(表情や声の調子も含めて解釈して)で謝っていたのです。本当に対等なら「あ、ごめん」程度でいいはずです。

 おやおや、これはもしかしたら気を付けないといけないぞ、と回りのアメリカ人友だちに聞きまくったところ、やはりこちらの社会でも「歴とした上下関係はある」と教えてくれました。目上の人に敬意を表すというのはこちらの社会でも好まれているようです。ある日のこと学部長のドアの前に「先生に接するときはBe respectful」という標語の入ったポスターが貼られていており、ふむ、やっぱりそうか、、、と思いました(半分ジョークかもしれませんが)。

 スラング専門家の私のダンナによれば、アメリカ人は、would や could を
多用して、丁寧の意を示し、目上の人に対しては、省略形(going to の省略形
である gonna、have to や get to の省略形であるgattaなど)を使うことも
余りないとのこと。特に学生同士のラフな英語に慣れている人は、目上の人と話すときの英語の言い回しには少し注意された方が良いかもしれません。
                             (つづく)

◆おまけ情報:ファーストネームで呼ばない場合もあります。例えば、お医者さんなどは「ドクター~~」と呼ぶことが多いようです。
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◆お断り:この『アメすん』は、かつてアメリカのオレゴンに住んでいた野菜さらだが個人的に体験した、おもしろい話を友だちや家族に話すようなつもりで書いたものです。アメリカの他の場所とは違う、というエピソードも中にはあるかと思いますが、まあ、気楽に読んで楽しんでください。
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#創作大賞2023 #エッセイ部門

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