練習での「学び」を見つけるための取り組み
競技練習においてただ練習をこなせば上手くなるというわけではない。もちろんある程度は伸びていくだろうが、その角度を上げていくには、個々人がその日の練習で何を「学び取る」か、そのような主体的・能動的な態度が重要になる。
毎回の練習でどのようにその意識を高めるか。
それをチーム内の文化として定着して行くために私がチームで行っている取り組みについて紹介したい。
意識の重要性
「カラーバス効果」という言葉をご存知だろうか。
「ある特定の対象を意識することで、その対象に関する情報が目に留まるようになる効果」のことを指す。
その効果について少し試してみたい。
20~30秒間、身の回りで「赤いもの」がいくつ見つけられるか探してみてほしい。
いくつ見つけられただろうか。
思っていたよりも多くのものを見つけられたのではないだろうか。
では今度は、目をつぶり、「青いもの」がいくつあったか思い出してほしい。
いくつあっただろうか。
おそらく殆どの人は赤よりも少ない数しか思い出せなかったのではないだろうか。
改めて周りを見回してみて「青いもの」はいくつあるだろうか?
アンテナを立てる
私達は、何かを意識することで、それを多く見つけることができる。思っていたよりも多くの「赤いもの」があったのではないだろうか。
しかしそれと同時に、「何か」以外のものの多くは私達の認識を素通りしてしまう。「青いもの」は目に入っていたはずなのに思い出せなかったのではないだろうか。例えば今あなたは青いジーンズを履いていたりしないだろうか。
練習も同じで、意識の「アンテナ」を立てさえすれば、すぐにでももっと多くのことを学びとれるはずなのだ。
先程の「青いもの」が私達の認識を素通りしたのと同じように、普段の練習の中に「学び」はたくさん潜んでいるはずなのだ。
意識しなければ「青いもの」と同じように「できたこと」や「課題」を見過ごしたまま、ただただ「疲れた練習」で終わってしまい、学び取るものは少なくなってしまう。
今回紹介する「チェックイン・チェックアウト」という取り組みは、その「学びを拾い上げるためのアンテナを立てる」ための取り組みだ。
チェックイン・チェックアウト
そこでチェックイン・チェックアウトの内容と進め方を紹介したい。
練習の前後、それぞれ全体集合の直前がいいだろう、に2分程度時間を取って2~3人組で以下の内容をシェアする。
チェックイン(練習前):「今日頑張ること」「今日チャレンジすること」
チェックアウト(練習後):チェックインで掲げた内容に対する振り返り、相手へのフィードバック
メリット
個々人が自分の目標、アンテナを掲げた状態で練習に臨むことができる。
当然だがこれが最大のメリットであり、この状態をつくれるだけでより多くの学びを得ることができるようになるだろう。
そしてペアでシェアすることで更なる効果を得ることができる。
それは、チームメイトが今日何についてチャレンジしようとしてるのかを知ることで、チームの相互理解、コミュニケーションの質の向上に繋がることだ。
例えば「誰かが左手のドリブルをミスした」という状況で、あなたはどんな声をかけるだろうか。
その人が「今日は左手のドリブルで相手を抜けるようにチャレンジする」という目標を立てていたことを、もしあなたが知っていれば、同じシチュエーションでどのような声をかけるだろうか。
より前向きで、サポーティブで、具体的な声掛けになったのではないだろうか。
デメリット
デメリットとしては、当然だが時間がかかることがまず挙げられる。
他には、選手自身で目標を立てるので、選手が効果的な目標の立て方を知らないと「頑張る」などといった曖昧な目標を掲げるだけになったしまい、そうなると効果は半減してしまう。
いい目標の立て方についてはこちらの記事や、「SMART 目標」などの内容を伝えられると良いだろう。
4分時間を取ってしまうが、それを補ってあまりある効果があると、少なくとも私は信じている。
いい目標の立て方について知ってさえいれば、選手の意識、ひいてはチームの文化を大きく変えることのできる取り組みだと思う
次の練習でのあなたの「アンテナ」は何だろうか。
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