揺らがぬ「かっこいい」を確信した12歳のあの日

子供の頃、家から歩きで行ける距離の国際通りに映画館がいくつかあった。
映画好きの母と、または2つ下の弟と、あるいは友達とよく劇場に行った。

ある時、「すっごく面白いらしいよ!」と友達が話していた映画を弟と観に行くことにした。
話していたその友達は観たわけでなく、その映画を観たという自分の姉が興奮気味に話していた、その様子をさらに興奮気味に話していたもんだから。

その映画を弟と観に行った。
国際通りを少し入ったところにあるその劇場に近づいていくと、劇場入り口からぐるっと長〜い行列が国際通りまではみ出て続いていた。
「うぁー、無理だ、何回か後の上映まで何時間も待たなくちゃ…」
その映画の手書き看板を横目に見ながら諦め、その先にある別の映画館でキョンシーを観て帰った。

後日、ぐるっとはみ出た行列が落ち着いた頃に劇場で観たその作品は、戦闘機のパイロットの話で。

ブルゾンを羽織りサングラスをかけたそのパイロットは、ミリタリーのアメリカ人が珍しくない土地に育った私もみとれるほど、格好が良かった。
背は小さいけれど、白い歯を見せて屈託無く笑い、生意気な表情がいやらしくなくて。

あぁ、なんて、なんて、かっこいい人なんだ

世界にはこんなにかっこいい人がいるんだ

決して好みのタイプではないのに、なぜかその「かっこいい」は確信だった。

外国人だとか俳優だとかなんか色々すっ飛ばしてドカンとこちらにはいってきた。名前を覚えておかなくては。

トム・クルーズ。

短くて覚えやすいのもかっこいいな。
フワフワしながら家路についた12歳のある日の想い出。

あれからだいぶ経って、私も歳を重ね、彼も少し歳をとった。
あの時も今までもやっぱり好みのタイプではないけれど、彼が「かっこいい」という確信はちっとも揺らいでいない。

#映画 #日記 #エッセイ #トムクルーズ #トップガン


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