こいぬまちはる

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マガジン

  • みつ子のはなし

    おばあちゃんのはなしを少しずつまとめることにした。自分のための記録として。

最近の記事

水って大事ね、ほんと。

「人が住んでいる住居の水道を止めるなんて」というTwitterのつぶやきを見て思い出す。 (大阪で母子が餓死した状態で発見された事件に関してのつぶやき) うちは母子家庭で、絵に描いたような貧困だった。 病気がちの母は働けない日もままあり、日払いの職だったから体調が悪いとたちまち困窮した。 何度か市役所に生活保護の相談に行くも、まだ若かった母は「若いから働ける」との職員の言葉に負けてしまって。 真面目な人ほど追い詰められるっていうのは本当にだと思う。 水道、普通に止められた

    • ワッフルとニキビとホテルのレストラン

      小学5年か6年の時、友達が初めて食べたという『ワッフル』という食べ物を教えてくれた。 少しだけ自慢げに教えてくれたおおよその特徴は、 こんがり焼いてあって ふんわりしてて ケーキでもなくて クッキーでもなくて ほんのり甘くて ホテル西武オリオンのレストランで ナイフとフォークで食べた すごく美味しかった ということだった。 『ワッフル』という食べ物を初めて知った。 憧れは日に日につのり、友達に何度かその『ワッフル』というものを食べた話をせがんだ。 それから近いある日

      • なぜか、美輪明宏と美空ひばりでつわりが軽くなった話し

        第一子を妊娠中に人生初の”つわり”を体験した。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い 24時間、意識があるうちは1秒残らず気持ちが悪い。 ずっと寝てるか意識失ってたい。 ずっとムカムカして、何かのキッカケでえづき、何かのスイッチで吐く。 2日酔いなら1日寝てれば治るし、胃腸炎でも1〜2日寝てれば良くなる。 担当医に聞いたら、数週間で良くなる人もいるし、出産直前まで続く人もいるって。 家に帰りちょっと絶望してメソメソ泣いた。 こんなのあと何週間も辛すぎる。 第一

        • フランスの先生

          子どもの頃、髪を切るときはいつも近所の『フランス美容室』。 オーナーの美容師が一人で切り盛りしてる美容室。 髪が短めで、女性にしては少し大柄なその身体には白衣を羽織っていた。 (白衣の記憶だったけど、だんだん思い出がハッキリしてくると、白衣じゃなく白っぽい大きなエプロンだった気がする) そのおばさま美容師のことを、みんなで「フランスの先生」と呼んでた。 そこには母もおばあちゃんも通ってて、大人も子どももそこで切ってた。 お金だけ渡されて行ってたのか、後から家族が払いに

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        • みつ子のはなし
          3本

        記事

          チョコチップクッキーが見つからない

          小さい頃、沖縄に大きな台風が接近してて、心細かったのかおばあちゃんがウチに泊まりにきた。 おじいちゃんはどうしてたのかな、覚えていない。とにかくおばあちゃん1人だけ来た。 ものすごい暴風雨が吹き荒れてる台風の夜。 いつもはいないおばあちゃんがウチに泊まってるから、楽しさしかなくて。 台所に、お母さんが奮発して買った新しいオーブンレンジがあって、停電もしてないし、ウチにあったチョコチップクッキーの素でクッキーを焼くことになった。 作ってる時のことは全然覚えてないけど、薄

          チョコチップクッキーが見つからない

          読書メモ「ペンダーウィックの四姉妹 夏の魔法」

          ペンダーウィックの四姉妹「夏の魔法」@小峰書店たまたま図書館で手に取ったけど素晴らしい出会いになった。 四姉妹のお話しってオルコットのあんなに有名な四姉妹がいるのに無謀…とか思ったけど、これがまたキャラがそれぞれ立ってて、若草の四姉妹が好きな人は、この姉妹も絶対好きになるはず。 一冊の中で色んな事件が起こるのだけど、大きな牛から逃げる描写とか、悪口を言ったあとの顛末とか、何度も読みながら声が出そうになった。緊迫感。 父親もそうだけど、何と言っても愛犬ハウンドの素敵なこと

          読書メモ「ペンダーウィックの四姉妹 夏の魔法」

          みつ子のはなし三

          これは、おばあちゃんのはなしのメモ。 おばあちゃんの記録として聞いたことを少しずつ。 つづき… たまにアンマーは、1円や2円など小銭を机の上に置いたまま忘れる事があった。 それを見つけた人が「アンマー、また仕舞い忘れてるよ」と渡すのだが、アンマーは「知らん知らん、見つけた人がなんとかしなさい」といつも言う。 誰が見つけても、アンマーは自分が置き忘れたのを決して認めることはなかった。 アンマーは、女の子は踊りも出来ないといけない、と女中たちをプロの舞踊の先生に習わせてくれ

          みつ子のはなし三

          みつ子のはなし 二

          これは、おばあちゃんのはなしのメモ。 おばあちゃんの記録として聞いたことを少しずつ。 つづき…… そこは別の島の漁村で、海岸沿いのたくさんある網元の1つに売られた。 サバニと呼ばれる小さな漕ぎ舟は7人乗りで、その舟を10程も持っている網元だった。そこは女将さんが全ての人間を束ねあげていた。旦那さんはというと、外の若い女のところに入り浸りでたまにしか見ることはなかったが優しい人だった。 売られてきた男子は漁師、女子は子守や女中として働いた。 女中の仕事は主に漁師達の飯

          みつ子のはなし 二

          みつ子のはなし

          これは、おばあちゃんのはなしのメモ。 おばあちゃんの記録として聞いたことを少しずつ。 みつ子は南の小さな島で昭和8年に生まれた。 13歳離れた長兄、5歳上の姉、2歳上の次兄がいた。 自宅から少し離れた畑で働く父と、全盲の母。4歳の時には妹も生まれ、とても貧しかったがなんとか暮らしていた。 よく覚えているのが小学校の入学式。 誰かが勘違いして教えたのか、なぜか自分の名前「みつ子」が漢字の「光子」だと思い込んでいた。読み書きはできなかったが、なんとも「光」という字が綺麗で、

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          娘からの手紙

          ずっと前、「お母さん、これあげる」と、娘からもらった手紙。 わぁぁぁ!子どもから手紙とか、わたし、親っぽーい!とかワクワク受け取ったら これでした。 親っぽーーーーい!! これはネコ'sをどんだけかわいがれるかがっせんです。ゆうしょうすると、おとさんには、『ネコ'sといっしょにいるけん』、お母さんには『かたたたきあんどマッサージけん』をあたえます。わたしにはお父さんとおかあさんからのまけましたサインをもらいます。さんかしてね。(おわり) 飼い始めた保護ネコたちの可愛がり

          娘からの手紙

          ジャンクな幸福

          夜ごはん作るのがめんどい!でも子どもたちも私らもみんな腹ペコ! って時はいつも「カップラーメンパーティ」。 スーパー行って、カップラーメンの棚の前で「なんでも好きなの選ぼう!2つでもいいぜ!」の宣言のもと、私らと子どもたちがそれぞれ選ぶ。 いつもの銘柄を選ぶもよし、食べたことない新商品を試すのもよし。 スキップする勢いで帰って、お湯を沸かして注ぎ、そこから待つ数分間はまるでパーティ前のような高揚感。 安くて、片付けの面倒もない、素敵パーティ。 「カップラーメン」は、紛れ

          ジャンクな幸福

          揺らがぬ「かっこいい」を確信した12歳のあの日

          子供の頃、家から歩きで行ける距離の国際通りに映画館がいくつかあった。 映画好きの母と、または2つ下の弟と、あるいは友達とよく劇場に行った。 ある時、「すっごく面白いらしいよ!」と友達が話していた映画を弟と観に行くことにした。 話していたその友達は観たわけでなく、その映画を観たという自分の姉が興奮気味に話していた、その様子をさらに興奮気味に話していたもんだから。 その映画を弟と観に行った。 国際通りを少し入ったところにあるその劇場に近づいていくと、劇場入り口からぐるっと長〜

          揺らがぬ「かっこいい」を確信した12歳のあの日