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逆噴射小説大賞2019

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逆噴射小説大賞2019に投稿した、「小説の冒頭800字」をまとめてあります。完結次第別のマガジンに移します。
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#逆噴射小説大賞2019

地獄へ道連れ

地獄へ道連れ

 シボレーコルベットC2の燃料タンクは後部にある。それはフロントガラスの向こう、青空の下、薄茶色の岩山へ向かうハイウェイを猛スピードで走り去ろうとしている赤いC2は初期型も同じ。初期型の証である、特徴的なスプリットウィンドウの、その下。トネッリは、カズオにそこを撃つよう指示した。この小柄なアジア系の若者が、ばつぐんの銃の腕を持っていることも、父親譲りのバカ正直な性格をしていることも、彼は知りすぎる

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空隙

空隙

「ふるえ」がくると、毎度のことながら、おれはなんだかうれしくなる。

それは予言だ。
おれの「注文」を、〈公社〉が受注、決済、発送まで済ませ、おれの魂に埋め込まれた「契約」を通して、しらせてくる。
物理的な現象に先立つ、霊的な確信。
未来が確約されたことに、おれのこころは「ふるえ」にふるえるのだった。

いっぽう、からだのほうはというと、背にしたコンテナに着弾するたびに、物理的にふるえている。

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蜘蛛と杜子春

蜘蛛と杜子春

 杜子春は夕暮れの十字路に立ち尽くしてしまいました。
 彼の頭のなかでは、先ほど、すがめの老人が口にした言葉がくり返されています。しかも、老人が口にしたうち、「いま、この夕日のなかに立って、お前の影が地に映ったら、」という部分だけが、延々と。だから、彼は自分の影をじっと見つめて、動かずにいるのでした。
 あなたがたは、この事態の原因を、杜子春の首の管理用のバーコードによって知ることができます。この

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亜人戦線

亜人戦線

 元は漁師小屋だったという湖畔の一軒家が、中年の曹長の宿舎だった。その晩、ポットいっぱいのコーヒーを続けざまに飲み干しながら、彼はじっと考え込んでいた。この湖畔の村に配属された、人類軍北方第三師団の兵士が、軍紀違反によって前線送りになるのはこれで三度目である。彼自身も、いよいよ後がなかった。
 しかし、違反の理由は前二回と同じく喧嘩で、しかも今回は現場に居合わせたのだった。場所は村の酒場で、酔った

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梵天の千鶴子

梵天の千鶴子

祖母の思い出に。

「梵天の千鶴子」の名で知られる、この物語の主人公は、戸籍上の名前を松村ちづという。大正十三年八月二十三日、群馬県前橋市に、養蚕業者の次女として生まれた。姉のちえとは二十分違いの双子であった。
 二人の両親は、前述のように養蚕業を営んでいた。父は、「平成の大合併」で高崎市に併合される前は「箕郷」と呼ばれていた地域の、養蚕業者の長男だった。この本家は、幕末のころから、次第に女性が家

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