夜しかやってない、まるで居酒屋なうどん屋さん【粉吉うどん @鶯谷】
鶯谷。山手線の駅の中で駅名のカッコ良さランキングでは三本の指に入るであろうこの駅は、ほかのどの路線とも乗り換えられないくせに駅名がカッコいいというだけで上野と日暮里の間でドヤ顔をしている。休みの日は各地の駅前に出没する僕ですら、鶯谷に関しては駅名がカッコいいと思うだけで立ち寄る用事はほとんどない。
そんな鶯谷駅だが、パッとしない駅というわけではない。駅前では上野や浅草に負けないほど立派な吉原が形成されており、夜中の時間に足を踏み入れれば鶯の名が付く地名からは想像できないほどアダルティな雰囲気を醸し出す町だ。上野や浅草で火遊びしたらバレそうだが、鶯谷ならワンチャンバレないかもしれない…そんなことを考える男がいてもおかしくないような気もする。
ある日僕が鶯谷に立ち寄ったのは夕方4時ごろ。なぜ僕が鶯谷にやって来たのかというと、サウナに入るためだった。鶯谷にはサウナー界隈でちょっと有名な「サウナセンター 鶯谷」というサウナがあり、サウナーの端くれである僕はこのサウナに以前からずっと行ってみたかったのだ。僕はこの頃色々あって資格の勉強をしていたのだが、最近その試験がひと段落ついたこともあって、自分へのご褒美としてサウナを与えてあげても良いんじゃないか、と思い鶯谷のサウナセンターの敷居をまたぐ運びとなった。約2ヶ月ぶりにサウナに入ったことで、自分の身体が忘れていた何かを思い出したような気がした。とにかく、鶯谷のサウナセンターとても良いサウナだよということを伝えたい。
サウナセンターを出たのは午後6時ごろ。そのままサウナセンターの食堂で夕飯を済ませてもよかったのだが、まだ時間も早いしせっかく鶯谷まで来たわけなので鶯谷周辺のお店でちょっと美味しいものをいただきたいと思った。サウナ後の飯は格別に美味い。サウナに行ってから食事をすると通常の2倍〜3倍ぐらい料理の美味しさを体感できる。だからこそ、この日の夕飯は絶対にはずしたくない。
Googleマップを開き、鶯谷周辺でピン留めしているお店がないか探した。過去の自分がどれだけ鶯谷に関心を寄せていたかが分かる瞬間である。アプリを開くと、それはすぐに見つかった。鶯谷駅のすぐ目の前にある、「粉吉うどん」というお店だった。うどん屋さんといえば、ランチタイムにうどんや天ぷらをメインにいただくようなお店が多いイメージがあるが、なんとこの「粉吉うどん」は夜しか営業していない。このお店はうどんがメインというよりかは、おつまみとお酒をメインで楽しんでその〆としてうどんをいただく、といったスタイルのお店らしい。最近酒とサウナを控えていた僕にとって、サウナ後の酒というのは喉から手が出るほど欲していたものだった。さっそくお店が空いているか電話をかけようと思ったが、ネットのどこを見ても電話番号が見当たらない。あれ、どうやって電話すればいいんだ?なんて思いながら食べログを見てみると、このお店はなんと予約ができないらしい。つまりすんなり入れてもらえるかどうかはお店に行ったタイミング次第とのことだ。
そうと分かった以上、とっととお店に向かった方が良さそうだ。サウナ後で身も心もととのった僕は言問通りをやや早歩きで進んだ。鶯谷はインバウンドが拠点としている宿が多いのか、横並びに歩きながら巨大キャリーケースで歩道をふさぐ外国人を何人も見かけた。今度お前の国の歩道をリヤカーで走ってやろうかと思った。
サウナセンターから「粉吉うどん」までは歩いて5分ほどで到着した。お店の前に着くと60代ぐらいの女性が何やら店員さんと話している。とりあえず僕はその女性の後ろに並んだ。女性と店員さんのやり取りが終わると、女性はどこかへ歩いて行ってしまった。あれ、お店に入らないのかな?なんて思っていたら中から店員さんが出てきて
「一名様でしょうか?」
と僕に聞いてきた。
「はい、一人です」
と返すと、
「すみません今満席で、空き次第ご連絡という形になっちゃうんですけど…」
と店員さんから言われてしまった。どうやらすんなり入れてはもらえないらしい。店員さんの話では、名前と電話番号を伝えてくれれば席が空き次第連絡するよ、とのことなので、とりあえず僕は名前と電話番号を店員さんに伝えた。店内をチラ見したら名前と電話番号が書かれた紙が僕の分も合わせて3枚、壁に貼られていたため僕は3番目なんだなと理解した。その後席が空くまでどう時間を潰そうかなと考え始めたが、お店のすぐ向かいにマックがあったのでそこで軽く作業をすることにした。ちなみにこの記事の一部もマックにいる間に執筆した。
20分ぐらいマックで作業していたら、お店から電話がかかってきた。個人的には40分ぐらいは空かないかもなと思っていたので、予想よりも早く席が空いたようである。PCをしまい、マックを出てすぐ向かいにある「粉吉うどん」の扉を開けた。
店内に入り、自分の名前を伝えると一番手前のカウンター席に案内された。隣の席では、先ほど見かけた方とは別の60代ぐらいの女性が一人でしっぽりとお酒を飲んでいる。その後彼女は割とすぐに会計をしてお店を後にした。
席に腰掛け、メニューを眺める。ネットで調べたとおりツマミの種類がかなり豊富で、メニューを見ただけでここはうどん屋さんではなくもはや居酒屋さんだなと思った。中でも日替わりのツマミがかなり豊富で、値段は1つ300円台〜600円台と割とリーズナブルだ。約20種類の日替わりメニューの中から、どれを注文しようか5分ぐらい悩んだ。悩んだ末、これらの3つを注文した(あと生ビールも)。
・するめいか三升漬け
・アスパラと湯葉の白和え
・真鯛、生ハム、モッツァレラの春巻き
注文するとすぐに生ビールが登場。この容姿を見るのは数ヶ月ぶりだ。ビールが入ったジョッキはやはり何度見てもありがたい見た目をしている。その後まもなくするめいかとアスパラが登場。提供の早さに驚きつつ、目の前のビールジョッキに手を伸ばし、中に入った液体を本能のままに喉の奥へと流し込んだ。決まった。これにて開幕宣言である。久しぶりのビールが美味すぎて一度ジョッキを置いた頃にはすでにジョッキの半分ぐらいの量を飲んでいた。ペース気をつけなきゃな、と思いながらするめいかとアスパラに箸を伸ばすと、するめいかの三升漬けはほどよい塩味ととろみで酒に抜群に合う味をしていたし、アスパラと湯葉の白和えはアスパラの青い香りとトロトロの湯葉が相性抜群で、永遠に食べられてしまいそうなさっぱり感がとても良い。この2品が美味しくてジョッキのビールはどんどん減っていった。
続いてやってきたのが春巻き。真鯛と生ハム、モッツァレラチーズが使われたちょっと個性的な春巻きだ。この春巻きがマジで美味しかった。なんならこの日食べたものの中で一番美味しかったかもしれない。パリッパリの春巻きにハムと鯛の塩味や旨味、そしてモッツァレラチーズの豪快なパンチが合わさり、イタリアンのようなテイストに仕上がっている。お皿の四隅にかかっているバジルソースと合わせて食べたらもうまさに絶品そのものだった。もう一皿注文してしまおうかと思ってしまうぐらい美味しかった。
この辺りでフードを追加注文。ついでに日本酒一合も注文した。日本酒の銘柄は忘れてしまったが、甘みの少ないスッキリとした日本酒だった。
追加注文した「鳥スペアリブと男爵芋のローズマリー炒め」は鳥の脂のパンチとホクホクのじゃがいもがとても美味しい。ここ本当にうどん屋か?
「まぐろとアボカドなめこ醤油」は決して良いマグロを使っている、というわけではなさそうだったが、アボカドとなめこ醤油が合わさることで謎に高級感を感じてしまう一品だった。わさびを多めに付けていただくと余計に美味しかった。
日本酒もほぼ飲みきり、ほろ酔い状態の頃にやって来たのが「カレーつけ汁うどん」。ちゃんとうどんも注文しておいた。食べてみるとまさに〆にちょうど良い、出汁がよく効いたマイルドなカレーうどん。うどん自体にもしっかりとコシがあり、食感がたまらない。店名に「うどん」が付くだけあってうどんのクオリティもさすがだなと思った。ランチやってるなら普通にうどんだけ食べに行きたい。
うどんを食べ終える頃には結構な満腹感を感じていた。お会計は5000円ぐらい。一人飲みなのでこの値段だが、2人で来れば1人3000円ぐらいで済んでしまうのではないだろうか。それでこれだけ美味しい思いをできるのだから、とても良いお店だと思う。
結局このお店は何を食べても美味しい居酒屋さんだった。サウナに行けたことも含めてお店を出たあとの満足感が大きすぎる。唯一残念だったのはこの後鶯谷駅から山手線に乗ろうとしたら電車が運転見合わせになっていたこと。さっき食べた数々の料理を思い出しながら、居酒屋に行ったあとは颯爽とタクシーで帰れるぐらいお金に余裕のある大人になりたいと思った。
今回行ったお店
粉吉うどん
●住所:東京都台東区根岸1-9-8
●アクセス:鶯谷駅から徒歩1分
●営業時間:17:00〜23:00
●定休日:日曜
●支払い方法:現金のみ
●駐車場:なし
頼んだメニュー
●するめいか三升漬け ¥418
●アスパラと湯葉の白和え ¥429
●真鯛、生ハム、モッツァレラの春巻き ¥539
●鳥スペアリブと男爵芋のローズマリー炒め ¥539
●まぐろとアボカドなめこ醤油 ¥594
●カレーつけ汁うどん(本日のうどん) ¥880
※ドリンクは省略
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