ひねくれ者は、ぶつくさ文句をたれる
ボランティアという言葉に引っかかる
ボランティアグループ主催の勉強会に参加してきました。講師は大学院時代にお世話になった教授でした。研究でお世話になった方も来られていたので、再会を喜び加えて刺激を受けた1日でした。
来られている方たちも、みな真摯に地域活動をされている方達で、その熱意が伝わってくるような会でした。みなさん素晴らしい活動をされていることに、素直にリスペクトしています。
ではどうしてわたしは一緒に活動したいとは思わないのだろうか。何かしっくりいかない・・・捻くれ者のわたしは、この場に集うボランティア活動されている方達とは、自分が違う存在のような気がしてなりませんでした。
矛盾
思い返してみると、夫が急死し、わたしの生きる場所が大きく変わりました。息子は知的障がい者、子どもたちが不安定になり仕事を辞めました。するとひとり親、無職、おまけに障がい児をかかえる家庭と、なかなかハードなカードを有する者になったのです。
資格を持っていても働けない家庭環境下にあると、どうしようもありません。わたしが出勤するために息子の世話をペルパーさんに依頼することはできないからです。
「この制度は息子さんのためのもので、お母さんが働きにいくことを助けるものではない。」と説明を受けました。
なるほど制度は当事者のためのものなのです。なんだか矛盾を感じましたが、世間知らずで社会の仕組みの知識を持たないわたしにはモヤモヤした気持ちだけがザラリと残りました。
大学で探求してみる。
後にこの矛盾がを大学で探求するテーマになりました。社会学部に編入し「なぜわたしが簡単に貧困家庭と呼ばれるカテゴリーに陥ったのか」をテーマに勉強しました。講義を熱心に聴講し、家族社会学の本をたくさん読んでみましたが、どうもつかみきれませんでした。
客観的に捉えようとしても、わたしは夫の死を契機に、当事者の側面に立つ位置に場所を移動したようです。しかしわたしたち家族は、社会制度上の恩恵を受けて、穏やかに暮らしているので、恵まれたケースだと思っていました。
だからわたしが抱く社会の矛盾を世に問うのは、贅沢なことかもしれない。めぐまれた立場から、異を唱える立場ではないという考えに至りました。
こうしてわたしは人前に出ることをやめ、社会の片隅でひっそりと生きることに決めました。
大学院で探求してみる。
数年後、期せずして大学院で勉強することになりました。論文に障害を持つ子どもの親、当事者としての経験とこれまで抱いてきたモヤモヤを明らかにするために研究に励みました。
しかし指導教授からは「当事者の思い」を否定され、なんども衝突しました。繰り返し「当事者としての思いを書くな」と指導され、最後の最後で当事者である立場からの、長年の矛盾を執筆した箇所を、バッサリと削除されたのです。悔しいけどさっさと合格してオサラバしたかったので、苦汁を飲み耐えました。
情けないことですが、卒業後も論文発表を強いられ、教授との確執が延長されることになり、わたしは病みました。
社会で探求してみる。
現在、ご縁があって、とある相談室に席を置いています。この活動は無報酬で完全なる手弁当ですが、わたしの中ではボランティアという意識はありませんし、意識的にボランティア活動という言葉も使いません。
なぜなら障がいを持つ子どもの親として、当事者の一人として、相談室にやってきた人と相対しているからです。みなさんと一緒に過ごす時間によりわたし自身が救われているのです。この活動は自分のためと言って他なりません。利他なる行為ですが、それはわたしの為なのです。すなわち「情けは人の為ならず」のことわざそのままなのです。いまは何のモヤモヤもなく機嫌良く活動に出かけているのです。
なんとなくですが
わたしの活動に対する思想は、単純にいうと仏教的みたいです。(不勉強なので、あくまで感覚的な感想です)対するボランティアは西洋的です。もちろんわたしはキリスト教の教えを理念とした高校に学んでいたので、奉仕活動やボランティアという言葉は常に身近にありました。しかしボランティアをされる立場に変わると、どうも居心地の悪さが強くなったのです。
実はわたしは職場の看護師集団との付き合いがしんどく、くたくたになっていました。社会貢献活動も、しっくりいきませんでした。学術の世界でも教授とうまくいきませんでした。
おそらく群れの中で生きていくのがダメなタイプなのでしょう。私自身の個性に問題があると自覚しています。だからどこにも身の置き場がありません。それでもなんとなく生きているので問題はありませんが。
でも相談室に出会い、少し変われそうな気がするのです。年齢と学びを積み重ねていけば、矛盾やモヤモヤの答えが、いつか明確になる日がくるでしょう。それまではしばしこの場所に身を置いてみようと思います。
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