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2023年映画マイベスト10

毎年同じことを書いてる気がしますが、振り返れば今年も良い映画がたくさんあって悩みましたが、2023年映画マイベスト10を発表します!今年は新作映画を91本観ました。

【第10位】バーナデット ママは行方不明

ケイト・ブランシェット主演作としては『TAR』も凄い映画だったけど、個人的にはこちら。『TAR』の役もそうだったが、人を見下したような態度を演じさせたら右に出るものはいないケイト。実際に近くにいたら嫌な奴と思うかもしれないが、絶妙な皮肉と愛嬌、自信と弱さのバランスによって、決して嫌いになれない。クリエイティブな人間が正しくクリエイティブを発揮することがこんなに尊く感じられるとは。さすが天才リチャード・リンクレーター監督。

【第9位】VORTEX ヴォルテックス

ギャスパー・ノエ監督が描く老後。スプリットスクリーンによってそれぞれの視点を映すことで、たとえ同じ場所で長い時間を過ごした夫婦といえど、別の個体であり決して分かり合えないという当たり前で残酷な事実を伝える。畳み掛けるような死の呆気なさは希望は無いが、この世の定めとして受け入れられるのかわからない。ただ、自分の人生においてこの映画の切実さが今後増していくことだけは確定してる。ちなみに、この映画を旅行中にアップリンク京都で観て、ドーンと落ちてそのままホテルで早寝した思い出。

【第8位】SHE SAID/シーセッド・その名を暴け

もちろんme too運動が始まったきっかけを描くことを通じたメッセージが重要な映画であるのだけど、ジャナーリストによる調査活動を描くプロフェッショナル仕事モノとしてのクオリティが素晴らしく、メッセージをさらに強いものにしている。今年は『SHE SAID』で告発されるバーンスタインのインサイダー視点の『アシスタント』やイランを舞台にした『聖地には蜘蛛が巣が張る』、キリスト教一派のとある村が舞台の『ウーマン・トーキング』など、me too運動の精神の延長線上にある映画で見応えがあるものが多かった。

【第7位】ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー VOLUME 3

今年の大型エンタメ作品としては、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』もどうかしてる過剰さで楽しかったし、マーベル映画という意味では『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』もアニメーションのネクストレベルを観る衝撃もあった(一応、前後編の前編ということもあり外した)けど、やはりガーディアンズ3はシリーズの締め括りとして素晴らしかった。シリーズが持っていた世の中の外れ者に対するジェームズ・ガン監督の優しい視点が最大限に活かされた本作で、ガーディアンズ一作目を観て感動した日から今日までのことを想って「今までありがとう!」という気持ちに。自分はガーディアンズでMCUに引き込まれたこともあり、シリーズ終了と共にフェイズ5以降のMCUへの熱量が下がった感じは否定できない。それは自分だけじゃなさそう。

【第6位】福田村事件

『SHE SAID』同様、映画に込められた社会的なメッセージの重要性に加えて、映画としての面白さという点でも優れている。何気ない小さな出来事の積み重ねが決定的な事件が発生する一点に向けて集約していく語り口がスリリング。登場人物それぞれの置かれた状況や属性によって、事件発生時の対応が別れる描き方が見事。

【第5位】ソフト/クワイエット

緩やかな差別意識が取り返しのつかない一線を越えるという点では『福田村事件』と共通している作品。92分、ワンショット撮影という手法によって、その一線を越える容易さを登場人物の息遣いのリアルさと共に体験する。頭をぶん殴られたみたいに鋭角に社会を抉る映画。

【第4位】カード・カウンター

ポール・シュレーダー監督による元服役囚のギャンブラーが主人公のスリラー映画。場末のカジノで日銭を稼ぐ孤独な男の物語を、抑えた演出と美しいカットで描くという非常な地味な映画だが、他の映画では得られない栄養を摂取しているかのような充実感がある。誰にでもオススメする映画ではないが、「俺は好き!」と言いたくなる映画。ビックバジェット娯楽作でもなく、ミニシアターで掛かるアート映画でもない、こういう映画が劇場で上映され続けることを切に願う。

【第3位】バービー

バービー人形への批評を軸に女らしさ&男らしさの呪縛から解放し、誰もが自分らしく生きるべく背中を押してくれる誰にでも優しい映画。それを映像、衣装、音楽、ギャグという最上級のエンタメに仕上げているというモンスター映画だった。映画の解釈について色んな人と会話した一年。

【第2位】逆転のトライアングル

あらゆるヒエラルキーを意地悪く皮肉を込めて描く、その切れ味の鋭過ぎて面白いだけでなく、それらを誰かの視点に肩入れすることなく全員をフェアに描いているところが素晴らしい。当然、観る側にもフェアに突き付けてくる。冒頭の男女のレストランの会計を奢る・奢らないの場面からして、笑えるけど、しっかりこちらも居心地が悪くなって、最高。

【第1位】ボーンズ・アンド・オール

人喰い(カニバリズム)がテーマということでホラー映画が苦手な自分として観るのに覚悟が必要だったけど、観てみたらとても美しい恋愛映画だった(グロ描写はある)。孤独な若者が唯一自分と同じと思える相手に出会えたという気持ちの切実さが愛おしかった。ベスト1にしたのは、鮮やかに撮られた80年代のアメリカの郊外の風景と、『WAVES』で心を掴まれたテイラー・ラッセルとティモシー・シャラメの演技とファッションなど、個人的な好き要素が詰まっていたことが理由。

【次点】

対峙、ザ・キラー、ジョンウィック4、スパイダーバース、タートルズ、シック・オブ・マイライフ他

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