見出し画像

最近観た劇場公開・配信映画(2022年3月)

3月に観た劇場公開・配信映画のレビューです。

THE BATMANーザ・バットマンー(劇場公開)

画像1

ブルース・ウェインがバットマンになって2年目の話。

映画の大半が闇夜のシーンでとにかく画面が暗い。これまでのバットマンシリーズで忘れていた、バットマンは暗闇に生きる存在であることを改めて思い出す。そして、映画館の暗闇も相俟って没入感が心地良い。

映像だけでなく、ノアール的なサスペンス、ロバート・パティソンの演技、音楽に至るまでとにかく暗い。いわゆるヒーローものの一線を超えているけど、これこそバットマンの他のヒーローとは違う特徴であり、納得感があった。

そんな中、ゾーイ・クラビッツ演じるキャットウーマンとの場面は唯一の救いとなる。2人の関係の描き方もあっさりしてて良い。もっと無くていい気がした(あと、クライマックスの格闘シーンでのアレは、流石に突っ込みたくなる…と思ったら敵に文字通り突っ込まれてたけど笑)

観終わった後は流石に三時間は流すぎるなと思ってたけど、今振り返ると3時間の闇体験にまた浸りたい自分に気づく。

画像2

愛なのに(劇場公開)

画像3

この次に書いた『猫は逃げた』と合わせてL/R15というコラボ企画の1本。こちらは城定秀夫監督、今泉力哉脚本。古本屋の店主を中心に複数の男女の想いが交錯するラブコメディ。

会話劇と物語展開とセックス絡みのあれやこれやに何度も笑った。と、同時に様々な愛の形の、みっともなさと切なさに悶絶しつつも、それでもやっぱり誰かを愛するって超素晴らしいなと爽やかな気持ちになる。

画像4

猫は逃げた(劇場公開)

画像5

L /R15企画のもう一本。こちらは今泉力哉監督、城定秀夫脚本。飼い猫をどちらが引き取るかで揉める離婚直前の夫婦とそれぞれの恋人、不器用な4人の男女を描いたラブコメディ。

取り繕ったり、格好付けたりする人間の滑稽さが猫の視点から描かれる。みんなダメなところがあるんだけど、とても愛しいキャラクター達。

猫がいることで自分の自然体で素直な気持ちが発露できる。猫を可愛がってるようで、自分を可愛がってるような関係。猫は飼ったことないけど、飼いたい気持ちが上昇した。

長回しのシーンは爆笑しながらこちらもアドレナリン出たなあ。

画像6

MEMORIA メモリア(劇場公開)

画像7

タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督、ティルダ・スウィントン主演。突然、自分にしか聞こえない爆発音が聞こえるようになった女性の物語。

何も起きない俯瞰の長回しの連続に、観ている側が主体的に意味を探そうとしたり、思わず意識が遠のいたりを繰り返す。時折訪れる底から響くような爆発音を中心に終始不穏な空気が漂う、常に平熱なティルダ・スウィントンの演技と共に不思議と心地良い時間に誘われる。そうかと思って、油断していると壮大なラストに驚く。

受け止め方のガイドが引かれたエンタメ作品の真逆を行くアート映画。映画というプラットフォームの自由さを改めて感じた。他人には全くおすすめできる映画ではないけど。。。俺はキラいじゃない!

画像8

林檎とポラロイド(劇場公開)

画像9

ギリシャの新鋭クリストス・ニク監督作品。人々が突然に記憶喪失に陥る病気が蔓延する世界の物語。治療のために決められたミッションを経験し、記録する男。

記録は記憶を補えるのか、現代社会への皮肉がありつつも、最後には骨太な感情に触れる巧みな仕掛け。近未来だがアナログ感のある不思議な設定も楽しい。

前半に散りばめられた伏線が終盤に見事に回収されて気持ち良い。。。

画像10

ベルファスト(劇場公開)

画像11

ケネス・ブラナーによる自伝フィクション。宗教闘争で激動の北アイルランド・ベルファストを生きる家族の物語。アカデミー賞7部門ノミネート。

人々の優しさに包まれた少年の生活に突如降り注ぐ暴力性が少年の目から描かれることで並列に存在するのが不思議。モノクロの映像はどこを切り取ってもイチイチ絵になる美しさ。未来への希望を感じさせる(文字通り)鮮やかな映画鑑賞シーンはその後のケネス・プラナーの人生を踏まえて感動的。

画像12

ロスト・ドーター(Netflix)

画像13

去年の年末に配信されていたのだけど、アカデミー賞の主演女優賞(オリビア・コールマン)、助演女優賞(ジェシー・バックリー)と、脚色賞ノミネートということもあってこのタイミングで鑑賞。女優のマギー・ギレンホール長編監督デビュー作。海辺の街を訪れた大学教授がある母娘との出会いから自身の過去の子育てを想う。

当然の前提のように扱われてきた母性への疑い、逆に覆われて来た、誰もが自分の時間を生きたいという気持ち。

誰もジャッジはできない。観る側に考えることを促す映画。重い余韻。

オリビア・コールマンのこちらの理解のラインを行き来するような絶妙なバランスの演技も凄いが、ジェシー・バックリーの危うさを感じる若い母親の演技も良かった。二人の演技の説得力がハンパない。

画像14

THE LONG GOODBYE(YouTube)

画像15

今年のアカデミー賞で短編映画賞を受賞した短編作品。『サウンド・オブ・メタル』のリズ・アーメッド主演。ラッパーである彼の新作用の12分の短編映画。

コミュニケーションの断絶により突如破壊される日常。以下のリンクから観れます。英語字幕でも伝わる魂の叫びのようなラップ。ショッキングな映像も含まれるけど、多くの人に見て欲しい。

終わりに

『ザ・バットマン』みたいな長時間且つ暗闇に没入する映画も、『MEMORIA』みたいな何も起きない映画も、いずれも映画館で観る体験が重要(特に『MEMORIA』は自宅で集中して観続けるのは困難な気が)な映画だった。

Podcast配信開始

3月から映画感想&オリジナルビート&雑談のPodcastを始めました。今回観た映画についても話しているので、毎週更新しているので聴いてみてください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?