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CREST「共生インタラクション」領域2022年度終了課題成果発表シンポジウム(2023年6月30日)(2023年7月11日PLosONE追記)


はじめに

岡山大学に2023年4月に赴任された中澤教授がスピーチする「JST戦略的創造研究推進事業CREST「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開(共生インタラクション)」研究領域2022年度終了課題成果発表シンポジウムに参加した。

発表会は東京大学駒場キャンパス11号館で行われ、
講演会とポスター発表・デモの2部構成になっている

講演(13:00~17:45)

13:00-13:05 開会挨拶/研究領域紹介

CREST「共生インタラクション」領域総括
間瀬 健二(名古屋大学 名誉教授)

「共生インタラクション」にはCall1,Call2,Call3の3フェーズがあり、各5チームで構成される。今回はCall1の報告会になる。
「共生インタラクション」は
・革新技術
・心の状態の把握と改善
・社会デザイン
で構成され、
「インタラクション」を通してのみ、人間が理解できる

13:05-13:45 基調講演 データ基盤から知識基盤へ

黒橋 禎夫(国立情報学研究所 所長)

情報処理学会誌Vol.64,No.5に詳しいです

https://www.fujisan.co.jp/product/1377/b/2379191/

1.問題意識:矛盾がどこから来るのか、オープンサイエンスにする必要がある(G7サミット仙台でも議題に上った)
2.NII紹介:研究+事業(SINET6、CiNii,GakuNinRDM)
大学共同利用機関法人の1組織
3.ChatGPTは、書き換え系は強いが技術情報は弱い
ブラックボックス(非公開)、寡占状態を打破するため日本初のオープンLLMが必要
(私が見つけた参考動画)

Langage and Robotics研究会聴講noteを参照してください

13:50-14:30「機械学習のためのインタラクション」

五十嵐 健夫(東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授)

http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/crest/index-j.html

「ジェスチャーレコグニション」の逆、ロボットを人間側が使いやすくする
エンドユーザ、学習サポート、エンジニアの三角形

手順
1.データ準備
3つのデータの比較により、良否の境界線を引くことが可能になる
仮想試着システム構築のため、360度回転するマネキンロボットを試作
2.開発サポート
プログラム中でデータを可視化し、プログラムもデータも変更可能
DLLプログラミング支援によりエラーの可視化
機械学習にかける前のデータ変換支援
3.ユーザ評価(インタラクション)
画像生成は、NNの微分探索によりスライダーで画像を変更
デザイン支援、NNの微分探索により形状変形、スライダと履歴記憶でやり直しもサポート
ヒストリ内探索も、未探索領域探索もスライダで可能
自動運転車にアイコンタクト機能を搭載

14:30-15:10「街角環境で共生するロボットのインタラクション基盤技術」

神田 崇行(京都大学 大学院 情報学研究科 教授/株式会社国際電気通信基礎技術研究所 客員室長)

https://www.robot.soc.i.kyoto-u.ac.jp/

「モラルインタラクション」
挨拶係(万引き防止に有効)をロボットに置き換えられるか?
モラル:人の目がないとポイ捨て
「ロボットは他者になれるのか?」ロボットいじめが発生する
モラルの観点から考える「ロボットの人らしさ」
1.モラル認知:行動・スピーチで相手の思考を判断したいが、データが少ない
2.モラルインタラクション:いじめに至るプロセスの解明
ロボットがごみ拾いしても無視、ロボットに喫煙を注意されても無視
ガードマンの行動を模倣すると劇的改善が見られた(18%→62%)
今後、タイムリーに話しかけるなども検討していく
クレーム対応は、相手が思う存分しゃべった後に要約して謝罪すると良い
3.共生に向けたHuman-Robot技術
人間らしく道を譲る
基本フレンドリーだが、必要な時は厳しく対峙する
帽子屋で実証実験。来客と売り上げ増で喜ばれる

15:10-15:50「技能獲得メカニズムの原理解明および
獲得支援システムへの展開」

小池 英樹(東京工業大学 情報理工学院 教授)

https://sites.google.com/site/jstcrestproject/

「スポーツ・音楽家のスキル伝承環境構築」
従来技法の問題点
・スキル計測環境の制限
・コーチングが実時間で行えない

「技能のコピー&ペースト」
プロジェクト1:実体と脳内姿勢のズレをなくす
(感想:鏡を見るように姿勢提示をすることかな?)

プロジェクト2:スキル伝達・測定装置→モーション予測
1)三次元頭部・身体姿勢推定システム
・胸に装着した魚眼レンズのみで関節と顔の向きを推定
DLL使用。仮想空間内で追加データセットを生成

・スマートウォッチの手の画像のみから手首のジェスチャーを推定
・0.5秒先の姿勢を予測する
(感想:こんな技術が開発されているな)

・細径人工筋肉を使った指アシスト・センサを各指に4本装着してピアノ演奏
カラーカメラ1台でピアノ演奏の手指の動きを認識
マーカありとマーカなし+DLLの認識精度を比較した

・スキー VRスキーコーチング
・ゴルフのVRスイングコーチング
姿勢を床プロジェクションで重畳表示
クラブの軌道を床にビジュアライゼーション
・卓球 VR空間で時間を伸ばし、スピン対応能力を短時間で獲得できた

・マイクロサージェリー ピンセットとガーゼで訓練し、ゲーム感覚でスコア表示
書籍「記憶する体」「体はゆく」に詳細を記載
・サイレントスピーチ 超音波で発話を学習し、無発声で発話認識
・ボルダリング 次の姿勢を誘導表示
・テニス VR空間内で時間を伸ばす
・語学学習 スピーチの時間を伸縮
・ターゲットリーチング HMD装着時の位置錯覚量を測定
・ピアノ コーチング専用デバイスを作成

16:10-16:50「脳内姿勢のずれをなくすインタラクション創発原理の解明と適用」

津田 一郎(中部大学 創発学術院 教授)
基礎分野「原理探求」
目標1:生物の「機能分化・即時適応」の数理モデルを構築する
目標2:集合知を発達させる拘束条件を明らかにする

http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/kawai/crest/

脳のSOM(拘束条件付き自己組織化)を解明する
以下、各グループの成果を手短に紹介
A1:機能モジュールの創発 モジュール構造が出現
A2:ニューロン・グリア細胞の創発 相互情報量を最大化する拘束
A3:進化型リザバーコンピュータ ネットワークアーキテクチャの創発
内部状態のGA的発達が見られたが、脳のシミュレータになっているのかも
A4:興奮と抑制 抑制が興奮以上に効果的なことがある
(感想;日経新聞の記事を想起した)

A5:リザバーのモジュールを増やすとリミットサイクルやトーラスを出力
 原因として、モジュール出力が直交基底を張るからだと考えている
Bb1:脳内協調活動指標の提案
Bb2:親子の共生インタラクション
Bb3:親子間に意識的共生インタラクションが存在するのか
Bs1:進化的拘束条件を調べる
 テングザルの集合知条件:鼻と犬歯のトレードオフ
Bs2:閉鎖形社会における拘束条件
Bs3:社会的拘束条件 協調的な意思表示が他者の脳を活性化する
 罰則規定の導入で協調性は向上するが、規定解除後は規定解除前より悪化する
(感想:「それをお金で買いますか?」では、保育園の延長保育を有償化したところ「お金さえ払えば延長保育してもらえる」意識が蔓延し、保育士が過重労働になってしまった。そこで、急遽、延長保育を無償化に戻したが、早く迎えに来る親の比率は戻らなかった。これを、マイケル・サンデルは「有償化により道徳が失われたから」と述べていたことを想起した)

16:50-17:30「「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学的解明」

中澤 篤志(岡山大学 ヘルスシステム統合科学学域 教授)

「本領域はユマニチュードに特化しすぎという声もありますが・・」
との中澤教授の言葉から講演が始まった

日本ユマニチュード学会HP
https://jhuma.org/humanitude/
https://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/200214-4.pdf

「感情労働にAI/ML/VRが役に立つのか?」
「コミュニケーション」に注目して、高コストとスケール化の問題を解決
1.ノンパーパススキルの計測
2.やさしい介護の解明
3.教育手法の開発
4.導入手法の検証

https://www.jst.go.jp/kisoken/aip/colab/image/researchers/pdf/1111098_20362593_jp.pdf

・アルツハイマー(AD)患者を、顔認識で判別
・触覚 掌の触覚を再現する掌を開発
・見つめる、話す、触るのマルチモーダル効果を計測
良いインタラクションは共感(喜怒哀楽の共有)を発現する
良い介護は、ポジティブな感情を交換し、お互いが共感する
3回くらいの共感のキャッチボールで表情筋が緩む
表情模倣システムを開発し、感情を計測
脳にはミラーニューロンシステムが存在する
・ARによるコミュニケーションツールを開発した
スキル学習は可能
介護者の共感性も変化する

17:30-17:35 閉会挨拶

間瀬 健二(名古屋大学 名誉教授)

18:00-19:00 ポスター発表

Can Eyes on a Car Reduce Traffic Accidents?

Chia-Ming Chang・KokiToda・Xinyue Gui・Stela H.Seo・Takeo Igarashi

Per Garment Capture and Synthesis for Real-time Virtual Try-on

Toby Chong・I-ChaoShen・Nobuyuki Umetani・Takeo Igarashi

ロボットいじめの質的研究ーフィールド実験で観察されたいじめと援助のプロセスー

山田幸恵・神田 崇行・冨田 加奈子

Field Trial of a Shopworker Robot with Friendly Guidance and Appropriate Admonishments

Sachi Edirisinghe・SatoruSatake・Takayuki Kanda

Gamification in microsuture training with real-timefeedback

Shio Miyafuji

モジュール型レザバーコンピューティングreBASICSを用いた適応的なロボット軌道制御

河合 祐司・熱田 洋史・浅田 稔

Functional differentiations in evolutionary reservoir computing networks

山口裕・渡部 大志・津田 一 郎

Effect of multimodal comprehensive communication skills training with video analysis by artificial intelligence for physicians on acute geriatric care

Miwako Honda

Neural mechanisms underlying subjective and facialemotional responses

Wataru Sato

ユマニチュードの触れ始めを再現するロボットハンド

湯口 彰重・豊田 真行・趙 崇貴・佐藤 勇起・高松 淳・中澤 篤志・和田 隆広・小笠原司
骨格や体温もあり、触るとすごくリアルだった。

個人それぞれの熟達化を促す組織的協調学習支援システムの開発

石川 翔吾・小俣 敦士

18:00-19:00 デモ

Can Eyes on a Car Reduce Traffi c Accidents?

電気自動車を(有人)走行させて、目の動きを実際に見ていただく

Per Garment Capture and Synthesis for Real-time Virtual Try-on

布を頭皮、繊維を血管に見立てて縫合のスコア表示を見ていただく

HEARTS (HumanitudE AR Training System), Humanitude GlassSystem

ホロレンズを装着して介護トレーニングシステムを体験していただく

19:30-21:00 懇親会

山上会館の「かどや山上亭」に場所を移して行われた。

おわりに

生活を幸せにする「共生インタラクション」
人間を中心に据えた考え方に、学ぶところ大の報告会だった。

中澤篤志教授の研究の立ち位置も明確になり、
たいへん勉強になりました

(おまけ)
私は学生時代「児童文化研究会」の「人形劇グループ」に所属していて、文化財の創作活動が楽しくてしかたありませんでした。
ある時、児童劇「スーパーカリフラエクスピアリドーシャス!」の配役が足りなくて、端役で駆り出されたのですが、舞台に登場した時の満席の子ども達の視線が私に向けられた、あの時の快感は忘れられません。

「共生インタラクション」で、人類みんなが死ぬまでずっとハッピーな人生を送れる社会を目指すのなら、例えばYOASOBIの「IKURA」になってコンサート会場で歌い踊る疑似体験が誰でも体験できるような社会が作れないものでしょうか

(本noteの位置づけ)
本noteは、録画・録音・スライドなしで、私のメモと記憶により書き起こした備忘録です。

中澤篤志教授の活動を広く知ってほしい願望もあって公開しています。
そのため多分に主観的なところや、内容がすっぽり抜け落ちている箇所、スピーチされていないけれど私が検索した内容が含まれています。
本noteは、公式が公開したものではありません。
なお、明らかな誤りはメモ欄で指摘していただければ幸いです。

(2023年7月11日追記)NEWS!


本noteは私の備忘録ですが、自由に読んでください サポートは、興味を持ったnote投稿の購読に使用させていただきます