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vol.57 会計士によるリトリート体験記 Part2

はじめに

先日「ZENネイチャー・リトリート@西湖」に参加してきました。

筆者は過去同社のネイチャー・リトリート@屋久島に参加しており、リトリートそのものの説明や屋久島での体験記についてはこちらの記事をご参照ください。

さて、前回に引き続き、西湖でも多くの学びを得ましたので、今回は「会計士によるリトリート体験記 Part2」ということで、西湖で会計士が何を感じたか、屋久島と比較しながら考察していこうと思います。


西湖の概要

西湖は山梨県富士河口湖町に位置する富士五湖の一つです。富士山の北西にあり、標高900メートルほどの場所に広がる静かな湖で、富士五湖の中でも比較的小さく観光開発があまり進んでいないため、自然の美しさが保たれています。湖の周囲は、青木ヶ原樹海に囲まれており、ハイキングやトレッキング、釣りなどが楽しめます。また、湖畔には東光禅寺などの歴史的建造物もあり、瞑想や禅の修行の場としても知られています。静寂と自然が調和するこの地は、都会の喧騒から離れリラックスするのに最適な場所です。

西湖でのネイチャー・リトリートプログラム

今回参加した「ZENネイチャー・リトリート@西湖」では、2日間にわたって自然との深い対話を通じて、心身を解放し、内なる自分と向き合う機会が用意されていました。以下はそのプログラム内容です。

■DAY1 樹海を歩き、樹木の生命力を感じる
13:00  河口湖駅集合後、ホテルバスで会場へ移動
13:30  オリエンテーション
14:00  樹海トレッキング
16:30  三湖台からの眺望を楽しむ
18:00  夕食
19:00  たき火を囲んだ対話
21:00  温泉を楽しむ
■DAY2 呼吸を調え、自然との一体感を感じる
6:30   坐禅体験
7:30   禅寺での朝がゆ朝食
10:00   くわるび川散策 歩く瞑想、渓流での瞑想、木との対話
12:00   昼食 郷土料理を楽しむ
13:00   自由時間、湖畔でのくつろぎ
14:00   湖畔での対話
15:00   クロージング、西湖を離れる
16:00   河口湖駅解散

出典: Zentre webサイト | 太字は今回の記事で取り上げた各プログラム

DAY1: 樹海トレッキング

樹海 (青木ヶ原樹海) は、864年の貞観噴火により、富士山から流れ出た溶岩の上に形成された森林です。この溶岩流が冷え固まった後、最初に地衣類や苔が生え始め、それが土壌を少しずつ形成しました。その苔の保水力が、土壌がほとんどない状態でも樹木が成長できる環境を作り、ヒノキなどが広がる森が生まれました。溶岩の上に根を張るため、樹木の根は横に広がり、木々の高さが一定になることから「樹海」と呼ばれています。

1日目は、この樹海をトレッキングすることから始まりました。溶岩の上に苔が生え 、木が根付いていくという特殊な生態系が広がっていることが分かるかと思います。

出典: 筆者撮影 | 溶岩の下には空洞が確認できる

この自然の再生プロセスを目の当たりにし、貞観噴火のような外的ショック(ビジネスに例えるとM&Aや経済危機) に対する適応力について考えさせられました。

まさに、噴火のような急激な変化があっても、その後の生態系が溶岩という土台の上に新たな環境の下で必要とされる生態系を生み出しながら成長していく様子は、例えば企業がM&A後に貸借対照表 (B/S) の開始残高を固め直し、新たな環境に適応した事業ポートフォリオを再構築していく姿をみているようでした。

DAY2: 禅寺での坐禅

2日目は、東光禅寺での坐禅体験から始まりました。坐禅中、雨音に耳を澄ませ、自然と一体化する感覚を味わうことで、普段の業務で見過ごしがちな「今この瞬間」に集中することの大切さを再認識しました。

出典: 筆者撮影 | 雨の中、和尚の言葉 「洗心」が心に響く

我々は日常どうしても損益計算書 (P/L) 上の数値 (例: 売上や利益) にとらわれがちですが、このような非日常を意識的に取り入れることにより、今の現等身大の姿を把握し、将来に向けた仕込みはできているのか、より長期的な視点からB/S全体を見つめ直す契機となります。

屋久島との比較: 異なる環境からの気づき

筆者は屋久島のヤクスギランドと西湖近くの樹海それぞれをトレッキングしましたが、自然 (ビジネス) 環境が異なれば持つべき生態系 (資産) も異なることを強く感じました。

屋久島では、倒木が新たな生命の基盤となり、その上で次世代の屋久杉が育つ「倒木更新」が進みます。倒木は長い年月をかけてゆっくりと腐り、その過程で新たな屋久杉が芽を出し、森が持続可能な形で再生されます。

筆者撮影 | 倒れた屋久杉から新しい屋久杉が芽吹く

一方、樹海では、倒木が朽ちると、きのこなどの菌類がそれを分解し、栄養を土壌に還元します。土壌が非常に薄いため、菌類が果たす役割は大きく、分解された栄養は他の植物の成長に寄与します。また、苔が保水力を高め、樹木の生育を助けます​。

筆者撮影 | 倒木を分解すべくきのこが生えているのが分かる

このように、屋久島では「倒木が新たな樹木の基盤となる」ことが森林再生の中心であるのに対し、青木ヶ原樹海では「倒木が速やかに分解されて土壌に還元される」ことが再生プロセスの中心であり、菌類がそのプロセスを支えていました。

これは、企業生き残りをかけて戦略を立てる際も同じであり、企業はその置かれた環境や状況に応じて、異なるアプローチで事業ポートフォリオを見直し、必要な資産を確保していくべきだという教訓を与えてくれていると思います。

まとめ

西湖でのリトリート体験を会計士目線で屋久島と比較しつつ「会計士によるリトリート体験記 Part2」としてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?

このような形で日常の喧騒から意思的に距離を置き、自然との対話を重ねることは、最終的にビジネスにも多くの洞察を与えてくれるものだと感じます。特に、急激な変化に対して適応し、環境に応じた最適な生態系 (事業ポートフォリオ) を再構築することの重要性は自然でもビジネスでも変わらないものであると思いました。

先日経産省で開催された、第1回 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会の事務局説明資料を見ると、激変する環境下において、事業ポートフォリオの見直しや無形資産投資の重要性に触れられています。

出典: 第1回 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 事務局説明資料

私も屋久島や樹海との対話から得られた学びを大切にし、どのような資産に投資し、育んでいけば豊かな生態系を手に入れることができるのかを考えていきたいと思います。

このような素晴らしいリトリートツアーを企画いただいた関係者の方、貴重な時間をご一緒いただいた参加者の方、ありがとうございました!

出典: 参加者撮影

おわりに

この記事が少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。ご意見や感想は、noteのコメント欄やX(@tadashiyano3)までお寄せください。

この記事に記載されている内容は、私の個人的な経験と見解に基づくものであり、過去に所属していた組織とは関係ございません。

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