vol.7 ブリッジコンサルティンググループ
1 対象企業の概要
今回の対象企業であるブリッジコンサルティンググループ株式会社 (以下「対象企業」) は、公認会計士人材の経験・知見のデータベース化・最適配分を通じて、経営管理の課題解決を支援するプロシェアリング事業等を実施している会社です。具体的には、主に以下のとおりとなります。
(1) 経営管理コンサルティングサービス
対象企業の公認会計士がプロジェクトマネジメントを担当し、パートナー会計士 (*) のサポートと品質管理、プロジェクト管理を行いながら、チームで依頼企業に伴奏した支援を実施
(*) 対象企業の業務委託先である公認会計士等
(2) プロフェッショナル人材紹介サービス
公認会計士に特化したプロ人材DB「会計士.job」を活用し、ハイクラス管理部門人材の採用を支援
次に対象企業の業績推移を示します。なお、対象企業は9月決算会社であり、2022年5月30日にTOKYO PRO Market上場後、2023年6月26日に東京証券取引所グロース市場へと、ステップアップ上場を果たしています。
2 ステップ2: ビジネスモデルの理解
対象企業の有価証券報告書をビジネスモデルキャンバスにあてはめてみます。
今まで見てきた企業と比較して以下二点が特徴的かと思いました。
公認会計士に特化していること
対象企業の社内人材 (コンサルタント)がパートナー会計士とチームを組み、品質管理を含めたプロジェクトマネジメントを実施すること
私は監査法人の出身者ですが、監査法人系のコンサルティング部門のデリバリー部隊をオンラインプラットフォーム等でデータベース化し、案件にマッチした最適なチームを組成、デリバリーしているものと理解しました。
結果、以下三点がビジネスモデル上重要なポイントであることがわかるかと思います。
(1) 公認会計士の登録者数を伸ばせるか?
(2) クライアントから経営管理に関する課題案件をとってこれるか?
(3) 案件にマッチしたチームを組成、高品質なサービスを納品できるか?
3 ステップ3: ストーリーの再構築
ビジネスモデルを理解した後、有価証券報告書の情報を以下のように再構築してみました。
なお、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」が見当たりませんでしたが、これは記載免除規定が適用されているものと想定されます。
さて、あわせてピックアップしたKPIも見てみましょう。
パートナー会計士とクライアント、これらをマッチングしてプロジェクトを推進するコンサルタント含め順調に伸びています。
日本公認会計士協会によれば、2022年10月における会員、準会員の合計人数は約4万人であり、パートナー会計士の「のびしろ」はまだまだありそうです。
4 ステップ4: ROEの分析
ROEとその構成要素は以下のとおりです。グロース市場へ上場後間もないので期間が短くなっております。
上述のように、対象企業はパートナー会計士やクライアントからの案件数、両者をマッチングするコンサルタントを増やしており、結果として8%を上回る水準を叩き出していると考えることも可能かと思います。
5 ステップ5: PBRの分析
最後にPBRとなります。8%を超えるROEに加え、今後の成長期待を踏まえ、対象企業のPBRも高い水準を保持していることが見て取れます。
6 まとめ
対象企業の有価証券報告書を一緒に見てみましたが、如何でしたでしょうか?
会計数値を単純に見ただけでは捉えられない対象企業の姿を、有価証券報告書をビジネスモデルキャンバスにあてはめ、ストーリーを再構築することによって理解を深めることができる、という点をお伝えすることができれば幸いです。
なお、私は対象会社とvol.5 MS-Japanとの相違点を以下のようにまとめてみました。
両社とも公認会計士関連ビジネスをメインとしているが、MS-Japanは人材紹介事業 (転職支援) を、対象企業はコンサルティング業務のマッチングを主に実施。
MS-Japanはマーケティング支援等、広告ビジネスへ進出。
対象企業は人材紹介サービス等、転職支援ビジネスへ進出。
最後に、私のnoteにおける目的は、財務諸表の読み方の一例を皆様と共有することであり、特定の銘柄を推奨する立場ではない点、ご理解頂ければと思います。
7 次回予告
次回は今まで見てきた内容をふりかえり、士業のビジネスマッチングサービスで取り上げた対象企業を比較してみる予定です。
8 おわりに
この記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。ご意見や感想は、noteのコメント欄やX (@tadashiyano3) までお寄せください。
なお、投稿内容は私個人の見解に基づくものであり、過去所属していた組織とは関係ございません。
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