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vol.5 MS-Japan

1 対象企業の概要

今回の対象企業である株式会社MS-Japan (以下「対象企業」) は、一般事業会社の管理部門職種 (経理・財務・人事・総務・法務・経営企画等)と弁護士、公認会計士、税理士等の資格を有する士業を対象とした、人材紹介事業(有料職業紹介事業)を主たる事業としている会社です。

ちなみにMSとはMatching Serviceの略であり、有価証券報告書の英訳名を見るとMatching Service Japan Co., Ltd.となっています。

次に対象企業の業績推移を示します。

バフェット・コードのWebサイトより

売上の増加に対し、各種利益率やROEは安定しており、全般的に順調に成長しているといえるかと思います。

2 ステップ2: ビジネスモデルの理解

対象企業の有価証券報告書をビジネスモデルキャンバスにあてはめてみましょう。

有価証券報告書をベースに筆者作成

vol.4と似ておりますが、(1) オンラインプラットフォーム等の使い勝手を如何に向上させ、(2) 士業の求職者や企業 (管理部門) の求人数を伸ばし、(3) コンテンツを通じてコミュニティーを活発にするか? がビジネスモデル上重要なポイントであることがわかるかと思います。

3 ステップ3: ストーリーの再構築

ビジネスモデルを理解した後、有価証券報告書の情報を以下のように再構築してみました。

有価証券報告書や決算説明資料をベースに筆者作成

対象企業はその戦略遂行の一環として様々な企業へ投資を行っているようで、2021年1月22日のプレスリリースによれば、CVCファンド「MS・HAYATE1号投資事業組合」に関し、出資額20億円との記載があります。

さて、あわせてピックアップしたKPIも見てみましょう。

有価証券報告書や決算説明資料をベースに筆者作成

「持分相当額を純額で計上する組合その他これに準ずる事業体への出資」ですが、有価証券報告書を見る限り、前述の投資事業組合を通じた出資に関するものと思われます。会計ルールを説明すると複雑になるためこれ以上は割愛しますが、対象企業は同投資事業組合を通じて投資を進めていることが読み取れるかと思います。

また広告宣伝費 (求職者や求人獲得数へのマーケティング)の増加を通じ、登録者決定率や新規求人数も順調に伸びています。

4 ステップ4: ROEの分析

ROEとその構成要素は以下のように推移しています。

バフェット・コードのWebサイトより

人材紹介事業を中心としたオンラインプラットフォームに管理部門職種や各種士業に関連する求人及び求職者が集まるコミュニティが形成されており、登録者決定率も上昇傾向にあること等から、対象会社は継続的に8%を上回る水準を叩き出していると考えることも可能かと思います。

5 ステップ5: PBRの分析

最後にPBRとなります。継続的に8%を超えるROEを計上していることと相関する形で、対象企業のPBRも継続的に高い水準を保持していることが見て取れます。

バフェット・コードのWebサイトより

6 まとめ

対象企業の有価証券報告書を一緒に見てみましたが、如何でしたでしょうか? 

会計数値を単純に見ただけでは捉えられない対象企業の姿を、有価証券報告書をビジネスモデルキャンバスにあてはめ、ストーリーを再構築することによって理解を深めることができる、という点をお伝えすることができれば幸いです。

なお、私は対象会社とvol.4の弁護士ドットコムとの相違点を以下のようにまとめてみました。

  • 会計士の転職支援等、士業の人材紹介事業に強みがあり、その割合が大きい (経理・財務のB to B)。

  • Manageyを活用した新規事業創出により、人材紹介事業以外の割合を増やすことが戦略上一つの柱。

  • 戦略遂行の為の投資がCVC等を通じて行われている。

最後に、私のnoteにおける目的は、財務諸表の読み方の一例を皆様と共有することであり、特定の銘柄を推奨する立場ではない点、ご理解頂ければと思います。

7 次回予告

次回は銘柄7378 アシロの有価証券報告書を取り上げてみたいと思います。

8 おわりに

この記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。ご意見や感想は、noteのコメント欄やX (@tadashiyano3) までお寄せください。

なお、投稿内容は私個人の見解に基づくものであり、過去所属していた組織とは関係ございません。

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