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生きる力の確認作業

便利な世の中になった。便利なツールを使いこなせることが生きる力なのだとしたら、わたしは、その力を欲していないかもしれない。

学生の頃と同じ、携帯も使えない、言葉も通じない、そもそも目的もあまりない、そんな状況で。紙の地図で、片言もしくは身振り手振りで、その一瞬一瞬を、どんな状況をも、楽しむ。
そんな風に異国の地を旅できれば、わたしはあの頃の生きる力を失っていないのだなあと安心するし、じゅうぶんである。


今回の旅先には、短い休みでさくっと地方空港からも行ける海外として、韓国を選んだ。もともとKPOPが好きとかではなく、韓国料理は誘われたら食べに行くくらい。韓国風のメイクやエステ、小顔矯正にも興味がない。ただ、予算や時間の関係で唯一の選択肢としてあったのが、韓国だった。


不安はこれまでで一番大きかった。フィリピンに1ヶ月一人旅する方がまだ不安が小さい。インターネットの情報に翻弄される。最近まで韓国には、一人で外食をする文化がなかったらしい。そもそも韓国で何をしたいのかいまいちピンと来ないし、わたしはいったいこの旅行を楽しめるのか、何かを残して帰れるのか、どうか。


大きくなる不安を抱きながら、ただわたしは、自分の”生きる力”を確認しようと思った。何事も楽しむことができれば大丈夫、もし、それができなくなっていれば、その事実を確認するまでだ。そう言い聞かせて不安をごまかしていたら、当日の朝まで準備ができなかった。

「地図を読む力や方角を把握する力、感覚的に土地勘を得る力は衰えていないし、むしろ上がっている気もする。でも、飛び込む勇気が、小さくなっているな。たかがご飯屋さんなのに周囲の目線を気にしたり。一人旅ならではの他人との密な出会いも今のところない。話しかける勇気とか、笑いかける勇気。これらの勇気は、コミュニケーション力に分類されるだろうか。」


「ただ、何気ないことを楽しむ力は相変わらずあるみたいだ。何度も読み込んだガイドブックは結局無視。直感でお店を選んだり、間違えて降りた駅を散策してみたり。ゲストハウスの、水圧と水温が不安定なシャワー。それで綺麗さっぱりすることも楽しんでいる。韓国という国を人々の様子から捉えようとしたり。(これについては別で書こう) 普段なら絶対に歩かない距離をぐんぐん歩いたりして。体力も、一人旅となれば倍増だ。」


「あぁ旅行楽しかった」で楽しい思い出だけにしてしまうのではなくて。わたしにとっては、旅先でする事や起こる事に対する自分の心の動きの1つひとつが、確認作業なのだ。


以前よりも少し鈍ってきたところを見つけては、鈍ったね、と認識する。相変わらずできていることがあれば、あぁよかった、と安心する。1人だけど1人じゃなくて、いつもはできないくらい丁寧に時間をかけて、ゆっくりと、自分と対話をする。


そういえば、あの頃に比べ成長したなぁと思える部分は、あっただろうか?旅先に何かを残して帰ることができただろうか?明確な答えが持てていない自分に落ち込んでしまう。ただ、そんな自分に気づいて、今年も生きる力の確認作業ができたこと、久しぶりにゆっくり自分と話ができたことを、嬉しく思う。

(生きる力の確認作業
2011年 オーストラリア
2012年 タイ、フィリピン
2013年 タイ、ラオス、カンボジア、フィリピン
2014年 フィリピン
2016年 台湾
2017年 フィリピン
2018年 韓国
To be continued...)

#エッセイ #日記 #紀行文 #一人旅 #旅

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