見出し画像

朱春い

ある設計図の裏のメモを書き写す
(コロナ禍と共に迎えたゴールデンウィークへと遡る)

誰が想像しただろうか
ここはまだ暖房が必要

現在四月下旬、コロナ自粛を跨ぐゴールデンウィークは例年より早くスタートした。ここ一ヶ月、僕はスーパーと釣り場以外では誰とも会わずに、ひとり三重の山奥のスタジオで作業している。

昼飯を食べ、窓辺でうつらうつらしていると、高校、浪人、大学時代の色事が順に蘇る。過去の青春は春の陽気をまとって文字通りの季節感である。陰陽五行思想というものがあるらしく、それによれば僕は年齢的に春の次の夏、「朱夏」にいる。一生に春は一度。過ぎ去り、三十路を過ぎてもなお「朱春」を噛み締める。その一方で青い記憶は経験したことがある五感の配置によって突如蘇る。青春とは思い返して初めてわかる現在の赤さに青を見て、そわそわする心、春には春の青さを知るわけがなく、季節などないと錯覚していたからだろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?