止ん事のn

三十三才/美術家/玩具デザイナー/イラストレーター/日独翻訳/庭師/ 風呂と昼休みの時…

止ん事のn

三十三才/美術家/玩具デザイナー/イラストレーター/日独翻訳/庭師/ 風呂と昼休みの時間に文章を書きます

最近の記事

映像脳

(ただプーチンは熊に乗って仕事へ行く) 「おおベイビー、君匂うよ」 目を瞑ったそばからじょうごを頭にぶっ刺され、そこを伝ってどばどばと映像が流し込まれるような状態で、ただ目の中全体を見ている。 (頭と体が平面三角の人間が川を流れるように上の方からこちらへ歩いてくる) いつでも目を開けれる状態だから夢ではない。明晰夢でもない。意思とは関係なく映画を見るように勝手に物語が進み、360度カメラの映像みたいにぐるぐると視点が変えられる。「意思とは、医師である」という具合に形の概

    • あついさむい

      真夏のクーラーの20度と、冬のエアコンの20度の体感は絶対に等しくない。まあ当然というか、同じ気温であっても夏の高湿の気候と冬場のカラッとした晴天では体感は異なるに決まっている。 こうした毎日の気温や気候、体温の変化に敏感に反応して、無意識に暑いだの寒いだのと口にする。生涯を通して一番口にしている独り言ではないかと思うほどに多い。辛いときこそ辛いとあえて口にするように、発話によって痛みの軽減を期待するわけではなく、ただの意味の無い確認である。 もし意味があるとすれば、温度

      • 朱春い

        ある設計図の裏のメモを書き写す (コロナ禍と共に迎えたゴールデンウィークへと遡る) 誰が想像しただろうか ここはまだ暖房が必要 現在四月下旬、コロナ自粛を跨ぐゴールデンウィークは例年より早くスタートした。ここ一ヶ月、僕はスーパーと釣り場以外では誰とも会わずに、ひとり三重の山奥のスタジオで作業している。 昼飯を食べ、窓辺でうつらうつらしていると、高校、浪人、大学時代の色事が順に蘇る。過去の青春は春の陽気をまとって文字通りの季節感である。陰陽五行思想というものがあるらしく、

        • 箱庭

          過去を思い返していると、視界というか、意識は周囲の景色に溶けている。空間を一瞬で飛び越えても、音が途切れても、あらゆる方向へ映像は流動している。やはり記憶は頭の中の時間である。 僕はこの頭の中の運動が、”箱庭セラピー”の箱の中と同じように、自身と対話している状態だと思っている。実際の箱庭セラピーは、患者さんが一つの世界に見立てた箱の中に何かの象徴的なフィギュアを配置する行為を通して、彼らの無意識の表現の理解を助ける。それと比べると、僕の箱庭では自身の気づいていない統合性に触れ

          陳情パイロット

          大学時代に仲の良い三人の友人と頻繁に楽器でセッションしていた。僕はドラムやサックスに混じってカシオパッドというエフェクトをかける機材をいじっていた。そしてやることがなくなると、当時八年間好きだった女の子への思いを音楽に乗せて発散していた。決定的な音痴だから歌うことは諦め、韻を頼りに彼女への鬱憤を羅列した。このシステムが幸いし、彼女への執着は日に日に薄れていった。仲間と騒ぐ楽しさによるものがかなり大きいが、忘れていた記憶や感情を韻によって手繰り寄せていく中で、過去の間違いや辛い

          陳情パイロット