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20代のころ好きだったKくん⑪~なかなか忘れさせてくれない編~

 前の職場の忘年会でKくんに雑に扱われてから私の気持ちは少し冷めてしまいました。メッセージを送るも既読スルーされたまま。むなしい気持ちを抱えたまま、仕事も忙しくて私は鬱々としながらストレスで暴飲暴食をしたり、ひきこもってひたすらアニメと漫画を見る日々を送っていた。

 異動先でヤンマーさんが元居た部署がすごく成績がいいから、どういうことをやって成績がいいのか「探って来てくれ、と言われたのをいいことに、Kくんに「最近すごいね!Kくん頑張ってるね!どういう風にやってるの?」ってLINEしてみたら「あれ自分じゃなくて先輩なんです。自分ダメダメっす…」と少し元気ない。励ましのメッセージを送ってもまた既読スルーで返信なし。

 そしてまた理由をこじつけて前の部署に行く用事を作ったけど、さすがにもう話す話題ないかな、と思ってKくんに気付いて欲しくて思い切って髪の毛をバッサリ切ったり。そしたらKくんに「だいぶさっぱりしましたね^^」って話しかけてもらえた。でもそれだけ言うとKくんはさっさと自分の仕事に戻って行ってしまった。

 こうして私のKくんへの気持ちは時間の経過とともに少しずつ熱を失っていった。当時28歳、彼氏のいる友人たちは次々と結婚していき、彼氏のいなかった友人たちは合コンや婚活でなんとか結婚相手を探そうと躍起になっていた。私もその友人たちに影響され、友人から男性を紹介してもらったり、街コンに参加してみたり、合コンに参加してみたり…。

 しかし、一緒に参加した友人たちは何かしら誘いがあるのにも関わらず、私だけが誰からも声がかからない。紹介してもらった男性のこともどうしても好きになれない。連絡先を聞かれても携帯をカバンから出すことすらせず、苦笑いでその場をごまかしたり…。

 今思えば、人を好きになるのに時間がかかる私がそういう婚活がうまくいくはずなかった。そして冷めたとはいえ、私はKくんのことを全然吹っ切れていなかったのでそういう気持ちになれなかったというのもある。当時の私は太っていた自分をとにかく責めていた。今思えば確かに一般的な女性よりは太ってたけど、原因はそれだけじゃなかったんだよね。

 そうして時間だけが過ぎていき、異動してからが約1年経過した。Kくんのことを思い出すことはなくなっていて、仕事にも少しずつ慣れて、休日は一人旅をしたり、ハマれる漫画に出会ったりと充実した生活を送れるようになっていた。しかし、ある日の仕事中に久しぶりにKくんから電話がかかってきた。電話の内容は仕事のある資料をもってないか、という内容。正直私じゃなくてもいいし、なんでわざわざ私にお願いしてきたんだろう?という。次の日も私が別件で前の部署に電話かけたらKくんがたまたま電話出るし。そしてその週末には4つ上の先輩♂から同年代の社員を集めて飲み会をするから来てよ!と誘われてその飲み会に行くと

 なんと、Kくんがいた。

 気持ちが冷め始めると、無駄に連絡が来たり、声がきけたり、こうやって偶然に会えるんだね。せっかく忘れ始めてたのに。

 久しぶりに会ったKくんは、少しだけ大人っぽくなってた。きっと仕事も慣れてきて、しっかりしたんだろう。飲み会の席では私は近くに座れず、Kくんは隣に座った女性の先輩にずとちょっかいだされてて、私はなんだかイライラしてしまった。別に、K君は私のものでもなんでもないし、他の先輩にかわいがられるのだって私には関係ない。

 実際に声を聞いて、顔を見て、姿を見て、やっぱり好きだって気持ちが自分の中に残ってたことに気付いた。だから、私以外の女性と仲良くしているところを見ると、たまらなく悲しくなった。

 一次会が終わり、二次会もやるということでぞろぞろと歩いていた。私の少し前を歩いていたKくんは男の先輩と二次会のお店は焼きうどんがおいしいという話をしていた。するとKくんは突然後ろを振り向き、

「ヤンマーさん、焼きうどんおいしいんですって!」

とニコニコ話しかけてきた。

「なんでヤンマーさんにふるの?w」と男の先輩が笑うと
「いや、ヤンマーさんとこの地域の食べ歩き行こうって…」と。
「へー、仲良しだね」

 なんでそんな訳の分からない嘘をつくの?Kくんとは仕事中のランチでチェーン店しかいったことないですけど?

 二次会にいってからも少し遠い席になってしまい、ちびちびとお酒を飲みながら後輩♀と仕事の愚痴を言うことしかできない私。Kくんは、私に関連する話題が出る度に私に目線を送ってくる。

 なんでそんなことするの?私のLINEに返信しないくせに。会った時だけなんでかまってくるの?

 その後なんとなく席替えみたいなのが行われてKくんの隣に座ることができた。でも目の前に座った先輩♂が自分語りがすごくて、Kくんとそんなにお話しできず。でもちょいちょい話しかけてくる。

「ヤンマーさんこれ食べます?好きでしたよね。」
「別に好きじゃないけどw好きっていったっけ?」
「いや、言ってないですw」

 一緒に働いてきたときの失敗とかをものすごいいじってきたり、私が前に話したエピソードを事細かに覚えてたり。

 やめて、もう、またKくんのことを好きになったら辛いだけなんだから。もうこれ以上発展しないのわかってるんだから。

 挙句の果てに先輩♂に好きな女性のタイプを聞かれて「年上の女性っすねー。」だとさ。

 なんでそういうこというの?でもその場にはKくんよりも年上の女性しかいなかったからお世辞だったのかもしれないけど、それでも私は変にドギマギしてしまった。

 そして馬鹿な私は今の部署にいる後輩♂(Kくんの同期)が仕事ができてかわいいんだよーってKくんを嫉妬させようとしたり(これ、今思えばめちゃくちゃ悪手だよなぁ)全然Kくんと仲良くできなくて。

 そして二次会もあっという間に終わり、その場は解散となった。

 そっと帰ろうとする私にKくんが話しかけてきた。

「ヤンマーさん、ラーメン食べます?替え玉します?w」

 絶対に行くわけないのに、そうやって軽口をたたく。「もうおなかいっぱいだっつーのw」といって私はさっさと帰ってしまった。

 もし、ここで「え?おごってくれるのー?」くらい言えれば。本気にして行っちゃってたら。私はいつもそういうところの選択を間違える。

 そして神様はまだまだ私に彼を忘れさせないのです。

 飲み会から数週間後、KくんからLINEが来た。向こうからLINEなんて来たことないのになんだろう、とメッセージをみると、前の職場で結婚退職して遠くに引っ越してしまった先輩♀が久しぶりにこちらに帰ってくるというので、当時一緒に働いていた人たちと飲み会をやろうということになって、Kくんは上司から幹事をまかされたので一人ずつ出欠の連絡をとっているとのことだった。

 また、Kくんと会えるんだ。

 神様はときどきこういういたずらをする。好きな人と、私を引き合わせようとする。

 その飲み会を楽しみにしていざ当日参加したけど、結果的に私はKくんとちゃんと話すことができなかった。

 飲み会では近くの席に座れず、Kくんと上司が話しているのを盗み聞きしていた。

 Kくんの口からはっきり遠距離の彼女とは去年の夏頃別れたって話を聞けた。それと同時に、異動したあとにすぐに彼女ができたらしい。でも、その彼女ともあっという間に別れて「おれ向いてねーんすわ」って言ってた。

 ああ、そうだよね。彼は彼女作ろうと思えばすぐできる人種なんだ。そして、私はその候補にすらなれない。職場の先輩と言う立場を利用して仕事中にご飯に行ったり、職場の飲み会でしか接触できない。職場が離れれば、私から連絡しなくちゃ、連絡は来ないし、呼ばれた飲み会でしか会えない。

 それから二次会で上司♂と先輩♀とKくんと私でラーメンを食べに行った。先輩♀とKくんは好きなアーティストが同じだったらしく、ときどきLINEでアーティストのライブ情報とか交換したり、ライブ会場で会ったりしてたらしい。しかもKくんの恋愛事情めちゃくちゃ知ってて、「あんたあの美容師の子だめだったんだw」と。

 その話を聞いて私は一気に自分のKくんへの熱がひいていくのを感じた。先輩♀は結婚してて、もう会社も辞めてて、遠くに住んでるのに、Kくんとそんなやりとりしてたんだ。Kくんは先輩♀には自分の恋愛相談とかしてたんだなぁ。私、全然仲良くなかったんだ。本当に仕事上の付き合いだったんだな。年が近い女性だったら私が一番Kくんと距離が近いと思ってたのは私だけだったのね。

 やっぱり、叶わない片思いだったなぁ。
 どうして私は男の人と仲良くなれなんだろう。
 好きな人から好かれないんだろう。
 でも、Kくんと過ごせた日々は幸せだったなぁ。
 人を好きになれてよかったなぁ。
 また、人を好きになることなんてあるのかな、なんて思いながら、その日は帰ったのでした。

 こうして、Kくんへの気持ちに折り合いをつけて、私の片思いは終わりを告げたのでした。

 これでKくんとの話はおしまい。次回、本当の本当にKくんとの別れを書いてそれで本当の終わりです。


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