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近江の正倉院・聖衆来迎寺/要予約!快慶作の釈迦如来・圓福院/盛安寺【滋賀】

石山寺と三井寺(園城寺)間にある見逃せない仏像たちを安置する寺。様々の寺宝がありながら毎年8月16日の虫干会のみに公開されるため、あまり知られていないが、近江の正倉院と呼ばれる「聖衆来迎寺」、要予約の「圓福院」、そして「盛安寺」の見仏をまとめて紹介。

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変更履歴
2021/10/31 盛安寺:参拝時の写真を更新
2021/10/15 初版

▼HP

圓福院:なし

盛安寺

聖衆来迎寺

▼アクセス

※後述「▼見どころ」参照

▼祭神・本尊と脇時

※後述「▼見どころ」参照

▼見どころ

▽圓福院

 滋賀県大津市富士見台35-18。
  元の本尊は十一面観音で、現在は快慶作の釈迦如来坐像である。 本尊は1197年10月の作で拝観には事前予約が必要。
 鉄筋コンクリートで作られたお堂の中には左右に羅漢が階段状にずらりと並ぶ。本尊の快慶作の釈迦如来坐像は大津市の正法寺というお寺にあったものが寛正5年(1793)に還移したもので、像の高さは56.3cm(光背含まず)と小振りながらも衣紋の流れは刻みよく力のある目元をしている。

「釈迦如来坐像@重文」は切れ長の目で墨書に快慶作と思わせる「安阿弥」とあるのだが、「御作」と続いており、快慶作ではなさそうで、快慶に憧れを抱いた仏師作なのかもしれない。ちなみにこの本尊は「正法寺」から移されたことがわかっている。あと胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅、釈迦十六善神図と天台宗に多い宝物が展示されていた。
 

▽盛安寺 2021/10/31更新

 滋賀県大津市坂本1-17-1。
 天台真盛宗「盛安寺」には、近江を代表する十一面観音立像などの名品が伝わる。 見仏は『聖衆来迎寺と盛安寺-明智光秀ゆかりの下阪本の社寺-』でえ初見仏し、その後実際に参拝した。

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本尊は阿弥陀如来坐像。

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さて、お目当ての仏像は道を挟んだ収蔵庫です!
一般には5月、6月、10月の土日のみ開扉です。本殿裏に住職の家?があり、そこにご朱印やパンフレットがある。

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収蔵庫から本堂の写真。

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↑十一面観音立像@重文 2021/10/31更新

 この寺で有名なのが作例が少ない四臂の「十一面観音立像@重文」で、この展示会では主役扱いで独り展示されていた。なんとここだけ写真撮影可能だった!ラッキー!!!錫杖を持っているので長谷寺式十一面観音になるが、これは後世で持たせたのかもしれない。一瞬、虚空蔵菩薩にも見えたのは私だけだろうか・・。最後に善水寺の諸像と作風が近いようだ。

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作例が少ない四臂の「十一面観音立像@重文」は、関東の寺に安置されていたらしく、火災により盛安寺の薬師如来と変えっこした歴史がある。

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↑聖観音立像 2021/10/31更新

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 「聖観音立像」は腰ひねりの衣文が綺麗な仏像だった。切金文様が残り、蓮華の花を開こうとしているしぐさが良い。

↑地蔵菩薩立像 2021/10/31更新

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 「地蔵菩薩立像」は京都・壬生寺や奈良・矢田寺にいる地蔵菩薩と似ており、1700年頃に京都に出開帳している。京都でも有名な仏像寺だったとも言えようか。

↑阿弥陀如来立像 2021/10/31更新

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この寺には「説法印」を結んだ「阿弥陀如来立像」がいる。説法印の阿弥陀で立像は初めて見た。本尊の阿弥陀如来坐像の顔と似ており、同じ仏師が作ったのかも。

▽聖衆来迎寺

 滋賀県大津市比叡辻2-4-17。「しょうじゅらいこうじ」と読み、境内と庭園は毎年8月16日の「虫千会」だけ公開する。
 近江の正倉院とも呼ばれる「聖衆来迎寺」には、著名な「六道絵@国宝」をはじめとした国宝や重要文化財が多数所蔵されている天台宗の古刹。
 表門は坂本城の城門を移築しており、坂本城の唯一の遺構として知られている。坂本城周辺の寺として「西教寺」とともに明智光秀と関係していたようだ。
 2020年、聖衆来迎寺蔵「仏涅槃図」の裏書から、光秀の妻・煕子の戒名が見つかったそうな。

 ということだが、寺で未見仏なので、ここは特別展での感想です。

2020年大津歴史博物館
  『聖衆来迎寺と盛安寺-明智光秀ゆかりの下阪本の社寺-

六道絵は東京・大阪・京都・奈良から36年ぶりに里帰り。そして、天台真盛宗「盛安寺」には、近江を代表する十一面観音立像などの名品が伝わる。

  六道絵@国宝、十一面観音立像@重文、釈迦如来坐像@重文、「日光月光菩薩立像@重文」などが展示されていた。その他、愛染明王坐像、聖観音立像と見逃せない仏像が多数ある。その他としては一目で白鳳時代とわかる「薬師如来立像@重文」や、旧型の「吉祥天立像」、平安時代の「法華経@重文 1巻」など宝物が並んでいた。
 この寺が宝物が多いのは「元応寺」との関係がある。「元応寺」は京都市内にある寺で、戦火で廃寺になる。難を逃れた宝物はここに流れ着いたらしい。

 それでは見仏の感想です。

↑チーム薬師

 薬師如来@秘仏の脇侍である日光・月光菩薩立像@重文が展示されていた。切金が残った綺麗な美仏である。十二神将もいることから「チーム薬師」となっている。この日光・月光菩薩、十二神将は元々は京都岡崎・元応寺で祀られていた。

↑釈迦・阿弥陀・薬師如来三尊

 本尊は釈迦・阿弥陀・薬師如来三尊を本尊としている。その中で「釈迦如来坐像@重文」は運慶が造りそうな雰囲気があり、年代もあわせると肥後定慶作という噂がある仏像。

↑地蔵菩薩立像、不動明王立像、毘沙門天立像

 藤田美術館に安置されている快慶作「地蔵菩薩立像」かと思わせる衣文の綺麗な「地蔵菩薩立像@重文」、牙が上下を向いている「不動明王立像」、「毘沙門天立像」など小ぶりながらも、存在のある仏像が展示されていた。 鎌倉時代からの仏像については、元応寺来た仏像と聖衆来迎寺に居続ける仏像を見比べると都仏師(慶派、院派、円派)と地方仏師の技術の差がわかって面白い。

↑誕生釈迦如来立像、薬師如来立像@重文、吉祥天立像、逆手阿弥陀如来立像

 古刹に多い「誕生釈迦如来立像」もあり、白鳳時代の金銅で出来た仏像「薬師如来立像@重文」が面白かった。右手が自分の衣文をぎゅっと握っているのは初めてかと思う。また、白鳳時代の旧式「吉祥天立像」も見どころ。鎌倉時代になるが快慶が多く作った「逆手阿弥陀如来立像」は、顔のえらが運慶系で見どころあり。ただ、運慶は鎌倉に腰を据えたと認識しているので、近い仏師と思われる。

2018年 大津市歴史博物館『神仏のかたち』
釈迦が生まれた瞬間を表現した「誕生釈迦立像」と「吉祥天立像」と「大黒天立像」と「愛染明王坐像」が展示。釈迦誕生仏は右手の人差し指を天に向けているのだが、ここは頭の上から左方に向けており、ラジオ体操をしている。「吉祥天立像」は平安時代のもので、京都・奈良の古刹に多い初期型吉祥天。変わって、「大黒天立像」は鎌倉時代のもので、オオクニヌシと神仏習合させた形の仏像になっている。最後に「愛染明王坐像」は顔は憤怒になっているが、西大寺などと同じく小さいためか可愛らしい。

2018年 三井記念美術館「仏像の姿」
 現在、滋賀・大津歴史博物館では琵琶湖西側にある延暦寺・三井寺・石山寺などの寺が協力し、仏像展示をしている。滋賀の正倉院と言われる「聖衆来迎院@8/9のみ寺公開」にある「薬師如来立像@重文」は公開されなかった・・・。
 って、こっちに来ているやん!!と急遽、放り込んだ!! 右手が衣文を掴んでいる仏像で、初めて見た様式だ。因みに、後ほどわかるが、滋賀にはこの様式が他にもあることを発見する。
 それは滋賀・若王寺「如来立像」で平安時代の一木!!これを「滋賀様式如来立像」と勝手に呼ぶことにした。(なにか、全国的にあるのかな??) 注目していた仏像は、滋賀・長命寺「広目天立像」、大阪・本山寺「観音菩薩立像@重文」、滋賀・荘厳寺「釈迦如来立像@重文」、大阪・長圓寺「十一面観音立像@重文」、京都・誓願寺「毘沙門天立像@重文」でなかなか行けない&行きづらい寺!!

↑十六羅漢@国宝、十二天像@重文

仏画にはあまり興味はないが聖衆来迎寺の「十六羅漢@国宝」「十二天像@重文」は惹きつけるものがあった。そして、最後に展示されている「六道絵@国宝」も素晴らしい。

京博では六道・地獄絵のコーナーで地獄絵が展示されていた。仏教では「六道輪廻」という考え方があり、すべての人は「天上界(如意輪観音)」、「人間界(准抵観音)」、「修羅界(十一面観音)」、「畜生界(馬頭観音)」、「餓鬼界(千手観音)」、「地獄界(聖観音)」の6つの世界で、生き死にを繰り返すという考え方で、生前の罪の重さに応じて、次はどの世界に産まれるのかが決まる。最も罪が重いものは地獄に落ちますが、それを救うのがお地蔵さんです!!六道を表した変化六観音を拝観するなら千本釈迦堂こと大報恩寺へ行くべし!!肥後定慶作、快慶作の仏像があり、変化六観音は大報恩寺のみです!!

▼セットで行くところ(旅行記)


▼仏像展

▽2017年 京都国立博物館 開館120周年記念特別展覧会『国宝』


▽2018年・大津歴史博物館「神仏のかたち ‐湖都大津の仏像と神像‐ 」に快慶・行快の仏像がやってきた!!

https://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/news/1807.html


▽2019年・大津市歴史博物館「大津南部の仏像展」

大津歴史博物館公式サイトhttps://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/news/1909.html

▽2020年・大津市歴史博物館の開館30周年記念企画展「聖衆来迎寺と盛安寺 ―明智光秀ゆかりの下阪本の社寺―」

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https://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/db/archives/tayori/tayori_120_2020.pdf



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