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ぞなもしカレー日誌#7 『南インド料理のミールスというおしゃれカレーを食べた』 〜エリックサウスマサラダイナーのマサラダイナーミールス〜

よく考えるとインドはでかい。日本よりでかい。
狭い日本ですら、うどんのお出汁が全然違う。そりゃ、インドも地域によってカレーは違うだろ。
そんな当たり前のことを去年くらいまで知りませんでした。

このなんちゃってカレー探求を始めるときに、ポパイのカレー特集を読んで、南インド料理の存在を知った。インドって南と北があるんだ……とコロンブスの卵を投げつけられた感じすらあった。顔が知識という名の生卵でべとべとじゃないか。

さて、南インド料理が他とどう違うんだと言われると、詳しくは知らない。所詮、カレーでしょ? 程度くらいに思っている。インド人にぶん殴られそうだ。
特徴としては、ミールスという、バナナの葉やでっかいプレートの上にカトリ(小皿)に入ったサンバールと呼ばれる野菜カレー、ラッサムという汁もの、その他おかずが盛られたある種の定食が有名らしい。細かいことはわからない。
ただひとつ言えることは、所詮カレーだということである。

でも、好きな食べものは南インド料理のミールスだと言えたら、菜食に興味のあるおしゃれ女子にも、一目置かれることは間違いない。それなら食べてみようと考えて何度か食べた。

今回は、渋谷のエリックサウスマサラダイナーという所に行った。
ここにした理由は、ゴリゴリのおしゃれを気取ったわけではなく、夜に行ってもカウンター席だと限定メニューでミールスが食べられるからである。ある種のおひとりさまメニューである。うれしいけど、少し寂しい。

とりあえず、チキンピックルというチキンの漬物とジンリッキーを頼んだ。カウンターの両サイドは女子二人組のお客さんである。この店は渋谷といえども、渋谷と原宿の間の落ち着いた雰囲気の立地にある。来ているお客さんも、ブリバリのおしゃれさんというよりは……インド風にカーストで言えば、頂点であるバラモンの3つくらい下のカーストの人たちが来ている。そういう意味では肩肘張らなくていいが、会話がやたらリアルなのが辛いかった。金と男と結婚と女友達がどうしたこうしたである。しょうもない話である。

そんなこんなで、しょうもない話が聞こえてくるせいで、インド料理屋というよりは鳥貴族に近い気分で待っていたら、ミールスが到着。

内訳は、チキンカレー、マトンカレー、ダルスープ、サンバール、ラッサムである。最初のふたつは自分で選べるカレーである。メニューにはなにか色々、書いていたが、所詮カレーだろと思って、チキンとマトンにしてみた。後ろのみっつが南インドの代表的な料理らしく、ミールスには大体入っている。それらに肉は入っておらず、そのあたりがおしゃれ女子というかオーガニックとか菜食女子の興味をそそるところなのだが、私は興味ないので、チキンとマトンの肉を選んだ。むしろバランスがいい。

で、食べてみた。めちゃうまい。やたらうまい。
ミールスは色々なカレーや汁物をご飯にまぜまぜして好きに食べるのが、通っぽいのだが、私は混ぜなかった。ひとつひとつがやたらうまかったから。南インド料理のいい所は、様々なスパイスや香草によって風味は豊かなのだが、基本塩辛いカレーであるところだと思っている。

私は子供の頃から、複雑な味が嫌いだった。酢豚とか意味がわからなかった。米に合わんやろ、と思っていた。
私は、米とおかずを7:3という虐殺的な比率で食べる米ジェノサイダーである。なので、そのおかずでどれほど米が食えるかというノリタケ指数(食わず嫌い王決定戦で必ず米を欲しがる木梨憲武にあやかって勝手に作った指数である)をかなり重視している。

それ故、バターチキン、あるいはグリーンカレーなどのココナッツテイストの料理はちょっと苦手である。食べてみるが毎回イマイチである。
南インド料理はその点、明快な味付けでノリタケ指数が高い。飯が滅ぼせるほどである。バスマティライスという、パラパラな米がどんどん滅んだ。しかし、大量のスパイスのせいか自分の体も滅んだ。なぜか食べるごとにどっと疲れが出てきた。ジョジョ第五部のレストランに行った億泰みたいな状態になった。スパイスってそんな効果があるの? と思いながら、全部平らげた。南インド最高。行ったことないけど。

ミールスだけならお値段1300円なので、安い割にはすごく満足度が高い。とても良いところだなあ、と思いながら、帰宅。
寝れない。スパイスのせいで寝れない。寝汗がすごい。インド人は毎日こんなカレーを食べて大丈夫なのか? インド映画に必ず歌と踊りが入っているのは何かを発散しなければいけないからなのか?

色々な部分で興味があるので、ちょっとインドに行ってみたい気持ちもあるが、私はインドに何かを見つけに行くような年齢ではないので、行っても仕方がない気がする。インドに何かを見つけに行った知り合いが、特に何もなかったっすと言っていたのも気がかりだ。その知り合いは、帰りの飛行機で両サイドが中国人だったせいで、インド感ゼロで帰ってきたと言っていた。やはり、両サイドは大事である。それに、私はウォシュレット無しじゃ生きられない体なので、インドは行きたくない。

だから、私は日本で南インド料理を食べる。そして、眠れぬ夜を過ごし、夜の果てまで旅をし、夜を使い果たすのだ。
無駄にポエティックな一文をつけてみたが、所詮、カレーの話である。

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