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アクアリウム【さとうささら】-制作後記- ③作曲編その2

アクアリウム
歌:さとうささら【CeVIO AI】
作詞・作編曲・mixing:yanaki Jun
写真:orika.

作曲方法の変化

前回の記事(②作曲編その1)で書いたように、リズムの繰り返しを上手に盛り込むことが良いメロディを作り出すコツの1つだと私は考えています。その点を意識するようになってから、作曲方法に若干の変化が生じました。私の作曲方法と言えば、馴染みのある鍵盤楽器に触れて考えるか、声に出して歌メロを考えるくらいのものでしたが、今は五線紙に書き込みながら想像する時間も増えました。その際、モチーフの原型となり得るリズムの音型を欄外や別紙に用意することもあります。音符を目で見て捉えた方が、全体のメロディの流れや詳細が把握しやすいと感じています。

メロディ解説

作詞編でも述べましたが、この楽曲はある漫画作品から得た感動を形にしようと制作しており、読後に感じた言葉では言い表せない感情をメロディとして紡いでいます。よくよく考えてみると言葉にならないものを音楽として形にし、その上で作詞を以て言葉の意味を改めて付与する。楽曲制作とは何とも不可思議なものですね。
それでは『アクアリウム』のメロディを見てみましょう。

『アクアリウム』のメロ譜。

ポイントとなる箇所を色付けしています。

赤色「タータのリズム / 付点8分音符+16分音符」
全体のメロディに掛かる楽曲の要と言えるかもしれません。転調が多いこの楽曲の中にあって、メロディを空中分解させずに繋ぎ止める役割を担っているものがあるとすれば、この部位ではないかと考えます。Aメロに登場した「タータタータ」のリズムを起点に、Bメロにも「タータ」のリズムが取り入れられています。サビは意図的に異なる景色に展開しているので影を潜めますが、それでもワンポイントの如く「やくそくは」で用いられています。

・緑色「タタタタタのリズム / 16分音符×5」
サビのアウフタクト(弱起)で用いた16分音符×5。サビのメロディの2回し目、締めの部位にそれぞれ異なる音程で登場するリズムです。

・黄色「タタのリズム / 16分音符×2」
サビのほぼ全ての小節の2拍・4拍の裏に入る16分音符×2。等間隔に配されたリズムでサビの印象を決定付ける要素だと考えます。拡大解釈して捉えるならば、サビ直前の「さよなら」と「なくすの」の16分音符×2は、先見せと言えないこともないでしょう。

・青色「リズムの反転」
繰り返しの話からは逸れるのですが、私はよく遊び感覚でモチーフの形を変形させることがあります。Aメロに登場する青色の部位は、まんま赤色のリズムを反転させたもの(16分音符+付点8分音符)です。他にも音型の長さを2倍にしてみたり、1~2小節に及ぶ長さのモチーフであれば中の音型を組み替えてみたり、アイデア次第で先のメロディを生み出す契機となります。

・紫色「3連符」
1コーラス中に唯一登場する3連符です。アレンジの面に於いても、サビ直前はフックとなるべく仕掛けに気を遣う箇所ではあるのですが、このような単純なリズムの工夫でも、強い印象付けができるのではないかと思います。

最後に

以上、自分なりのメロディ解説となります。もっともらしく語ってはいますが、挙げた要素の内、大半は感覚的に作られています。比率で言えば「意識:感覚=3:7」くらいでしょうか。しかしながら、リズムの繰り返しや各メロディに持たせる意味を考えることで、作曲時の迷いが以前と比べ格段に減りました。必ずしも私の作曲方法が他の方にとっても有用だとは言えませんが、何かしらプラクティカルな情報だと感じていただけたならば幸いです。次回は③編曲~ミキシング編を書きます。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


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