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「万葉集」私撰秀歌

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「万葉集」から、これはと思った歌を抜き出していきます。私の趣味で選んでいるので、世間の評価とは違うと思います。
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2016年5月の記事一覧

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・158

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・158

「山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行(ゆ)かめど道の知らなく

高市皇子(たけちのみこ)」

●整理:

山吹の
立ちよそひたる
山清水

汲みに行かめど
道の知らなく

●歌意:

 十市皇女(とおちのひめみこ)が急逝した時──。

 山吹がほとりに咲いている山の泉に、水を汲みに行こうとするが、どう行けばよいのか道が分からない。

 山吹の花にも似た、姉の十市皇女が急逝して、どうしたらよいのか分

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「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・142

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・142

「家(いへ)にあれば笥(け)に盛る飯(いひ)を草枕旅にしあれば椎(しひ)の葉に盛る

有馬皇子」

●整理:

家にあれば
笥に盛る飯を

(草枕)
旅にしあれば
椎の葉に盛る

●歌意:

 家にいれば銀器(食器)に盛る飯を、旅の間であるので椎の葉に盛る。

●感想:

 野を行く旅の様子を感じる歌。

 けの意味に関しては、最近の研究では変わっている可能性もあると思った。

・‥…‥・‥…‥・

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「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・133

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・133

「小竹(ささ)の葉はみ山(やま)もさやに乱れども吾は妹(いも)おもふ別れ来ぬれば

柿本人麿」

●整理:

小竹の葉は
御山もさやに
乱れども

吾は妹思ふ
別れ来ぬれば

●歌意:

 妻と離れて山中にある時──。

 笹の葉が、風に吹かれてざわめき乱れている。しかし、私の心は乱れることなく、別れてきた妻を一心に思っている。

●感想:

 サ音、ミ音のリズムがよく、実際に山の中で笹の葉が乱れ

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