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連載漫画の作り方8 体力と志1

まず志のこと

「漫画がこの世にないと本当に困る」
って人はどのくらいいるものでしょうか?ボクの勤務してる専門学校にはね、
「あなたがいなければ生まれなかった夢がある」(とかなんとか。あんまり正確に覚えていない)
という標語がエレベータの中に掲げてあります。会長が作った言葉だったとか。ボクはどれを見るたびに
「大丈夫だよ。あなたがいなくても誰かの夢が替わってくれるから」
と思います。そんなもんです、漫画家って。自虐的ではなく。
大きな書店の漫画コーナーに行ってみて下さい。恐ろしい数の新刊本が並んでいます。この中の一作家一作品がなくなって読者も書店が「困る」と言い出すのは多分数レーベルだけです。ほとんどの場合は「空いた棚に今日届いた新刊並べておこう」でおしまいです。
もし漫画全般がなくなったら…ゲームがそこを埋めるでしょう。ゲームもなかったら別の何かが肩代わりするでしょう。人は確かに娯楽を必要としていますが、「これしかだめ」っていうものは実際の所、ないと思います。何か肩代わりを探してくる。パンがなきゃケーキを食います。

この世の中に漫画がなかったら困るのは

しかし、漫画家はそうはいかない。漫画がなくなったからって翌日からゲーム作ることもできない。何かできるかっていったら多分なにもできない。
つまり
あなたがいなくてもこの世は特に困らない。
 けれど、漫画がなくなったらあなたは困る。

こういうことです。漫画家ってのは漫画を受け入れてくれる社会の中でしか生きられないんです。

だから

ボクが連載を持つ人に持って欲しい志はこれです。
あなたの漫画が社会のどこかにいる誰かのために、ほんの少しで良いからためになること

です。
ボクは二つのことからこのことを考えるようになりました。
一つ目は週刊少年マガジンで連載を始めた時のことです。
2年頑張って、なんとか週刊少年マガジンで連載を勝ち取ったボクでしたが、実際連載を始めて愕然としました。
連載が始まったらどうするか、というモチベーションを持っていなかったのです。ボクの志はマガジンの連載までで、それ以降がなかったのです。志は達成したら終わりです。しどろもどろになった連載はそんなに長く持ちませんでした。当たり前です。

もう一つ。これはまた別の週刊連載。朝から家で漫画を描いているのですが、昼過ぎにコンビニに昼ご飯を買いにブラブラ出かけてました。日中の暑い午後公園の木陰で休息する建築現場のオッチャンたちをよく見かけました。
「こういうオッチャンたちと比べるとボクはいい加減に生きてるのかな」
なんて思いながらサンダルでズラズラ歩いたりするわけです。
その時思ったのが
「この人たちがボクの漫画読んだら、読み終わったら『面白かったぁ~』と思えるモノを、せめて作ろう」
ということでした。
そのくらいの事をしないと、ダラダラ生きさせてもらってる申し訳が立たないなあ、と。


あなたが漫画を描く志はなんですか?
どんな大げさなことでもいいです。長い時間と努力がかかるモノほどいいです。すぐできちゃうモノではない方がいいです。
あなたの描く漫画は誰かを楽しませられますか?
誰かを楽しませようという志はありますか?


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