地図柳葉

仕事の流儀4 地理・建物・暮らし①

漫画の学校で教える地理や暮らしってなんだ?と思われるかも知れませんが、ファンタジー漫画描くときになにかと便利な知識なのです。どういうものかってぇと、例えば次のようなもの。

田島弥平旧宅

写真は群馬県にある田島弥平旧宅。世界遺産になったものです。
この建物、特徴があるけどわかりますか?

そう、屋根の上にある小さな屋根。目立ちますね。

では、これはなんのためについているか、ご存じですか?

これはね、蚕の繭の熱を放つためのものなんです。この建物の二階は蚕部屋になっているわけです。蚕は繭になると熱をだしますが、当の蚕自身が熱に弱いのです。たくさん繭があると自分たちの熱で自分たちが死んでしまうのです。だから、蚕を育てる蚕部屋がある建物は、熱気抜きがあってそれに雨よけの小さな屋根をつけています。群馬県…上州は絹織物が盛んで、世界遺産になったのも富岡製糸工場はじめ当時の製糸関連です。

では…どうして上州は絹織物が盛んなのか?蚕を育てるのが盛んなのか?

上州は地味が良くないのです。浅間山の火山灰が降り積もってて米がろくにとれなかった。そんな土地で元気に育つのが桑。桑は蚕のえさです。
米には向かなくても蚕を育てるには、いい条件の土地なのです。
(同じ理由で小麦も育てられました。こちらはウドンのネタ。水沢はじめ上州にウドンの名産地が多いのは、このためです。群馬はいまも麺類の盛んな土地で、パスタ屋がたくさんあります)

では…絹織物が盛んな地はどんな土地柄なるでしょう?

桑を育てたり蚕を育てたり、絹を織ったりする。これらは女性が担う仕事とされてきました。このサイクルは女の人の労働だけで成り立ってしまう。絹織物は高額で取引されるので、下手すると男が働かなくても暮らしていけます。当然一家の中での女の人の発言力は強い。
上州名物 かかぁ天下と空っ風
という戯れ言は、こう言う状況を表してます。

では、男はどう暮らしていたでしょうか?

ヤクザになったのです。もちろん全員ではないですけどね。うちに金があって働かなくていい男で、飲む打つ買うに走る男は多いのでしょう。かみさんの側から離縁状突きつけられたりしてヤクザが生まれちゃう。上州はヤクザの名産地でもあったのです。有名なのが国定忠治。赤城の山は上州の山であります。笹沢佐保『木枯らし紋次郎』も上州新田郡(こおり)三日月村出身の設定になってますね。

このように、地理・風土は建物を特徴付け、人の暮らしを特徴付けます。こういう知識を持っておくとファンタジーを作る時に、その土地に合わせた建物とか暮らしが想定しやすくなるわけです。
この講座の説明、もう少し続きます。

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