第33巻
いよいよ明和第一+英雄との対決が迫る千川+比呂。場所は夏の甲子園の準決勝。
ここから心理描写も情景描写も尋常ではない濃密さで展開されていく。クライマックスである。
第10話 人それぞれ
気がついただろうか。
本回、主人公・比呂は一度もセリフがないのだ。
にもかかわらず、比呂の心情がよく伝わってくる。
一体どうやったらこんな離れ業ができるのか?
実は、比呂のアクションのあとに必ず誰かが解説をいれているのである。
P172、173では前回(第9話)でのスローボールを投げた比呂の心情を、英雄と野田が解説している。ただし全てわかるようにしているのではなく、読者の解釈が入りやすいようにしている。
P176は比呂が懸命に打ち走り投げしてる、その姿を実況者が説明してる。朗らかに野球に打ち込む彼に似つかわしくない姿を描写することで、明和第一戦への集中の高さが伝わってくる。
P185 野田の軽口に比呂が腹を立てて速い球を投げ込んだことを、野田自身が解説している。
P188 ここまで比呂がしてる懸命のプレーがかなり無理のあること、それが限界に近づいてきているのを明和第一・稲川監督が解説している。
このように、セリフがないにも関わらず登場人物の心情が伝わるのがあだちさんの得意技の一つだ。他の登場人物の観察を使いながら伝えるので、ノイズが入ったり曖昧であったりするが、そこがまたリアリティを感じさせる。
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