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漫画教育を考えよう

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漫画家をやりながら、漫画の専門学校の講師をしています。 大学の准教授をしたり 海外の漫画学校に教えに行ったりしてます。 その中で教育というのを、真面目に考えよう、もっといい教育は…
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#漫画専門学校

岡田斗司夫から漫画の入門書を考える

岡田斗司夫という人がいる 岡田斗司夫はYOUTUBEなんかで動画をいっぱい流してる人だ。動画の内容はサブカルチャーの解説を中心に多岐にわたってる。 いろんな事を知ってるなあ、面白いなあと感心していたが、岡田斗司夫自身については、ボクはほとんど知らない。 ★初期ガイナックスにいた。けどアニメーターではない ★同時進行の不倫が騒動になった ★太っていたけど痩せたみたい。でもまた太ったみたい このくらいである。話しぶりが面白いなあと思って動画を見ていただけである。 それが突如「え

連載漫画の作り方12 発表作と漫画家人生1

作品の保存は常に、丁寧に 長いことやっていく間に浮き沈みは当然あります。思い返すのも嫌な作品もあります。それでも原稿の整理はいつもちゃんとしておくといいでしょう。 今ならデジタルの人が多いのでアナログよりずっと生理は楽ではないでしょうか。 ボクの『笑え、ゼッフィーロ』の原稿はデジタル保存していますが連載を開始した当初から ファイル名 西風001 原稿ファイル 西風入稿001-0102 というふうにナンバリングして保存していました。「連載一回目のファイルで、連載一回目の入稿原

連載漫画の作り方9 体力と志2

志の2回目 前回、とってももっともらしい事を書きました。 しかし、ボクの本音ってのは まぁなるようになりますって です。顔を下げて生きることもないですが、鼻息を荒くしても特にそれでどうにかなるとは思えません。 例えば「次までに20ページのネームを描いてきて」って言われて 「やる気が溢れたので60ページのネーム作りました!」 って参上しても「いや、あの、それ、違……」というオチは見えてます。 適宜頑張る・十分以上頑張らない ってのをボクは志として大切にしています。 ここまでボ

連載漫画の作り方4 人間関係1

漫画の仕事の人間関係 仕事として商業漫画をしていてできあがる人間関係は主に二つ。 ・編集者 ・アシスタント 二つ目に関しては人によって、漫画のタイプによってなかったりします。四コマ漫画の人なんかは大体一人でやってると思う。本数が多いと、ベタ塗ったりデータ送信したり(デジタルだとして)くらいを家族が手伝うことはあるでしょうけど。漫画家ってのはだいたい閉鎖された系での仕事で、ボクなんかは「人に会わない」「やたらに出かけない」というのを大変に気に入っています。 担当編集者との人

連載漫画の作り方3 技術のこと3

納期のことさらにさらに まず、ボクが週刊少年マガジンでやっていたときの週のスケデュールをお話しします。 木曜 午後~夜 原稿を渡す 金曜午後   ネーム打ち合わせ→5,6時間して→ 夜ネームアップ 土曜午後   ネームがアップしてない時は再び打ち合わせからネームアッ       プ(アップしてる時は休養) 日曜     下描き 月曜     下描き、ペン入れ 火曜     アシスタント来る ペン入れ+原稿仕上げ  水曜     ペン入れ+原稿仕上げ    注目して欲しい

連載漫画の作り方2 技術のこと2

納期のことさらに 漫画の学校の先生をしてると「でも、世の中にはこういう例もある」と言う学生によく会います。ボクは言います。 でも、それはあなたではないから。 世の中には「売れてるからまかり通る」ということは、たくさんあります。 別に「大人は汚い!」なんて言いません。とりあえず世の中はそういうものなんです。 昔グルメ漫画が売れていた頃にその波に乗っかって売れたT先生という漫画家さんがいました。で、この人がとにかく遅い。担当の編集者が原稿をとるために仕事場に詰めていたんですが、

コマ割り、ネーム技法書成立させ方について

前稿で「コマ割りやネームの技法書は成立させにくい」と書きました。 ボクも10年間くらいウダウダ考え続けてきましたし、実際に何度も制作に取りかかってみたのですが、どうもうまくいかない。 この間に大学に勤務していて、日本漫画学会の総会に出席したり分科会に参加するようになりました。そこで、すごく多くの人が視覚芸術としての漫画を研究していると言うことを知ったのです。 漫画界は当然のようにそういうこと知らないんですよねえ。「学者に漫画がわかるか」みたいな態度とる人もいます。勿体ない

仕事の流儀8 漫画の教授法3

アダプテーション 前回内容をさらにスキルアップさせた講義。アダプテーションADAPTAITIONは文学で使う場合翻案などと訳される。例えば『フランケンシュタン』がアダプテーションされるとジョージ・バーナード・ショー『ピグマリオン』になる。それが舞台・映画向けにアダプテーションされると『マイ・フェア・レディ』になる。それが現代向けにアダプテーションされると『プリティ・ウーマン』になっていく。          ボクはこの定義通りではない講座をやっている。フランス漫画バンドデシネ

仕事の流儀6 漫画の教授法1

サブテキスト しばらくボク自身の漫画教授法について話をしていこうと思います。  いくつかの理由があります。一つはオリジナリティが高い事。自分で言うと阿呆みたいですが、何処へ行っても同じような授業をしている人がいない。だったら公開して、このページをどこかの漫画の講師がみたら、なんかの参考になるに違いない。そう思ったからです。どのくらいの講師が登録しているのかわからないが、まぁボクも含め三人くらいはいる様子。 もう一つは、ボク自身が学生に「新しいものを手に入れたかったら、今持って

仕事の流儀5 地理・建物・暮らし②

人の作ったものは、人にフィットするようになっています。 上手くフィットできなかった失敗作もたくさんありますが、フィットする狙いで作られています。 建物も同じ。その土地の気候・風土にフィットし、使用する人の目的にフィットするように作られています。 キリスト教のカソリックに大聖堂と言われる建物があります。司教がいる聖堂です。司教というのは、カソリックの教区のとりまとめ役で、広い区域の監督役です。その下に司祭などがあり、そっちのは聖堂。 ヨーロッパにいくと、聖堂でもかなりデカイの

仕事の流儀4 地理・建物・暮らし①

漫画の学校で教える地理や暮らしってなんだ?と思われるかも知れませんが、ファンタジー漫画描くときになにかと便利な知識なのです。どういうものかってぇと、例えば次のようなもの。 写真は群馬県にある田島弥平旧宅。世界遺産になったものです。 この建物、特徴があるけどわかりますか? そう、屋根の上にある小さな屋根。目立ちますね。 では、これはなんのためについているか、ご存じですか? これはね、蚕の繭の熱を放つためのものなんです。この建物の二階は蚕部屋になっているわけです。蚕は繭に

仕事の流儀3 Attack Y

これもボクの講座の一つ。 同じ専門学校で教鞭を執っている久世みずきさんにこの講座の内容を話したら 「よくできますねえ」 と褒められました。呆れられたのかも知れないけど。まぁ限りなく自虐的な講座。 元ネタは東大大学院教授の吉見俊哉さんの著書『「文系学部廃止」の衝撃』。この本はタイトルはアレだけど、学問の考え方を分かりやすく伝えてくれるいい本だと思います。その中に、吉見さんがどうやって学生の論文を鍛えていくための見識とかやり方について触れている項があった。そして、自分の論文を学

仕事の流儀2 マスターピース講読

マスターピースとは傑作という意味です。先達の描いた傑作を丁寧に読み込もうと、企画した講座。2年生を対象としました(2学年制の専門学校なので卒業学年に当たります)。2019年度導入。まだ経験の浅い……というか、一年しかやっていない講座です。何年も前から考えては躊躇いして、ようやく踏み切りました。ためらった理由は、年間20コマのうち10コマ使うので 「果たしてそれに見合うだけの深みを持たせられるかどうか」 迷ったのです。躊躇って迷って結局踏み切ったのは、この講座に似た内容を自分自

仕事の流儀1 自分的始めの話(長いよ)

専門学校や大学で展開してきたボクの講義、講座について話し行きたいと思います。 漫画の「先生」として10年やってきました(漫画家ではなく)。先生をやれるのは長くてもあと10年くらいでしょう。それより先は、若い才能を指導するには多分感覚が追いつかない。巴里夫先生が70代くらいまで少女マンガの新人育成に関わっておられたそうですが、巴先生は長く編集にも関わっておられた。だからできたのでは、と思います。 もともと少年漫画でデヴューしたのが少年漫画家としては高齢でした。講談社がいまのビル