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岡田斗司夫から漫画の入門書を考える

岡田斗司夫という人がいる

岡田斗司夫はYOUTUBEなんかで動画をいっぱい流してる人だ。動画の内容はサブカルチャーの解説を中心に多岐にわたってる。
いろんな事を知ってるなあ、面白いなあと感心していたが、岡田斗司夫自身については、ボクはほとんど知らない。
★初期ガイナックスにいた。けどアニメーターではない
★同時進行の不倫が騒動になった
★太っていたけど痩せたみたい。でもまた太ったみたい
このくらいである。話しぶりが面白いなあと思って動画を見ていただけである。
それが突如「え?」と思う話に出会って、一挙に不審を感じ始めた。「この人、まともなことを言っているのかね?」と。それは切り抜き動画だがこの回の話。荒木飛呂彦さんの『荒木飛呂彦の漫画術』 (2015)をとりあげて、「これは面白い」という場面がある。

ボクもこの本は読んでいるので面白いのは認めるけど、気に障ったのはこのあとの言葉だ。こういう漫画の入門書というのは
中途半端にしか成功してないヤツが書くか、大成功した人が老後に書く

と言うのだ。「えええええ?」と思ったよ。

岡田斗司夫は何を知ってるのか


岡田についてボクが感心するのは、もちろんボクが知らないことについて滔々と述べてくれることである。
しかし、ボクが知ってる話になった途端「この人は、本当はわかって話してないのではないか?」という疑念が止められなくなった。もう一回書きます。

こういう漫画の入門書というのは
中途半端にしか成功してないヤツが書くか、大成功した人が老後に書く

だそうだ。
そんな阿呆な話があるかよ!
ボクが
どこに怒ったかっていうと
★大家が脂がのっているとき、売り出し中には書かない
★中身はたいしたことがないモノが多い
というニュアンスが話しぶりから伝わってきたことだ。

大家は書いたか、いつ書いたか


ボクのしってるだけのお話をしよう。
まず手塚治虫先生。
『漫画大学』(1950)というのがある。

これは漫画で漫画の描き方や考え方を説明するという野心作でそれが今から70年以上前に描かれている。当時の手塚先生はデビュー5年目、バリバリ売り出してた頃だ。もう一つ手塚先生。『マンガの描き方』(1977)。


こちらは文章を交えながら作られている。
続いては石ノ森章太郎先生。『マンガ家入門』(1965)。

上の画像は石ノ森名義だが出されたときは石森名義。『サイボーグ009』などが馬鹿売れしてた頃。この本で「漫画家になるんだ」と決意した人は多いとか。
ちょっとひねったところで鈴木光明『少女まんが入門』(1979)。


鈴木さんは少女漫画雑誌の編集者だった人。この本には『ガラスの仮面』一回目が掲載されていて黒電話がジリリリと鳴る場面について解説されている。のちに少女漫画家になるひとたちのバイブルみたいな本だった。

『鳥山明のヘタッピマンガ研究所』(1982)というのもある。鳥山明さんとさくまあきらさんが組んだ漫画入門書。



タッグで言うとこういうのもあった。『サルでも描けるまんが教室』(1989)というのもあった。相原コージ、竹熊健太郎両氏のタッグによる漫画を使った漫画研究書。

時代下ると『藤子・F・不二雄のまんが技法』(2000)

F先生自身が海外で撮影した写真や少年漫画とおとな漫画の描写の違いについて載っていて面白い。

大人漫画からは山本おさむさんの『マンガの創り方』(2008)。

驚く程緻密に漫画の作り方が取り上げられている。高橋留美子さんの作品が取り上げられているのがすごい。

もっとあるはずだけど、2015年までに出てて、ボクが持っているだけでこれだけあるのだ。岡田はこの書き手を「大家ではない。大家であっても老後だ」と、どうしていうのだろう?

中身はたいしたことがないか


もちろん名前の知れてない書き手の本もたくさんある。ボクが子どもの頃に手に入れた本で西上ハルオ『マンガのかき方』というものがある。多分1967年くらいの本じゃないだろうかな?

ボクもこれ以外で名前を拝見したことがないので、そんなに知られている漫画家さんではないと思う。しかし中身は誠実で充実している。映画的な演出の仕方やストーリーの起伏の作り方にも触れているし、なによりもマンガを概説的にみて美術史上でどう考えれば良いか示唆してるのがすごい。
これらの本は書き手の名前やポジションがどうであれ「後進のために」という気持ちを込められて作られたモノがほとんどだ。出してもそんなに儲からない本だもの、作り手の情熱や誠実さがないと上梓されない。

そういう事を考えて岡田は発言したのだろうか。
それともその場の勢いで言ったのだろうか?

以降この人の言うことは耳を傾けるのは危ないな、とボクは思った。

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