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名もなき毒(著者:宮部みゆき)

著作者名:宮部みゆき 発行所:株式会社文藝春秋 2011年12月10日発行

この作品は、2種類の毒について語っている。ひとつは、青酸カリのような毒物。もうひとつは、毒を持った人。

首都圏で連続無差別毒殺事件が発生する。四件目の被害者は、古屋明俊(ふるやあきとし)67歳。コンビニで買った四角い紙パックに入ったウーロン茶を飲んで亡くなった。ウーロン茶に混入されていたのは、青酸性の毒物だった。

杉村三郎36歳は、今多コンツェルン広報室に勤務している。彼は部下のアルバイト原田(げんだ)いずみ26歳に手を焼いている。原田いずみは、採用されて間もないが、大変なトラブルメーカーだ。嘘はつくし、経歴詐称し、文句ばかり言う。

原田は、編集長と口論沙汰を起こした。それから丸一週間が経ったが、原田は出勤しないうえ、何の連絡もない。そこで、編集長が電話で「アルバイト契約の解除」を伝えると、一時間もしないうちに職場に現れた。ひどく興奮しており、まともな話などできる状態ではない。編集長は、台座がついたセロハンテープを投げつけられた。とっさによけたので、大事には至らなかった。

次の週の木曜日、杉村三郎は、義父の今多コンツェルン会長今多嘉親(よしちか)80歳から呼び出される。原田いずみが、会長あてに広報室の社員たちからいじめなどを受けたと嘘八百の手紙を書いたのだった。そして、杉村は会長から「原田いずみとの連絡窓口」となるよう指示される。

この二つの毒は、絡み合い、思わぬ決着を見る。人にある毒は、こんなにも根深いものなのかと、考えさせられます。吉川英治文学賞受賞作です。味わって下さい。


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