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『移民 棄民 遺民』

 読書の楽しみはいろいろあるけれど、中でも様々な「奇特な人生」を追体験できることは格別のものがあります。
 本書で紹介されているのは「国と国の境界線に立つ人々」。いわゆる現代の国民国家の概念に照らすと、隙間のようなところに位置する人々です。例えば、日本に暮らすベトナム難民の二世たち、政治的迫害を受けて祖国を離れ日本で暮らすウイグル人と政治利用目的で彼らに接近する右派の日本人、国民党幹部を先祖に持つ故に中国の表社会でまともな出世をできず、夜の風俗営業でビジネスの才覚を発揮する中国の老人…などなど。
 こんな人々のリアルに、丁寧な取材を通じて迫っていく安田峰俊さんは、実に気骨のあるジャーナリストだと思います。

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