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『うちの父が運転をやめません』

 書店で何となく題名が目に留まり、題名だけで選んでみた小説です。
 私は車と車の運転が何より好きで、元気でいる限り死ぬ前の日まで運転し続けたいと思っていますが、現実はそうはいかないんだろうな。そんなわけで、果たして何歳まで運転を楽しめるんだろうか?というのはずっと関心事です。

 東京で暮らし、共働きの妻と高校に通う一人息子を持つ50歳代のオジサンがこの小説の主人公です。過疎化が進み、自家用車以外の交通手段がほとんど無い地方に年老いた両親がいて、テレビで痛ましい事故のニュースを見るたびに心配になり、それとなく免許返上を勧めるのですが、言えば言うほど意固地になる父親に手を焼きます。

 東京でのサラリーマン生活もハリがなく、経済的に決して余裕はない上に、子供の進路をめぐって夫婦の価値観の違いが露呈するなど、うまくいかないこと続き。

 そんな中、会社の長期勤続表彰制度で休暇がとれ、半月ほど実家に帰ったあたりから、運命が動き始める、というお話です。この先は読んでのお楽しみということで。

 衰退する日本の風景を描きながら、自由について、プライドについて、人と人とのコミュニケーションについて、生き甲斐について、さまざま考えさせてくれる優しさ溢れる物語でした。

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