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読まれなかった手紙の行方

メモ帳をパラパラとめくっていたら、3年前に息子宛に書いた手紙が出てきた。


息子は高校卒業後、専門学校に進学し一人暮らしを始めたが、5月末くらいから学校に行けなくなり、やがて完全に音信不通になり、次の春まで“ひきこもり”になっていた。


※それまでのあれやこれやは以下に


手紙は、「会うとつらくなるから来ないで」と息子に言われ、連絡を取ることに躊躇し始めた頃に書いたものだ。

「手紙なんか送って、またつらくさせてしまったらどうしよう?」と悩みながらも勇気を出して送ったのに、結局、開封されずじまいだった手紙。

2年前、彼を救出した際に、アパートから持ち帰ってとっておいていたものが、今日ひょっこり出てきたのだ。


手紙には、
「『好きなことだけしていたい』と言った君の意思を尊重したい」
「周りに流されず自分の意思を貫こうとする君を尊敬する」
と、書いていた。


「自分自身、努力が必要と頑張ってきたけど、どうも辛い。これからの世の中は好きなことをやっていく時代になる」
みたいなことも書いていた。


ひきこもりライフから3年と少しが経って、彼は自分の好きなことをやって生計を立てつつある。そして何よりやりがいを持って取り組んでいる。


「自分はやりたいことがない」と言っていたけれど、いわゆる世間的な職業の中にやりたいことがないだけだったのかもしれないし、好きなことに集中し続けたら、少しずつ道が開けてきた感じがする。


ちょうど昨日の食事時、彼の高すぎる思考性(何事も計算高くジャッジする)について話題になり、「あらゆることを効率よく、無駄なく割り切って考える割りに、自分の人生そのものはロスだらけだよね〜」と笑っていたら、


「ほんと、ロスだらけ」
「人生は何があるかわからない!」
「一見、無駄なことこそが人生!」
と、大きな声で言い放って笑っていた。



「君の意思を尊重する」

読まれなかった手紙は、一見、役立たずのようだけど、こうして振り返ってみると、私の意思を貫くための決意表明として役目を果たしたのかもしれないな。



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