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【100分de名著】 好きの心理学

NHK Eテレ「100分de名著」が好きだ。

この番組を意識的に見るようになったのは、2016年2月の「アドラー:人生の意味の心理学」からだと思う。

ちょうど長男が中3。受験前の2月後半。毎日学校から帰ってきては、横になって死人のようにDSでゲームをしている。高校受験を数週間後にひかえているのに、勉強しやしない。本当にまったく受験勉強をしないのだ。

小さい頃から「勉強しろ」と口うるさくいったつもりはないけれど、「さすがにこのままでいいのか?」と、突如わたしが不安になり、DSを没収したところ、

帰宅

即、入浴

布団をかぶって
寝る

そして
「今の俺からゲームをとったら生きてる意味がない」
と、おっしゃった。

衝撃だった。利発で視点が面白い彼と話すことが日々の楽しみであった私にとっては、人生の灯が消えたよう。しかも食べるのが大好きな彼が食事もとらず、朝まで起きてこないという…。実に完成度の高い自己表現(もしくはストライキ)!

こんな毎日は辛すぎる。DSを奪ったのはよくなかった、でもどう返そう、いつ返そうと悩んでいた時、ちょうど番組で紹介していたのが、アドラーの「人生の意味の心理学」だった。(『嫌われる勇気』が大ヒットしていた頃でもある)


アドラーは「他者から承認を求めることを否定せよ」と説く。他者の期待を満たすために生きてしまったら、本当の自分を捨てて他者の人生を生きることになるからだ。「承認欲求」から解放される要はアドラーが提唱する「課題の分離」。「これは誰の課題か?」という視点で、自分と他者の課題を線引きし、他者の課題に踏みこまない、自分の課題に踏みこませないことを徹底させる。それができたとき、対人関係は驚くほどシンプルになり、無駄な競争から解放され、各人が対等な関係を築けるという。


受験は誰の課題か?
長男の課題。

ではなぜ、わたしは勉強させようとするのか?
受験を失敗した子の親になりたくないから。いい学校に合格した子の立派な親と認められたいから。(他者からの承認を求めてる)


翌日、「悪かった」と言ってDSを息子に返した。

その後、彼はスタンスを貫き、家では受験勉強らしきものをしないまま高校に合格した。わたしの不安や心配など、ご無用だったのだ。


あれから4年、いまも彼は「嫌われる勇気」を貫いている。自分の課題に踏み込みそうになる私を徹底排除して、踏み込ませないようにしている。その気丈さは凄まじいなと思うし、わたしのうっかり踏み込み癖ったら、ホント恐ろしいなと思う(母親の依存症を荒療治してくれているのかも)。

ここまで「嫌われる勇気」を発動できるのは、もしかして、自己肯定感が高いからなのかもしれない。

☝︎ 振り返ったら「あ、このひと大丈夫!」って思えた。


「100分de名著」が案内する作品は、心理学や哲学的なものだけに限らない。例えば「ハイジ」など、子供の頃に読んだような物語もあり、その物語の奥には、どんな時代にも通じる本質的なものがある。

自分自身を見つめて対話する、とっておきの25分間だ。



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