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損保社員の示談交渉

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

損害保険会社の損害サービス部門における総合職は、苦情の引き取りをする必要があり、業務態勢は以下のように階層化しています。

①電話対応:一般職 → ②面談対応:特定社員 → ③苦情対応:総合職

最近では、「活躍推進・全員総合職!」の名のもとに、一部の一般職でも面談をしているようです。(全員総合職!の話は以下をご参照ください。)


そして、私は先輩社員から損害サービス部門における総合職の心構えを教えられていました。

先輩社員「やなぎ、我ら総合職は課を背負って立つ人間なのだ。苦情でヒヨるのではなく、勇ましく戦う姿を示すのだ!」
ぼく「はい・・・、(なんだそれ勇者かよ)」

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恐怖の被害者面談@ジョイフル

前回記事のとおり、田んぼの示談交渉で難航し、被害者と面談をすることになりました。「お金を払う・払わない」の利害対立がある人物との面談です。人生を通じて、こんな経験は一度もありません。ビビりまくりの私には無理でした。

ぼく「パイセン!小生、被害者面談の経験がありません。同行願いたく存じます!」
パイセン「しゃーねーな、分かった」
ぼく「ありがとうございます!(まじ感謝ぁ)」

面談場所は、被害者からジョイフルというファミレスが指定されました。そのファミレスに向かったところ、既に被害者(2名)が居ましたので着席します。とりあえず何か注文をしないといけないので、ドリンクバーを注文し、これからバトルを開始する4人で仲良くドリンクバーに向かいます。この時の妙な空気感は、今でも鮮明に覚えています(笑

ドリンクバー

ドリンクバーから席に戻って仲直り、、、とはいきません。被害者は色々と主張をします。

被害者「田んぼをめちゃくちゃにされて、本当に大変だ。どうしてくれるんだ!!」

私は、相手から見える上半身は何とか平静を保っていましたが、机の下の手は震えており、会話をすることができません。

手の震え


緊張と困惑で私が戦闘不能になっているので、先輩社員が会話を始めます。

先輩社員「この度は大変でございました。田畑の状況はいかがですか」
被害者「田植えに向けて準備していたのに、それが全部台無しだ!」
先輩社員「それは大変でございました、毎年、入念に準備されているのですか?」

ここで、私は手が震えながらも「なぜ示談の話をしないのだろう。いつから田植えの準備してるとか、ぶっちゃけ賠償金に何か関係あるの?」と思っていました。しかし、このような会話を繰り返しているうちに、相手のトーンが徐々に弱まってきます。

いきなりお金の話をしても、上手くいかないことは分かっていました。東京海上の損害サービス部門では「相手に寄り添う気持ちを大切に」等の表現をしていましたが、私は「そんなもん寄り添えるか!綺麗ゴトばっかり言う会社やな~」と思っていました。

しかし、ここで感じたのは「本気で寄り添わなくても良いが、相手の感情を聞き出すこと、そして聞き出した感情を口に出してリピートすることで、何となく気持ちが分るような気もするし、少しづつ相手との関係性も良くなる」ということでした。

結局、その場で私は一言も話すことができず、先輩社員が全てをまとめてくれました。概ね方向性はついたので、再度賠償金を連絡することになりました。

ぼく「ありがとうございました、今後は一人でできるように頑張ります」


見えないこと、知らないことに対する恐怖

その後、被害者と電話でやり取りをしましたが、相手の顔を知っていると、なぜか恐怖心が薄らぎます。相手も、顔を合わせた人間に対しては、口調が緩やかになっていました。

私は、頑なに面談を避けていたのですが、面談の効果としては、①声だけでは分からない相手の感情の揺れを察することができる、②対面だと電話のときよりトーンダウンする、③その後の電話もトーンダウンする等の発見がありました。

人は、見えないこと知らないことに対して、必要以上に恐怖心を抱く生き物だと思います。それは、被害者も例外ではなく、会ったこともない保険会社から「払わない」との回答を突き付けられ、多少なりとも感情の根底には不安や恐怖感があるのではないかと考えるようになりました。

面談の意義や効果が腑に落ちたので、この日以降は必要に応じて面談をする方が早期解決に繋がるという考えに変わりました。とはいえ、面談に時間を割きすぎると仕事が回らないので、事案を見極めながら面談をした方が早いと思えば、臆せずに突撃できるようになりました。

面談きたよ


保険金不払問題の幕開け

このように徐々に度胸がつき始めたある日の朝、出社すると総合職が新聞を広げて集まっています。

課長「これから大変なことになるぞ・・・」

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(つづく)

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