心停止時指示(DNAR)について考えてみる① 医療従事者・学生編
これから医療に携わる学生さんとかは、このことを少しでも心に留めておいてもらえると、これからの医療のありかたも少しずつ、あるべき姿へと変わっていくのかな、と思っていますので、片隅に置いておいてもらえると幸いです。
もちろんこのことを真剣に考えるべきは学生さんだけではないんですけどね。
もうひとつもちろん。医療従事者だけでなく、治療を受ける患者・家族さんも、このことをちゃんと理解することが理想だと思っています。
なんだか長くなりそうだったので2回に分けてこれに関してのお話をやってみることにしました。
第1回では、タイトルにも入れている、DNARの本来の意味と、現場でのDNARの意味の違いについて話そうかなと思います。
まずは定義というか、そういうものから説明してみましょうか。
医療用語にはDNARという言葉があります。
Do Not Attempt Resuscitationの略でDNARとなっています。
「成功しない蘇生処置をあえて試みるな」という意味合いです。
医療現場では割と日常的に使われている言葉ではありますが、その医療現場での意味合い(誤用されていることが多い)と、これにまつわることを少し考えてみようと思います。
DNARを簡単に言うと、患者さんから担当する医師に対し、心停止した際には蘇生処置を行わないでください。ということを事前に伝えておく意思表示みたいなものです。
DNARは、「指示は心停止時のみ有効であり、その他の治療内容に影響を与えてはいけないこと」と定義されています。
ここで、病院での発言をひとつ紹介してみましょうか。
看護師A「この患者さんはDNARなのでもう何もしないことになっています。」
看護師B「この前、Aさんの呼吸状態が悪くなったとき、DNARとされていたので、今以上の治療は行わず経過を観察することとなりました。」
これらの会話は意外とよくされていると思います。
でも、ここに違和感を感じてほしいな。と思うのです。
あくまで「心停止時の指示」なので、何もしないこともないし、呼吸状態が悪くなったときに今以上の治療をしないこともない!ってのが本来あるべき姿なんじゃないかと思うわけです。
治療の差し控えを行うことは、DNARとはまた別の考え方として、日本では”終末期医療”と呼ばれているものがあります。
これは末期がん患者など、残念ながら治療をしても回復の見込みが見られないとされるときの、最期の時をいかにして過ごすか、患者・家族・医療従事者が密に話し合って、じゃあこれ以上の身体の負荷になる治療は行わず、痛みを取ることを最優先にしましょう。とか、そういうやつですよね。
残念ながら、”DNAR”と”終末期医療”は混同して考えられがちなのですね。
DNARは治療の差し控えを含むものではないということです。
ここを正しく考えられる医療従事者がより多くなればいいなと思っています。
今回の話題になっていることの自分が参考にしている日本集中治療医学会のページを載せておきます。
Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告
②に続く。
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