【第1章インド猫と出会う】ヤンマールとミャンマー、追い詰められる
兄妹に起きた犬襲撃事件
5月の出会いから、ヤンマールとミャンマーはバルコニーを中心に平和に暮らしていました。ときどき、ヤンマールがどこかにでかけ二日間ほど戻ってこないときがあり、ミャンマーだけがいることもありましたが、毎回朝になると戻っていました。その度に、ほっとしたものです。
そんな二匹も私も、びっくりする出来事がありました。
2014年6月9日夜11時ごろ、自宅前の木に二匹の野犬がいるのに気づきました。キャンパス内でよく見かける黒と黒茶の犬です。その時間帯に、木の下で犬を見かけることははじめてでした。
家は一階にあり、バルコニーにたまに猫が来る。これはメス猫のヤミニー。バルコニーの向こうに木が見えている。ヤミニーはたくさんの子がいます。
二匹とも木の上を見上げて待機しています。家のバルコニーに仔猫たちがいないことからも、直感的に、猫が上にいるのだろうなと思いました。もうかなり遅い時間ですが、懐中電灯を持って外に出てみました。
ライトで照らすと二匹の犬たちは、50mほど離れました。
そのまま木の上を照らすと、案の定、ヤンマールとミャンマーが幹と枝の間にへばり付いていました。必死の形相で、私がライトを当てるとヤンマールは「シャーー」と精一杯威嚇しました。一方、ミャンマーは「キュー」という感じで困り顔。
犬たちをもう一度ライトで牽制したところ、100mほど離れてたところまで後退していきました。しかし、やはりこちらを見つめており、仔猫に執着している様子。
仔猫たちは、降りてくる様子がないので、しばらくバルコニーから様子を見守ることにしました。
バルコニーに戻ると、ものすごい勢いでヤンマールが木から滑り降りてバルコニーに入ってきて、私の姿を見て仰天して飛び上がりました。私もその飛び上がりぶりを見てびっくり。思わず、空から猫が降ってきたかと思ったほどです。
一方で、ミャンマーは、まだ枝にへばりついているようでした。
もう一度様子を見に外に出ると、ミャンマーがいます。どうしたものかと思っていたら、ヤンマールがまた戻ってきて木の上に登りました。なんというか好奇心とリスクを楽しんでいるのでしょうか。再び私に向かってシャーシャー威嚇しています。
仔猫を捕獲しようも2mほどの高さで届かないため、少し近づいてきていた犬たちを再度牽制した後、引き上げてバルコニーで待つことにしました。
一時間ほどすると、二匹とも無事戻ってきました。やれやれと安心して寝ることにしました。
時間は、すでに午前1時を過ぎていました。犬は仔猫を襲ったりするものだろうかと思いましたが、食料の乏しい厳しい環境であれば、それもありうるのでしょう。後に、学生によれば、犬は猫を襲うのを見たことがあるとのこと。
ミャンマーはどこ?
朝起きてみると、バルコニーにヤンマールだけがいました。私を見ると、網戸を勢いよく登り、何かを訴えかけるように鳴き続けたのです。ミャンマーはどうしたのだろう。ヤンマールはともかく、ミャンマーがいないは珍しい事でした。
それでも、一日や二日は、どこか他のところへ行っていることもあるだろうと思っていましたが、犬に追いつめられたこの夜が、最後にミャンマーを見た日となってしまいました。
私なりに、推理したのは、二匹がバルコニーに戻った後、再び外に出たのではないかということです。そこで、いつもヤンマールについて移動するミャンマーは、少し判断が遅くなり捕まってしまったのかもしれません。
日本であれば、どこかの家でかわいがられているのだろうと考えることもできますが、インドで猫を飼うという習慣がほとんどありません。
ミャンマーは、幼くして生命を落としてしまったのでしょう。気の毒です。
ただ、直接見たわけではないのでなんともいえません。仮に犬だったとしても、犬を責めることなどできないでしょう。それだけ生存競争が厳しいということは来たばかりの私にもわかりました。
犬にしても、春に5〜6匹生まれた子犬が、夏までに一匹も生き残ることができなかったことを伝え聞いています。学生たちがミルクや食べ物をあげたとしても、長期休暇中の帰省中を生き延びることが難しいのです。
ヤンマール、家に籠もる
さて、ヤンマールは、あまりに激しく鳴き続けるので、家に入れることにしました。しかし、いずれ帰国する身として家猫として飼うつもりはそのときはなく、野生で生きていくにしても少しはサポートできればと思っていたのでした。
ヤンマールは、この出来事以降、半分外、半分家の生活から徐々に家の中にいついていくことになるのでした。
妹のミャンマーの帰りを寂しく待つヤンマール
左:ミャンマー、右:ヤンマール。在りし日のミャンマー
ミャンマーの思い出。まずヤンマールがやって、数日後にミャンマーができるようになる
ミャンマーの思い出。どんどん入ってくるヤンマールに対して、カーテンの陰からゆっくり入ってくるミャンマー
[2014年6月に記す]
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