実家が全焼した話⑥

 遺体の引き取りと日程などの連絡が母から来る。喪主は弟だし、自分たちで相談してやる感じかと思ったら、そうでもなかった。
 葬儀の内容や費用のこととかは詳細な連絡はなかった。唯一、花を出すかどうか妹から連絡が来たくらい。
 通夜、葬儀は参加するだけになりそう。


 帰省する前日、娘の体調があまり良くなくて咳が出ていた。熱が出たら、娘と旦那は留守番かなと話していた。

 翌朝、娘は咳はしているものの熱はなかった。
 が、私が体調不良になっていた。寒気と倦怠感がある。5年以上、コロナワクチン以外では熱を出してないのに、何故よりによって今日なのか。


 体調の悪い中、半日かけての帰省。母の家につくころには完全に熱が出ていた。
 薬を飲んで少し休ませてもらったおかげで、通夜の頃には、熱が下がっていた。平熱よりかなり低い、下がりすぎている。極端か。

 
 普段ピンクや赤のかわいい服しか着たがらない娘を全員でなだめすかし、何とか着替えをする。褒められまくって満更でもない様子で、黒いワンピースでくるくる回っている娘。チョロかわいい。
 斎場に無事出発できた。


 斎場にある父の棺には布がかけられており、中が見れる状態ではなかった。見たらショックが強いだろうけど、最後の最後に顔が見れないのもやはり物悲しい。


 遺影は、私たちの結婚式の集合写真を使っていた。ばあちゃん2人に次いで、これで3人目の使用。正面向きでいい顔で写っている写真がなかなかないのはわかるけど、正直、私の中で呪いの写真みたいな扱いになりつつある。
(ちなみにこの後、義父の葬儀でも使われた)


 通夜は恙無くとり行われた。
 長時間おとなしく座っているのは難しい娘も、比較的おとなしく過ごしてくれた。お焼香もした。
 近所に住む父の高校からの友人も参列してくれた。悪ガキ時代のツレらしい。あの状態でも関係が続いてるのはすごいけど、家族の一員として見るのと外から見るのはだいぶ違うだろうとも思う。


 通夜の時、母は涙を浮かべていた。弟と一緒にお坊さんに挨拶をしたり、葬儀関係のことを色々やったり、離婚していてもあれこれと手を出す様は、私にはあまり理解できないが、長年連れ添うと簡単には割り切れないのかもしれない。
 私たち子ども3人は特に泣かなかった。

 弟と妹は斎場に泊まり、母と私たち家族は家に帰る。帰った時にはまた熱が上がっていて、38.5℃を超えていた。旦那に娘の面倒を任せて早々に就寝した。


 翌日も熱は下がらなかった。過去にはノロウイルスさえ気合いで一晩で乗り切った実績があるというのに、何ということでしょう。薬を飲んで式に参列する。

 告別式も順調に進んだ。
 弟が思いがけず素晴らしい喪主挨拶をして、少しだけ泣きそうになった。弟の成長に対してか、父に対してこみ上げるものがあったのかはわからない。
 母は普通に泣いてた。もともとよく泣くタイプ。
 

 出棺をする。
 棺の中は御札みたいな紙がかけられていた。その下の、布の下の父は小さかった。真っ直ぐに寝かせることはできなかったそうで、足を曲げて入っている。それを差し引いてもとても小さかった。
 棺の上下のスペースがたくさん空いていて、花をこれでもかと沢山入れた。
 花より酒とたばこをもっと入れてくれ、と言うかもしれない。
 ご先祖様みんなに叱られろ、バカ。

 火葬が終わって葬儀は終了、解散となる。
 初七日法要や精進落しはなかった。初七日は検死中に終わってるし。

 葬儀代などは生命保険で賄うことにして、とりあえずお金は母に立て替えてもらう。保険とか清算が全て終わってからまとめて返すことにする。
 解体費用とかもあるから、不安しかない。


 家に斎場からもらった仮祭壇を作ってふた七日の法要をする。父の妹夫妻と従兄弟も参加してくれた。
 母は四十九日に納骨まで終わらせたいらしい。位牌の準備と墓に名前を掘るように指示される。

 一応ばあちゃん、じいちゃんのこともあるから、どうするか聞いてみたけど、父の妹夫妻は位牌も墓も全て任せるからこっちで好きにやってほしいという返事。
 そりゃそうよね。

 
 父の妹夫妻、父の従兄弟、ばあちゃんの妹夫妻、昔はたくさん遊んでもらったけど、たぶん今後そうそう会うことも無いと思う。従兄弟とはギリギリ年賀状のやり取りがあるけど、いつまで続くかはわからない。
 他人になって、バラバラに別れていって、子孫繁栄?というか、枝が広がっていくのはわかるんだけど、楽しい思い出があるぶん、離れる時は少し切ない。
 

 その日も早く寝た。
 私には、感傷的に寝込んでいる余裕はない。さっさと熱を下げて、明日からはやるべきことを片付けなければ。



【仮祭壇と仏具】
 家に仏壇がなくても、斎場が仮祭壇を準備してくれるから大丈夫。木か段ボール製の3段くらいの段で、四十九日が終わったら、可燃ごみに出すか斎場に引き取ってもらえばOK。中にはそのまま仏壇がわりに使う人もいるらしい。

 おりんと木魚はなかったから、うちはお坊さんから借りた。買うと結構いいお値段がする。
 おりんの形は進化してて、皆が想像する通りの鉢形のもの以外にも、丸っこくてかわいいレストランの呼び鈴に近い形のものもある。とてもキレイな音がするし、普通にかわいくて、インテリアとしても置けそう。
 線香もいろんな種類がある。メジャーな毎日香から、フローラルな香り、変わったものだとサクマドロップの香りのものなど様々。
 残念ながら、映える木魚は無いようだ。

【遺影】
 ことごとく結婚式の写真が使われてしまうくらい、意識してないと正面向きのいい顔の写真がない。年配の方だと、遺影用にわざわざ写真館で撮影しておく人もいるらしい。
 思い出のためにも、たまには正面向きで皆で並んで写真を撮っておくのも悪くないのかもしれない。(うちと同じく呪いの写真扱いになるかもしれないが)


⑦に続く


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