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開花した新生・稲葉曇の音楽性【「ハローマリーナ/稲葉曇」雑記】

(サムネイル画像は「ハローマリーナ」より。イラストは稲葉曇さんの曲ではお馴染みのぬくぬくにぎりめしさん https://twitter.com/nknk_ngrms)


前書き(読み飛ばし可)

 随分とお久しぶりの更新となりました。今年4月のr-906さんについての記事以来の執筆になるのでおよそ7カ月ぶり。本当はもっと更新したかったのですが、なかなか書かずじまいで申し訳ありませんでした。リアル予定が忙しかったのもあり、書き溜めていたものがなかなか完成せずその内に投稿機会を逃してしまう…という悪循環に陥っていまして、ここらでなんとかその悪循環を断ち切らなくては、と言うところに今回のテーマとなる曲が投稿され、書かなくては!という思いで衝動的に書き始めました。雑記ではありますが楽しんで頂ければ幸いです。

本題

 さて、今回の話題は本日(11月20日)20:00に公開されたばかりの稲葉曇さんの新曲、「ハローマリーナ」です。まだ聴けていない、という方は是非ご覧ください。

稲葉曇の音楽性を振り返る

 この曲を語る前に、今回のテーマである「稲葉曇というボカロPの音楽性」を振り返っていきましょう。

 やはり、稲葉曇さんの音楽といえば強烈なギターに牽引される"重厚なロックミュージック"でしょう。そんな稲葉曇象を象徴する様な一曲が二作目、「クーラーガール」。イントロから重厚なギターロックが展開され、そのままギターの圧倒的パワーで引っ張っていく筋金入りのロックミュージックです。

 そしてもう一つ、稲葉さんの音楽の特徴として挙げたいのは"切なさ"です。こちらはロックやギターといったサウンド面よりかは歌詞の方に特筆されるものかもしれません(ただ、コーラスなどを多用するという点で、全くの無関係ではありませんが)。はこちらの稲葉曇象をよく表している作品としては、「ナミダ電波」が上げられます。ロックサウンドに乗っかったハスキーな歌愛ユキの歌声と切なげな歌詞とが融合した一曲です。

稲葉曇の音楽性の完成と変化

 そんな"かっこいいゴリゴリのギターロック"と、"切なくて感情を揺さぶる歌"を駆使する稲葉曇の音楽性の完成先はやはり同氏の代表曲、「ロストアンブレラ」かと思います。強烈なギターイントロから始まり、Aメロをミュートギターとハイテンポなドラムとで走り抜け、サビでは「僕を連れてって」から始まる切なくて、そしてどうしようもない歌がロックサウンドに乗って響き渡る。やはり、氏の一つの最高傑作と呼べる作品でしょう。


 そんな"ロックアーティスト・稲葉曇"の音楽性の転機となるのはやはり氏のもう一つの代表曲、「ラグトレイン」です。本楽曲は特徴的なイントロのメロディを弾いている音(それが何かは私にはわかりません…。)を初め、一番Aメロがほとんどピアノとドラムだけの構成であったり、二番のAメロでエレキピアノが裏メロを弾いていたりと、新たな稲葉曇の音楽性を随所に垣間見せています。    

 勿論、氏は前々から打ち込みの音であったり、加工して歪ませた音だったりを曲に入れることはしていましたがそれはあくまで(私見では)"ロックミュージックに加えるスパイス"といった感じの使い方でした。しかし、「ラグトレイン」は曲の中枢にもそういった打ち込みの音が使われているのです。ここに来て、ボカロP・稲葉曇の音楽性は大幅な変化を迎えたと言えます。(ここでは割愛しますが、ラグトレインの次作である「ハルノ寂寞」はピアノがメインのコードを担っており、そちらも変化の一端と言えるでしょう。)

新生・稲葉曇

 さて、先程までに述べた通りボカロP・稲葉曇の音楽性は「ロストアンブレラ」で"ロック&切なさ"として一度完成した後、「ラグトレイン」で大きな変貌を遂げました。どうしてこんな風に曲調を変えたのかという点について、氏の心中までもを推測する事は出来ません。私は意外とサカナクションなんかの影響もあるのではないか、と推測したりしていますがそもそも人間は様々なものに影響を受け変化していくものなので、そこは深く考えすぎない様にしています。とにかく私は、この稲葉曇さんの新しいスタイルのことを"新生・稲葉曇"勝手に命名する事にしました。

「ハローマリーナ」のサウンド

 そして今日、新曲「ハローマリーナ」が投稿されました。まず初めに、お堅い事をとやかく言う前に叫ばせてください。


稲葉曇さん最高!!!!!ハローマリーナ最高!!!!!


 さて、ここからは音楽の話です。まずはイントロですが、ここから既に今までの稲葉曇さんとはまた毛色の違うサウンドが奏でられています。理由はなんと言ってもエレキピアノで奏でられる優しいコード進行とシンセサイザーが弾くメロディの二つでしょう。左はギターがパンされ、ベースが鳴り、土台となるドラムはハイハットも含めかなりロックっぽいのにも関わらずここまで既存の曲と印象が変わるのは、音楽の根幹となる要素であるコードとメロディがギターではない音で響いているからである、と言えます。

 次いでAメロです。ドラムは相変わらずロック調、ベースもテンポの速いロックのベース、という感じで存在感がありますが、やはりエレキピアノの伴奏によってグッと切ない感じが演出されており、少し間を開けながら歌うボーカル・歌愛ユキもその切なさに拍車をかけています。

 そしてピアノ伴奏のみのブレイクを経て飛び込むサビ。左右の爽やかなギターにやっぱり重厚な低音担当ベース、エレキピアノのコード弾き、不思議なシンセサイザーによるメロディ、そして掠れている様にも感じるボーカルの歌愛ユキと被さった一つ高いコーラスに"きみとぼく"との切なくも力強い歌詞。

 それは、今まで聴いたことのない音楽でした。聴いた瞬間に、私は「ああ、この曲が好きだ」と思ってしまいました。

 そして、その次に私は"新生・稲葉曇の音楽性の開花"を感じました。理由は、新しいにも関わらず古いから、です。

開花した新生・稲葉曇の音楽性

  "新しいのに古い"とは一体どう言うことなのか。

 私はさきほど、初期の稲葉曇さんの音楽性の特徴的な部分は"ロック"と"切なさ"であるという話をしました。そして次に、稲葉曇さんの音楽性は"(ピアノ、シンセといった)打ち込みの音が音楽の中枢を担う様変化した"、という話をしました。

 そうです、この曲は"どちらか"ではなく、"新・旧両方の稲葉曇象に合致する特徴を持った曲"なのです。

 つまり、今回の稲葉曇さんによる新曲「ハローマリーナ」の正体は、決して旧来のファンを置いていく様な全くスタイルの違う曲ではなく、新しい事に挑戦していない旧態同然の曲でもない、新しい稲葉曇さんによる新曲だったのです。

あとがき(読み飛ばし可)

 それを踏まえ、今回、「開花した新生・稲葉曇」というかなり勝手なタイトルで記事を書いてみました。多少音楽面の考察はしていますが結局は私見・感想の類なので(考察を期待して来てくださった方は申し訳ありません)、自分の解釈が正しい!なんて言うつもりはさらさらありません。

 ですが、稲葉曇さんの1リスナーとしてこの思いを言葉として残したいと思い、本記事を執筆させていただきました。もし、この記事で稲葉曇さんの新たな魅力に気付けた!という方がいらっしゃっても、それは単にインスピレーション元がこの記事というだけで元々内に抱えてらっしゃった、その方の独自の気付きであると思います。

 だからこそ、そんな方がいらっしゃれば嬉しいです。 拙文をここまで読んでいただきありがとうございました!

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