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コミュニティデザイン部について

前回、YouTubeについて(その2)を書いた際に登場した「コミュニティデザイン部」。そりゃ一体なんじゃ?と思われた方も多かったでしょうね。今回はコミュニティデザイン部について書いてみたいと思います。

きっかけはテレビ番組のディレクターだった貝本さんとの出会いです。コミュニティデザインに興味を持ってくれた貝本さんは、2012年に「地球アゴラ」という番組に僕を誘ってくれました。世界のまちづくり事例を知ることができる愉しい番組でしたが、その後もいくつかの番組に僕を呼んでくれたり、僕らのプロジェクトを扱ってくれたりしました。

その頃、僕は「コミュニティデザインって大人の部活動みたいなものです」と言っていました。学校を卒業すると部活動に所属することが無くなってしまいますが、まちにさまざまな部活動を生み出せば人生は愉しいものになるんじゃないか。そう思ってコミュニティデザインに携わってきました。だから「儲かるまちづくり」には発展しにくいですが、「愉しい人生」になる人は多いと感じています。

2014年、貝本さんから連絡がありました。なんと、「NTTぷらら」が「部活DO!」というアプリを開発したそうなのです。そのアプリのなかには「プロ野球部」や「相撲部」や「美容部」などがあって、貝本さんもいくつかの部のディレクターを担当することになったとのこと。そこで、僕が部長になる「地域創生部」を作りませんか?という提案を受けたのです。

今で言うところのオンラインサロンのような取り組みです。無料で関わることもできますが、有料会員も募るというような仕組みでした。2018年にアプリが終了するまでの間、「山崎亮の地域創生部」で貝本さんといろいろなことに挑戦しました。最も楽しかったのは、定期的に開催する「未来への鼎談」ですね。僕がそのとき、最も話をしてみたいと思う2人に会いに行って話を聞くという企画です。貝本さんが司会進行と収録を担当してくれて、部員が会場に集まるというもの。ここでの鼎談は記事化されてアプリ内で閲覧できるようにもなりました。

「地域創生部」では、貝本さんが僕の仕事を取材して番組を作ってくれたりもしました。なかでも印象的だったのは、鳥取県大山町でのプロジェクトを取材してくれた時のことです。僕らが大山町の10年計画を町民とともに作っているプロジェクトを貝本さんが取材してくれたのですが、そのときに町民から「ケーブルテレビが面白くない」という声を聞いたり、役場の職員から「今後のケーブルテレビをどうすればいいのか分からない」と相談を受けたりしたようです。

東京の番組制作会社に所属していた貝本さんにしてみれば、コミュニティデザイン的に町民参加型の番組製作ができるんじゃないかという気持ちがあったようですが、大山町にそれをやろうとする人がいない。そこで、東京の会社を説得して「大山支社」を作る許可を得て、家族で移住して大山町で生活を始めたのです。その後の快進撃については、僕の『ふるさとを元気にする仕事』の4章と5章に書きました。貝本さんはその後も興味深い活動を次々と展開しています。

「地域創生部」では、興味深いまちづくりを展開しているまちを部員とともに訪れる遠足なども行いました。そうそう、貝本さんが担当する番組を沖縄で収録するということで、地域創生部の部員とともに沖縄まで遠足したこともありましたね。番組収録のため、僕がダイビングして海中にサンゴを植樹している間、部員のみなさんは沖縄の食べ物を満喫していましたw。サンゴの植樹の専門家との対談を収録しているときは、部員のみなさんもそれを最前列で聞いていましたね。そして、夜はみんなで一緒に食事しながら、コミュニティデザインについて語り合いました。

部活DO!(沖縄)

(▲海中撮影のため、船から飛び込む直前の写真w)

そんな愉しい地域創生部でしたが、2018年にNTTぷららが「部活DO!」という実験的なアプリの運用を終了しました。世の中に有料のオンラインサロンがたくさん生まれたことから、その役割を終えたということなのでしょうね。これによって、僕が部長を務めていた地域創生部も終了することになりました。

ただ、せっかく集まって仲良くなって、遠足まで一緒に行った部員たちとのつながりを消してしまうのは寂しい気がしました。そこで、貝本さんと相談してフェイスブックグループで「コミュニティデザイン部」を作り、緩やかに活動を継続させようということになりました。

そのとき検討したのが、このグループを有料のオンラインサロンのようにするかどうかということでした。管理人の貝本さんに支払う事務費用くらいは集められるような有料サロンにしたいという気持ちもありましたが、とりあえず僕も貝本さんも趣味の範囲で関わる無料グループとして始めようということになりました。いつか有料サロン化を考えてもいいけど、まずは無料から始めようということです。

最近、そのグループの登録者が2000人を超えました。当初は数十人から始まったグループでしたが、いまや多くの人達が関わるコミュニティになりました。ひょっとしたら、今こそ100人くらいの有料サロンをつくる時期なのかもしれません。何かやりたいと思っている積極的な人たちだけが集うようなサロンですね。最近は、本気の人が集う有料サロンから面白い活動が生まれつつあるという事例を目にするようになってきました。コミュニティデザイン部から有料サロンが派生し、そこから面白い活動が生まれるというのは興味深い展開です。

ところがどうも気が乗らないw。なぜでしょうね。有料だから本気の人が集うということは分かる。お金を支払っているんだから、元を取るつもりでいろいろ活動する人たちが集まるわけですね。集まったサロン会費も、貯めておいてサロンでの活動のために使うという事例もあります。いわば、サロンメンバーから税金を集めて、それをメンバーが提案した活動のために使うという仕組みです。これであれば面白いことが生まれそうな気がします。

そういうことが、頭ではわかっているのです。でも、なぜか自分はそれを積極的にやりたいと思えない。「お金を払っているんだから元を取らなくちゃ」という本気度合いが、あまり好きではないのかもしれません。「会費を払う」ということを原動力にした「やる気」というのが、あまり好きになれないようなのです。まことに困った性格です。

我々の祖先が発明した「お金」という道具に、一定の価値があることは認めているつもりです。お金が動くと人の気持ちも動くという点も認めます。それがうまく使いこなせるならお金を動かしてみたいのですが、油断すると動くお金を追いかける人が増えそうな気がして怖いんです。きっと、自分がそういう性格だと自覚しているから怖がっているんでしょうねw。道具としての「お金」には何の罪もないのですがw。

そんなことを考えていたとき、「コミュニティデザイン部」のコメントで素敵な事例が紹介されました。夜中に書き込まれたコメントでしたが、そこから一気に考えがまとまり、「コミュニティデザイン塾」なるものを立ち上げてみてはどうかと思ったのです。この仕組みなら、お金を道具として扱えそうな気がしたのです。次回はそのことについて書きたいと思います。


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