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禅宗祖師図

祖師図とは、仏教の修行上の教師であり、模範とすべき先輩の姿を描いたもののことです。これは、京都市北部にある大仙院の衣鉢(えはつ)の間という部屋の襖に描かれていたものを、保存のために掛軸に仕立て直したものです。絵を描いたのは室町時代の絵師、狩野元信(かのうもとのぶ)。室町時代中期から江戸時代にかけて活躍した日本絵画史上最大の絵師の集団、狩野派の基礎を作った人物です。  
ここに描かれた祖師図は、中国・唐時代に活躍した禅僧のエピソードを基にしたものです。向かって左から、禅僧・霊雲(れいうん)が桃の花が咲いているのをみて、突然悟りを得たという「霊雲観桃(れいうんかんとう)」。その隣が、師より瓶(びん)を瓶と言わずして何と呼ぶかと問われた禅僧・潙山(いさん)が、瓶を蹴り飛ばした「潙山踢瓶(いさんてきへい)」。水辺を描いた絵が続き、最後が禅僧・石鞏(せっきょう)が修行にやってきた禅僧・三平に弓を引くしぐさをしたところ、三平が胸を開いてみせたという場面の「石鞏張弓(せっきょうちょうきゅう)・三平開胸(さんぺいかいきょう)」です。  時期や場所、内容が異なる3つのエピソードをうまくつなぎ、さらにそれぞれのモチーフを際立たせているのが、巧みに用いられた雲です。手前・中ほど・奥と段階的に配置して、奥行きも演出しています。元信は、雲を効果的に配置することにより、一連の絵として見事に描き上げました。

重要文化財
伝狩野元信筆
室町時代・16世紀
紙本墨画淡彩

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