ミニ取材旅行

 妻の運転で、孫娘と3人、高知に行った。
 妖怪の小説を書いていて、しかるべき筋に、電話で取材はした。ていねいに教えていただいた。それでもなお、現地で確かめたいことがあった。

 ◆幻の土佐なまりを追って
 ある町のショッピングセンターで、妻が店員さんに相談した。
 快く、お客さんの中から、高齢女性を紹介してくださった。土佐弁について確証を得たいことがあった。それには高齢者が最適、と思ったのだ。
「それは聞いたことがない」
 という。
 次の手を考えて来ていた。
 食事中の自然な会話の中でなら聞けるかも、と高知市内のひろめ市場に移動した。お昼でもあり、ごった返していた。隣の食堂に入るが、聞こえるのは、ほぼ標準語を主体とした会話だった。

 ◆空振りの末に
 思えば、その話は高校の古典の授業で聞いた。学者肌の教員だったので、私の引き出しにしまっておいた知識のひとつだった。もう半世紀以上も前のことであり、土佐弁も変わって来たことだろう。
 先ほどの女性も
「いちばん土佐弁らしい土佐弁は、NHKの朝ドラ『らんまん』の渡辺美波さんですよ」
 と感心していたくらいだから。
 妻が市場に刺身を買いに行った。私は入り口で盲導犬・エヴァンと待つ。声をかけてくださった方のなかに、市場の関係者らしき男性がいた。素性を明かし、質問してみた。やはり、空振りだった。
 実は、大きな収穫だった。地元でも首を傾げるような土佐なまりを書いて、何の意味があるのか。潔く、書き直すことにした。

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