yamayamaya
2020年6月。我が家に盲導犬・エヴァンがやってきました。大阪生まれの♂。やんちゃながらも健気に生きるガイド・ドッグの毎日を、エッセー風に綴ります。
主人公は田舎の少年。舞台は昭和40年前後の四国の山間部。村や学校で起こる数々の“事件”を少年探偵が解決していく。敵役は近所の権蔵爺さん。 (初出:カクヨム)
はじめに Uターンに伴う、超めまぐるしい日々から解放され、ブログに投稿する余裕が出てきました。最初、エッセーが中心でした。そのうち、フィクションにも手を染めました。 関東から完全にUターンするのに8年かかりました。この間に視覚障害が進みました。途中でパソコンの画面を白黒反転して、入力するようになりました。多作でした。今年になって立て続けに出版できたのは、これまでの「貯金」のお陰です。 貯えが尽きた時、あるいは完全に失明した時どうするか。創作の喜びは、私を鼓舞し続けるだろ
◆カウンターOK? 久々に入店拒否に遭った。 法事が終わり、ちょっと昼食を、ということになった。 混んでいるのか空いているのか、視覚障害の私には、店の様子は分からない。しばらく待った。 「盲導犬はダメだってよ」 兄はあきらめている。 私が掛け合おうとする前に、長女が動いた。 「カウンターならいいって」 店長らしき女性に、法律により、店では盲導犬の入店を断れないことを説明したとのこと。カウンターならOKというのは何とも滑稽な妥協案だった。 長女は店の本部
◆人格いろいろ 世の中には、私などの理解の及ばない人格の持ち主がいる。 前作の『女子高生Y』がそれだ。Yは病的な嘘つき、虚言症である。 今作の主人公は、窃盗癖にプラスしてクレーマーの性向を持つ。 いずれも、社会の鼻つまみ者になりかねない。 ◆時代の落とし子 Yが都会の若者だったのに対し、『和製ピンクパンサー』の主人公・粕原洋子さん(仮名)は昭和中期、徳島県の田舎に生まれた。彼女がいかにして人格形成したか、その軌跡を追ってみたものである。 出生
◆麦蒔き日和 私は1951年11月、四国は徳島県の山間部で生まれた。 気象庁の記録によると、私が産声を上げた日、県内の最高気温は22.6℃、最低気温は10.1℃だった。ほぼ快晴だったようだ。母が実家の麦蒔きの手伝いに行っていて、産気づいた、とよく聞かされた。 同年8月の最高気温は34.4℃、最低気温は21.6℃だった。 ◆驚きの36℃台 小学校の庭に百葉箱があったように、記憶している。 気温など気にすることなく、子供時代を過ごした。都会の高校に入り、クラ
◆犬の発汗 犬には人間以上に暑さが応えるようだ。 人間は全身で汗をかき、気化熱によって体温を下げている。ところが、犬は足裏の肉球でしか汗をかかない。熱中症の危険性は人間の比ではない。 地面が熱いと、肉球をやけどすることがあると聞いた。 我が家の盲導犬・エヴァンに靴下を買ってやったところ、歩いていて脱ぎ捨ててしまった。裸族に靴を無理強いしたようなものだ。以来、素足で出かけることにしている。 ◆ダイエット 最近の猛暑で、道路は焼けた鉄板と化している。
『夕涼み』投稿しました あの風習は昔のもの 現代では熱中症になりますね 皆様 ご自愛を!
◆言うまいと 言うまいと 思えど 近年の 暑さかな くどい話や昔話をするのは、年を取った証拠だ、とされる。酷暑に免じて、この際、大目に見ていただきたい。 ◆それにしても 私の治療院を訪れるのは、四国の過疎地でもあり、大半は高齢者だ。 「昔の暑さとは格段の差がありますね」 私の口癖になっている。 ある方は次のような話をした。 「夏の夕暮れ時、庭に床几(しょうぎ)を出して家族で涼んだなあ。 ゴザを敷き、団扇(うちわ)でパタパタやった。蚊が襲ってくるんで、
第1話 夢一夜 ◆望郷 粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんは、よく夢を見る。先日は、昔の夢だった。 粕原さんは一九五一年(昭和二六)、徳島県の山間部の貧しい農家に生まれた。三人きょうだいの末っ子だった。 高校は両親に無理を言って、徳島市内に下宿して通った。卒業して都内に就職し、あまり田舎に帰る機会がなかった。 六〇年ほどで、田舎はすっかり変わった。生家は廃屋となり、残っているのは三軒だけ。典型的な限界集落だ。 ◆再会 粕原さんは帰省していた
山谷麻也 第1話 認知 ◆ランチタイム 粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんは、最近たまに外食する。団地の友人に声を掛けることもある。行きつけの店は、団地前のデパートのファミレスだ。 店員の無礼があったので、ごねたら、食事券をくれた。正当な報酬だった。 友人にも気前よく、好きなものを注文させる。かといって、ハンバーグやステーキなどの高額なものは食べつけていないので、カレーやスパゲッティに落ち着く。これで、二時間は粘れる。 ◆一人酒 「B棟の夫婦な、奥さん
山谷麻也 第1話 メモリー ◆木登り 粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんには、今でもドキドキするような思い出がある。 粕原さんの生家は、四国の小さな村の最奥部にあった。 アドベンチャーワールドの入り口だった。庭にはいつも子供たちの姿があった。近所の男の子たちと山野を駆け巡って育った。木に登ることだって平気だった。 ある日、木の上から、下の男子たちをからかっていると、笑い声が起きた。 「ズロース、破れとる」 男子たちは、粕原さんのスカートの中を指さして
『和製ピンクパンサー』を投稿しました どこにでもいるおばちゃんです でも 飛んでもないことを考えています あんなおばちゃんに 誰がしたのでしょうか
第1話 好機到来 粕原(かすはら=仮名)さんは、思わず笑みを浮かべた。 今度こそ大魚がかかったのだ。 粕原洋子。七二歳。四国の寒村の生まれである。東京の郊外の市営住宅に一人で暮らしている。 ◆買い出し 今朝も、九時過ぎに起きて顔を洗い、身支度をして、近くのデパートに行った。 試食コーナーがあった。アリが食べ物に群らがっているみたいだった。前の客を押しのけて、パンケーキを口にした。 粕原さんは小柄で、少し前かがみになって歩く癖がある。七〇を超した現在でも
◆危機意識 現代若者事情などと大袈裟な副題をつけてしまった。笑われるかも知れないが、本人はいたって真面目なのである。私の危機意識の表れだ。「今の社会はいい方向に向かっている」などと考える大人がいるとすれば、能天気もいいところである。 しかし、私は評論家ではない。あまり難しいことを言うのも嫌いだ。そこで、例によって、ライトノベルの手法で世の中を斬ってみることにした。 ◆スマホにご用心 『スクハラ刑事』はスティーブンキングの『図書館警察』にヒントを得た。むかし読
『スクハラ刑事/シュートケーキ/女子高生Y~現代若者事情~』をAmazonから出しました ラノベです サイバー警察のスクハラ刑事のほかは身辺で実際に見聞きした話です https://www.amazon.co.jp/dp/B0D8GXKL59
第1話 トリップ §1 シカト 目の前の現実には、目を向けないようにしている。 これはYの生き方だ。処世術などというのは古くさくてイヤだ。 中学・高校とも、担任は何かと気遣(きづか)ってくれた。 「友達はいないのか」 「もっとクラスの輪の中に入って行けば」 などと言う。 みんながYを無視しているのは、承知している。 SNSでつまらないことをつぶやいたり、風景や料理の写真を投稿したりして、何か精神的な栄養になるのだろうか。思ったままを述べたら、着信がゼロ
◆真夜中の訪問者 先日の夜、妻が裏のガラス戸を開け、空気の入れ替えをした。案の定、カメムシが2、3匹飛び込んできたらしい。 らしい、などと他人事みたいに言っているのは、目の症状が進んだために「お客さん」が見えないからだ。強烈な匂いでも放ってくれたら実感できただろうが、それはノー・サンキューである。 鍼灸院の患者さん、誰に訊いても、今年のカメムシには辟易(へきえき)している。そして、異口同音に「昔はこんなことなかったのに」と言う。 別に四国に限った現象ではない。