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鍼灸師 弱視で盲導犬ユーザー 関東から四国にUターンし 過疎地で治療院経営の傍ら 執筆…

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鍼灸師 弱視で盲導犬ユーザー 関東から四国にUターンし 過疎地で治療院経営の傍ら 執筆活動にいそしんでいます

マガジン

  • 犬のエッセー集

    2020年6月。我が家に盲導犬・エヴァンがやってきました。大阪生まれの♂。やんちゃながらも健気に生きるガイド・ドッグの毎日を、エッセー風に綴ります。

  • 村の少年探偵・隆

    主人公は田舎の少年。舞台は昭和40年前後の四国の山間部。村や学校で起こる数々の“事件”を少年探偵が解決していく。敵役は近所の権蔵爺さん。 (初出:カクヨム)

最近の記事

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My図書室

はじめに Uターンに伴う、超めまぐるしい日々から解放され、ブログに投稿する余裕が出てきました。最初、エッセーが中心でした。そのうち、フィクションにも手を染めました。  関東から完全にUターンするのに8年かかりました。この間に視覚障害が進みました。途中でパソコンの画面を白黒反転して、入力するようになりました。多作でした。今年になって立て続けに出版できたのは、これまでの「貯金」のお陰です。  貯えが尽きた時、あるいは完全に失明した時どうするか。創作の喜びは、私を鼓舞し続けるだろ

    • 「使い捨て」文化

         ◆図星 「コストカット型経済」とは、うまく言ったつもりだったろう。  これを岸田総理(当時)から聞いた時、筆者は逆にゾッとした。  バブル崩壊後の「失われた三〇年間」のことを指したものだが (それを言っちゃあ、おしまいよ)  くらいの重大発言である。  これまで人件費を削減してきたことに対する認識があった、ということだ。  当の経済界からもクレームはなかったように記憶している。   ◆賃上げは解決策か  つまりは、正社員、正規雇用を抑え、派遣やパート、アル

      • 決まり文句

           ◆耳にタコ  ここ何年か、マスコミ等で、うんざりするほど聞かされてきた言葉がある。 「丁寧(ていねい)に説明‥‥」 「真摯(しんし)に対応‥‥」  ほかにもあるが、この二つは東西の横綱だ。 (また言ってら)  ひねくれ者の私は、つい眉に唾をつけてしまう。   ◆そんなつもりでは  同じように、白々しい言葉がある。これは大関格だ。 「誤解を与えたとしたら(お詫びしたい)」  という類のものだ。  背景には (そんなつもりはなかったのに、誤解・曲解されてしまった

        • 代償 ~あるいは幻の地方創生~

           §1 街道今昔    なぜ、学校に鎌などを持って行ったのか、60年も前のことなので、すっかり忘れてしまった。学校行事として、通学路の草刈りでもしたのだろうか。  下校時、山道の脇に植えられていた杉の若木を、鎌で伐ってしまった。幹の先端が切られていた。  隆がやったのか、それともほかの子供がやったのか。これも定かではない。 ◆  年々、杉は育った。難を逃れた杉は上へ上へと伸びていく。先を伐られたものは、多くの枝が横に張り出す。いくら生育しても、木材としては使い物に

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        • 犬のエッセー集
          13本
        • 村の少年探偵・隆
          15本

        記事

          五十の手習い

             ◆転職事情  四〇歳の初夏に、失明宣告された。  リハビリ施設も紹介され、障害者の仲間もできた。会合があると、定年退職者から勤め人、学生、主婦などまで、さまざまな人々が出ていた。その中に、鍼灸マッサージ師がいた。  東洋医学に興味はあった。西洋医学では予後不良とされたので、漢方薬など東洋医学の関係書を漁ったものだった。  それでも、仲間に比べると、私の障害は軽かった。 「あなたの場合、一生見えてますよ」  とよく言われた。  何の根拠もなかったが、ついその気になっ

          ¥120
          割引あり

          五十の手習い

          ¥120

          キャビアの味 ~服部師を偲んで~

             ◆恩師逝く  護岸工事のため、河川に栄養分が流れ込まなくなり、牡蠣(カキ)がやせ細っている──。  そんなことを、確か1980年代から言われていた。環境保護に、私の目を開かせてくれた一言だった。 「恩師」服部幸應先生が亡くなった(2024年10月5日没)。  ◆真贋論争  私は30代半ばから50前まで、ある団体に嘱託としてかかわっていて、服部先生にお近づきになれた。  言葉に説得力があった。  パーティの後、スタッフが残り物を処理しながら、雑談していた。 「こ

          キャビアの味 ~服部師を偲んで~

          ベルはなに思う

             ◆地雷注意  情報化社会を生きる我々は、犯罪の地雷原を歩かされているようなものである。  毎日、SNS(会員制交流サイト)を使った投資詐欺やロマンス詐欺の被害が報じられる。その前にあっては、オレオレ詐欺や、かつての霊感商法などは古典的な手法に思える。  ◆詐欺今昔  やっかいなのは、犯人の顔が見えないことである。  私事になるが、三〇そこそこで独立開業した。当初は、事務所に出ても暇だった。  たまに電話がかかってくると、悪名高い通信会社の営業からだった。しつこ

          ベルはなに思う

          入店拒否

           ◆カウンターOK?  久々に入店拒否に遭った。  法事が終わり、ちょっと昼食を、ということになった。  混んでいるのか空いているのか、視覚障害の私には、店の様子は分からない。しばらく待った。 「盲導犬はダメだってよ」  兄はあきらめている。  私が掛け合おうとする前に、長女が動いた。 「カウンターならいいって」  店長らしき女性に、法律により、店では盲導犬の入店を断れないことを説明したとのこと。カウンターならOKというのは何とも滑稽な妥協案だった。  長女は店の本部

          『和製ピンクパンサー』出版余録

             ◆人格いろいろ  世の中には、私などの理解の及ばない人格の持ち主がいる。  前作の『女子高生Y』がそれだ。Yは病的な嘘つき、虚言症である。  今作の主人公は、窃盗癖にプラスしてクレーマーの性向を持つ。  いずれも、社会の鼻つまみ者になりかねない。   ◆時代の落とし子  Yが都会の若者だったのに対し、『和製ピンクパンサー』の主人公・粕原洋子さん(仮名)は昭和中期、徳島県の田舎に生まれた。彼女がいかにして人格形成したか、その軌跡を追ってみたものである。  出生

          『和製ピンクパンサー』出版余録

          地球沸騰化

           ◆麦蒔き日和  私は1951年11月、四国は徳島県の山間部で生まれた。  気象庁の記録によると、私が産声を上げた日、県内の最高気温は22.6℃、最低気温は10.1℃だった。ほぼ快晴だったようだ。母が実家の麦蒔きの手伝いに行っていて、産気づいた、とよく聞かされた。  同年8月の最高気温は34.4℃、最低気温は21.6℃だった。  ◆驚きの36℃台  小学校の庭に百葉箱があったように、記憶している。  気温など気にすることなく、子供時代を過ごした。都会の高校に入り、クラ

          地球沸騰化

          熱中症警戒アラート

           ◆犬の発汗  犬には人間以上に暑さが応えるようだ。  人間は全身で汗をかき、気化熱によって体温を下げている。ところが、犬は足裏の肉球でしか汗をかかない。熱中症の危険性は人間の比ではない。  地面が熱いと、肉球をやけどすることがあると聞いた。  我が家の盲導犬・エヴァンに靴下を買ってやったところ、歩いていて脱ぎ捨ててしまった。裸族に靴を無理強いしたようなものだ。以来、素足で出かけることにしている。    ◆ダイエット  最近の猛暑で、道路は焼けた鉄板と化している。

          熱中症警戒アラート

          『夕涼み』投稿しました あの風習は昔のもの 現代では熱中症になりますね 皆様 ご自愛を!

          『夕涼み』投稿しました あの風習は昔のもの 現代では熱中症になりますね 皆様 ご自愛を!

          夕涼み

           ◆言うまいと  言うまいと 思えど 近年の 暑さかな  くどい話や昔話をするのは、年を取った証拠だ、とされる。酷暑に免じて、この際、大目に見ていただきたい。  ◆それにしても  私の治療院を訪れるのは、四国の過疎地でもあり、大半は高齢者だ。 「昔の暑さとは格段の差がありますね」  私の口癖になっている。  ある方は次のような話をした。 「夏の夕暮れ時、庭に床几(しょうぎ)を出して家族で涼んだなあ。  ゴザを敷き、団扇(うちわ)でパタパタやった。蚊が襲ってくるんで、

          和製ピンクパンサーⅣ

              第1話 夢一夜  ◆望郷  粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんは、よく夢を見る。先日は、昔の夢だった。  粕原さんは一九五一年(昭和二六)、徳島県の山間部の貧しい農家に生まれた。三人きょうだいの末っ子だった。  高校は両親に無理を言って、徳島市内に下宿して通った。卒業して都内に就職し、あまり田舎に帰る機会がなかった。  六〇年ほどで、田舎はすっかり変わった。生家は廃屋となり、残っているのは三軒だけ。典型的な限界集落だ。  ◆再会  粕原さんは帰省していた

          和製ピンクパンサーⅣ

          和製ピンクパンサーⅢ

          山谷麻也  第1話 認知  ◆ランチタイム  粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんは、最近たまに外食する。団地の友人に声を掛けることもある。行きつけの店は、団地前のデパートのファミレスだ。  店員の無礼があったので、ごねたら、食事券をくれた。正当な報酬だった。  友人にも気前よく、好きなものを注文させる。かといって、ハンバーグやステーキなどの高額なものは食べつけていないので、カレーやスパゲッティに落ち着く。これで、二時間は粘れる。  ◆一人酒 「B棟の夫婦な、奥さん

          和製ピンクパンサーⅢ

          和製ピンクパンサーⅡ

          山谷麻也  第1話 メモリー  ◆木登り  粕原洋子(かすはらようこ=仮名)さんには、今でもドキドキするような思い出がある。  粕原さんの生家は、四国の小さな村の最奥部にあった。  アドベンチャーワールドの入り口だった。庭にはいつも子供たちの姿があった。近所の男の子たちと山野を駆け巡って育った。木に登ることだって平気だった。  ある日、木の上から、下の男子たちをからかっていると、笑い声が起きた。 「ズロース、破れとる」  男子たちは、粕原さんのスカートの中を指さして

          和製ピンクパンサーⅡ