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武井勇樹『60分でわかる!メタバース超入門』技術評論社

フェイスブックが社名をメタに変更するとの報道により、初めてメタバースという言葉を聞いたように思われる。メタバースという言葉が注目されるようになったのは2021年後半からだという。

ではメタバースとは何だろうか。バーチャルリアリティと、どう違うのだろうか。仮想空間でアバターになって活動することなのだろうか。識者の中には、今あるゲームや「セカンドライフ」という仮想空間の世界を引き合いに出して、あまり評価しない意見も聞かれる。

しかし、世界のIT企業がこぞって、これからはメタバースだと巨額の投資をしていることを見ると、無関心ではいられない気がする。本書はメタバースについて知りたい初心者向けの本である。

本書によると、「3DCGの技術でバーチャルな世界を構築した上で、人々がさまざまな交流や経済活動を含めたいろいろな活動ができるしくみ」で、ひと言でいうと「3次元のインターネット」だそうである。

映画『マトリックス』やアニメ『サマーウォーズ』のようなSF作品で描かれている世界が、技術的な進化によって、ようやく現実のものになってきたという。3DCGのバーチャル世界上に、いろいろなシステムやコミュニティ、コンテンツが乗っかっている。

5Gなど通信技術の進化、高性能で安いVR機材、リモートワークの定着、スマホなどの普及、ブロックチェーン、NFTなどの先端技術の浸透が背景にあるという。

ゲームを中心としたコミュニケーションだけでなく、次世代SNSとして期待されるという。メタバースの世界ではアバター(分身)となって活動することができる。最近、注目を集めている「NFT(非代替性トークン)」によって、バーチャル上の土地やアイテムの所有関係を明確にし、取引可能となっている。

フェイスブックから社名変更したメタ社は、『Horizon World』というプラットフォームを北米のアメリカとカナダで運営しているという。VR空間やゲームを作れるクリエーション機能が充実しているという。

メタバースはゲーム業界だけでなく、米津玄師など音楽アーティストによるバーチャルライブが行われ、人気キャラクターによるフェスティバルなどの取り組みがスタートしているという。三越伊勢丹は、”仮想伊勢丹新宿店”をメタバース上に構築し、バーチャル空間の中でショップを巡りながら商品を探せる取り組みをしているという。

いろいろな取り組みが始まっているが、誰でも体験してみたい魅力的なコンテンツができるか、ゲーム以外の利用どれだけ増えるか、既存のリアルやウェブのコンテンツとの連携できるか、ゴーグルに代わるサングラス型などの手軽なデバイスが出てくるか、五感すべてが没入できる技術が実現するか、メタバース空間のNFTによるアイテムなどの所有権の法整備ができるか、そもそもメタバースという言葉を知らない人が多数という状況を抜け出せることができるかなど、普及の条件があるようである。

本書では触れられていないが脳を含めた身体情報を収集されるリスクもあると言われる。逆に言えば精神障がいなどの治療にも活用できる可能性も秘める。全く予想できないが、本書を手に取って最初の理解に踏み出すのがよいように思える。


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